第5話 私がこの世に生まれた理由
「あんたホンットに遅かったわねぇ……! もう一生目覚めないかと思ったわよ。本当は高校生くらいで目覚めるはずだったのに……」
人生で初めて祝詞を上げた日。それが印刷されたコピー用紙に向かって祝詞を上げ終わった直後、自分の口が他人の口調でべらべらと語り始めました。前世療法の先生に連れて行って貰った二つ目の神社で『封印を解くように』と言ってきた巫女さんです。
何が起こっているのかよく解らないまま口が動くのに身を任せていると、巫女さんはこれまで私の人生に起こった出来事や繋がりがどうして必要であったのか、また、私が何のために生まれて何をしていくべきなのかを全部教えてくれました。
「あんたは初音さんを目覚めさせるための鍵なの。初音さんが自分で自分の能力を閉じちゃったから、それを開くために初音さんの娘として生まれたのよ」
“初音さん”とは私の母で、霊感なんて全く無かった私とは違い昔から直感の鋭い人でした。火山の噴火や地震の予知、ドライブで通り掛かったトンネルの崩落を言い当てるなど、妹が「お母さんが言うとホントになるから言わないで!」というくらいのレベルで未来予測が出来たり……また、旅行に行った時に崩れた天候をリアルタイムで晴らせることが出来るくらいの晴れ女でした。(因みに力を使いすぎたのか晴らせた直後体調を崩していましたが……)
なので、その言葉を聞いたときは“なるほどな”という気持ちで巫女さんの言うことをすんなりと聞き入れていました。
また、小学校の時に自分がいじめにあったとき、“されたこと”は覚えていても“された相手”については全く記憶がないことについては、“つらい経験”が必要であったから“出来事だけ”を覚えていること。された子たちに恨みを残さないように“誰にされたか”は覚えていないこと。そして、元々私は
本来十代で目覚める予定だった覚醒が遅れてしまった理由は、幼少期のトラウマにあること。学校で友人と上手くいかなかった時期に加え、家族内のゴタゴタで身内にすら完全に心を閉ざしてしまったときに精神年齢もそこで止まってしまっていたこと。それが今回の前世療法を受けてトラウマが軽減されたことでようやく覚醒への段階に入ることが出来たことも聞かされました。
今回、弊立神宮への参拝は二回目でしたが、本来は一回目の時に開いていなければいけなかったことも知り、中々表に出てこられず悲しんでいた弊立の巫女さんには申し訳無い気分になりつつ……これまでの遅れを取り戻そうとするかのように巫女さんが動き出します。
まずは北海道にいる母にメールをし、これまでの経緯とこれからのことを報告。このときも、ユウコ自身が動いているというよりも、巫女さんがユウコの体を使って行動をしているような感覚で携帯を操作していました。
――ここまでの話だけでも妄想を元に書き起こしたフィクションというふうに取られるかもしれませんが、翌日母と巫女さんとのやりとりで更に想像を超える世界へと足を踏み入れてしまうのです。
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