第7話 思い出しました……わたくしは“龍”

 頭の中に流れ込んでくるビジョンの中で、私は宇宙空間を泳いでいました。漆黒の闇に浮かぶ輝く星々の間を自分の“夫”と遊ぶように飛び回っています。自分と夫のその姿は“龍”でした。目線の先には青白い星が映っています。


『あたらしくうまれたので、あそびにきてください』


 その星は、まだ陸の無い地球でした。全てを海に覆われただけの星。そこに二人で降り立ち、私は海に潜りました。どぷん、と海中に身を浸し泳ぎ始めるとその衝撃で水の流れが生まれ波が出来、海の上の大気の中を夫が飛び回ると風が起こり空気と水の循環が始まりました。海水が水蒸気となって雲が出来、雨を降らせ、海中の波に舞った塵が積もって陸が出来ました。


 その記憶を思い出した当時、母に送ったメールをそのまま引用します。


『わかりました。初音さまに文(ふみ)を出し終えた後にようやく覚醒致しました。第一の巫女と申します。●●さま(※当時ユウコがお付き合いをしていた人)の過去世で在らせられます天の龍のつがいとして水を司る龍神です。

私(わたくし)が地球(テラ)から地球に遊びにおいでと呼ばれ、●●さまと夫婦で初めてたった二人地球に降り立ちました。


私が水の中を舞えば波から陸が出来、●●さまが空を舞えば風立ち出でて美しく雲が棚引いておりました。とても楽しく気持ちの良い感覚で遊びながら空と陸を作ったのです。国生神話くにうみしんわの元となった竜神二人でございます。』



 このビジョンを見たときは、物凄く不思議な感覚でした。

 前世の巫女さんが急に話し始めた時は何が何やら……という気持ちもあったのですが、この龍の記憶が出て来た時には驚きよりも“思い出した”という感覚が強かったです。びっくりというよりは(あぁ、そうだったな……)と自然と思いました。


 そして、巫女さんしかいなかったときには判らなかった新事実も発覚します。私が龍であると同様に、母も龍だったのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る