幕間2

 失った手足はアタシの誇り。

 大切な人達を護れた証。

 例え、禁断の邪法を使用した代償で力を消失しようと。

 出来ない事への悔しさに塗れ、下衆な輩に辱められ惨めな思いをしようと、悔いていない。

 アタシは絶対に。自分を見失わず、生きて。幸せだったと胸を張って、死ぬ。

 だから、アタシの心は折れない。



 アンタなんかには──



『ボクが彼女を買いますっ‼︎‼︎』


 変なガキだと思った。

 でも、


『え、えーと、ボクの名前はミナです』


 きっとアイツと同じ。

 人畜無害な顔でアタシを油断させ、薄汚い欲望で地獄へ堕とすつもりに違いない。

 アタシはもう騙されない。騙されたフリをして逆にアンタを。


『一ヵ月後、君を幸せにしてみせます』


 何が幸せよ。ムカつく。

 アタシは不幸なんかじゃない。


『えへへ』


 ヘラヘラ笑ってムカつく。

 文句も言わず尽くしてムカつく。

 顔を見てるだけで、ムカつく。


『あの、今日はお風呂が先でもいいですか? 仕事で汗かいちゃって』


 ムカつく。

 女の匂いが染みついたアンタが。それをバレてないと思っているのがムカつく。

 ろくでもないアンタなんか。


『……すぅ……すぅ……』


 アタシには、もう歯があるのに。

 何の危機感もなく、床で眠るアンタがムカつく。


『ぐっ、あぅ……はぅ……』


 魘されるアンタが、ムカつく。


──シャラン。シャララン。


『どうですか? 新しい手足は』


 ムカつく。

 いつも大切にしていた"ペンダント"が失くなっている。

 あれが魔石なのは知っていた。

 そして、この手足。魔力の代わりの"動力源"はきっと。

ムカつく。

 アタシの為にどうしてそんな。

 剥がしてやる。その化けの皮を。

 ムカつくアンタを。これしか、こんな方法でしかアタシは信じられない。

 そんな言い訳をして、殴った。

 なのに、


「アンタなんか……アンタなんか……」


 何で怒らないの。

 何で殴られているのに、そんなにも優しい瞳でアタシを見るの。


 傷ついたアンタを見るのは。ムカつく。


 ずっとアンタが見ていたのは誰なの?

 アタシは、ムカつくアンタをもっと知りたい。


「別に……」


 アンタはきっとアタシなんか見ない。見るはずがない。

 それは真実を知ろうが、知らなかろうが、変わらない。

 けれど、それでも。この想いは──

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