第84話 山田市太郎 二十二歳④
命からがらダンジョンを脱出した山田と優が見た光景はゴースト系モンスターに襲われている人達だった。
「何が起きているんだ……」
山田が呟く。優は荷物からゴースト系モンスターに効くアイテムを取り出して言った。
「この石はゴースト系モンスターに効く使い捨ての魔法石だ! これで皆を助けよう!」
一つしかないほのかに光る石の一つを山田に渡す優。素手で手に取った山田は初めて手に取った魔法石を握りしめて、ダンジョン管理省の人間として襲われている人達を守る覚悟を決める。
「使い方は地面に衝撃を与えると魔法石が壊れる。すると魔法が発動するから」
優の説明を聞きながら、魔法石を見る山田はある異変に気付いた。
「え? 光が消えていく? どうしてだ?」
魔法石のほのかな光が段々と薄れ、最後には光が消えた。初めて手に取った魔法石が壊れたと思って混乱する。
「あれ? 不良品? そんな……」
ゴースト系モンスターに対抗す手段を失くした二人は愕然とした。他に対抗する手段を持ち合わせていないので逃げる事しか出来ない。
そしてモンスターに気付かれて優達に襲い掛かって来るゴースト。優は山田達の前に出て両手で身を守った。
ゴーストの攻撃は精神にダメージを受ける。優はゴーストに襲われた経験はないのでどのような事になるのか分からないが、一般人を守る為に盾になった。
ゴーストは攻撃をして優に触る。ダメージを覚悟していた優は、攻撃が当たると同時にゴーストは消えてしまった。
ゴーストに当たった優は何も変化はない。目の前のゴーストは消えてしまった事に驚いている優。そして山田はそれを見て一種の仮説が浮かんだ。
山田本人も『まさか!』と思うような馬鹿げた仮説だった。実践するにも危険が伴うので実践する気になれない。
そんな事を考えているとゴーストが集まりだした。
人間サイズの大きさのゴーストが合体してより大きなモンスターになった。
山田はそれを資料で見ていたから知っている。物理攻撃をしてくる実体化したゴースト系モンスターに進化した。そして人の血を浴びて更に強くなるというバケモノに変わる。
「な、なんだ! ヤバいぞ!」
「逃げるしかない!」
先にダンジョンを脱出していた連夜と竜吾もモンスターに恐れをなして、守るべき一般人を無視して逃げだそうとする。
「おい! お前達! 探索者だろう! 逃げずに戦え!」
山田が連夜と竜吾に叫ぶ!
しかし山田の叫びを無視して逃げ出す連夜と竜吾。そして叫んだことによってモンスターの意識を向けてしまった。
モンスターは周辺の建物ごと山田を攻撃する。
間一髪で避ける事に成功したが、建物を壊されてしまい、瓦礫が山田を襲う。
瓦礫が山田に当たり倒れてしまった。更に大きな瓦礫が山田の左足を潰した。
モンスターに襲われて、足を潰されて動く事が出来ない恐怖で山田は死を覚悟した。
「山田さん。しっかり!瓦礫を退かすから! なんとか出て!」
瓦礫を持ち上げようとする優。しかし瓦礫は一人では持ち上げるような重さではない。自分よりも他人に命を懸ける行為に山田は「私の事は良いから逃げろ!」と叫ぶ!
山田と優を標的にしたモンスターは二人に近づいて来る。
一人でなんとか瓦礫を退かそうとしている優に逃げろと叫ぶ山田。
最後には優はモンスターに立ち向かう。体当たりをして時間を稼ごうと必死で時間を稼ぐ事を決めた。
優は自分が死ぬ恐怖よりも、山田達が死ぬ恐怖に自暴自棄の突撃の行動を取った。
モンスターの攻撃は優の左腕に当たり、左腕が宙に舞った。切断された左腕から血が噴き出す。
痛みで叫ぶ優。
山田は恐怖で目を閉じそうになったが、目の前では信じられないものが見えた。
優の血を浴びて苦しみ出すモンスターは、優の血を浴びながら絶命しゴースト系モンスターは消え去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます