第83話 閑話 下種の考え
時間は少し戻る。
連夜と竜吾は足手まといの管理省の言動に嫌気を感じ始める。
ストレス解消の優を殴っただけで、文句を言ってくるダンジョン管理省職員。
お陰でストレスが溜まり続け、恨みすらも感じ始めた。
ダンジョン出口近くのモンスターを見て連夜と竜吾は戦うか逃げるかを相談していた。
「あまり戦いたくないな。石像は固いからな。武器が壊れるかもしれないし」
「連夜の武器は耐久性ないからな。刀で石を攻撃したら折れるだろう」
「竜吾の武器なら大丈夫だろう。西洋剣は叩き切るタイプだから」
「刃がかけると砥ぎ代に金がかかるからな。それにあんまり戦いたくないし」
連夜と竜吾は優と話している管理省の人間を見る。……奴隷の身を案じている偽善者たちにも嫌気がさし、優にも嫌気がさしていた。
連夜と竜吾と優は幼馴染だった。連夜と竜吾は運動神経が良くてお互いに気があう親友だが、優はパシリ感覚の使える使用人の様にしか思っていなかった。
優の魔力量がゼロだと知ると使用人から奴隷へとランクが下がる。連夜と竜吾は魔力が高かったので魔力至上主義に傾向した。
探索者高等学校に進路を進めた連夜と竜吾。そして連夜と竜吾から嫌がらせを受けていた人達は、幼馴染で近くにいた優を恨み虐めの対象にした。
優は高校時代に連夜と竜吾のせいで苛めを受け続ける事になる。
……なんとか卒業した優に待っていたのは、連夜と竜吾の荷物持ちとして探索者としての進路だった。
魔力が無いので断った優だが、連夜と竜吾が苛めから救ってくれた恩との強引な命令によって優は荷物持ちとなる。
長年の苛めで優の精神は壊れかけており、幼馴染である連夜と竜吾の依存していた二人に助けてもらったという事で洗脳に近い状態だった。
優は連夜と竜吾に殴られていても、高校時代の苛めよりも酷くないと感じ、二人の暴力は教育と錯覚している優の心は壊れていた。
連夜と竜吾は使えない奴隷に嫌気がさしてきて、管理省の人間に優の存在が知られてしまった事で切り捨てる事を考え始めた。
「……なあ、囮作戦で良いんじゃね?」
「……そうだな。全員囮にするか」
「スタンサークルを使ってな」
「馬鹿共には勿体ない気がするが、それが一番楽だな」
「モンスターも手ごわそうだしな……」
「武器も壊れそうなモンスターだしな……」
連夜と竜吾は囮作戦で自分達以外が助かる道を選んだ。出口は近くだから全力で走れば問題無い。囮はモンスターに殺されて証拠は残らない。優は「モンスターに襲われて死んだ」と言えば良いだけ。
護衛料に関しては少し勿体ないが、命の方が大切だと知っている連夜と竜吾は作戦を実行した。
作戦通り囮は麻痺で動けなくなり、モンスターは囮を殺そうとしている。
荷物から金目の物は回収しているから優が死んでも問題無い。
「可哀そうな奴等だったな。運が悪い奴等だ」
「そうだな。ダンジョンは酷い場所だ」
「魔力量が多ければ生き延びる事が出来ただろうに……」
「仕方ないさ。魔力が低い人間は生きる価値がないさ」
笑いながら囮に同情する連夜と竜吾。罪悪感というものは皆無で、魔力量が低い人間を蔑む魔力至上主義の典型例だった。
明るい表情で出口に向かう二人が目にしたモノは、出口近くにあった大きな宝石だった。
「これは凄いな! 売ればひと財産だぜ!」
「ダンジョン攻略のご褒美だぜ! オレ達ラッキーだな」
宝石を取ってダンジョンを出る。しかしそれが最後の罠だと二人は分からなかった。
ダンジョンを出たら宝石から多数の物理攻撃無効のゴースト系モンスターが出現して街中の人間に襲いかかる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます