第77話 突発型ゾーンダンジョン攻略後①
ゾーンダンジョンが発生して夜が明けた。
探索者のお陰でモンスターの数は減り、ダンジョンコアの探索も順調の様だ。
太陽が昇り一般人の救出が進むにつれ、死亡者も分かり始めた。
結界内の建物も壊れ、死亡者も確認できるだけで百人以上出たが、今回のゾーンダンジョンの被害は軽微といっても良い。今までは全滅だったのだから。
マスコミ関係者が多く現場に詰め寄りテレビに流すが、現場は立入禁止中なので詳しい事は流れないが、ゾーンダンジョン攻略中で死者は少ないという報道が流れた。
ゾーンダンジョンが日本に発生した事が世界中に知れ渡り、その結界が壊す事が出来て攻略中という事に世界中が驚いた。
そして探索者関係者の間でアンチマジック能力者の重要性が世界に更に広がる。
今回の立役者であるアンチマジック能力者達は現場で働いている。
優と日野とリナは結界の穴を閉じない様に結界に接触している。二人が接触して残りの一人が休憩を取りながら結界が閉じない様にしている。
入道護道は医者として怪我人の治療をしている。モンスターに襲われた怪我人が多く、重傷者は周辺の病院へ行き、軽い怪我人は現場の簡易医療室で治療し、入道護道は現場で治療を続けている。
市太郎はダンジョン管理省の職員と一緒に行動をしている。ゾーンダンジョンでの出来事の説明、管理省の会議に参加、討伐に参加するギルドのパイプ役など。
優達と一緒にいたエマや輝美達も優達と一緒に行動している。
エマは結界接触中の優達の代わりに着替え等を取りに行ったり、優達の飲み物を持ってきたりと動けない優達の代わりに働いている。
輝美や涼子や祭も現場に残って怪我人の世話や現場の手伝いをしている。
新家メイは探索者としてゾーンダンジョン内に入り、怪我人の救出やモンスターの討伐。
新家ラナは会社に戻り、新家探索販売店の回復薬等や道具等の支援物資を用意して現場に届ける。
入道真子は旦那の着替えを用意し、優達の為に弁当を作ってエマと一緒に届けている。
伝風寺財閥も伝風寺仁一朗の指示の下、支援物資を現地に届け、探索者達をゾーンダンジョンに入れて救出活動を積極的に行っている。
ゾーンダンジョン発生から一日が経つと詳しい内容が分かってきた。直径五キロ圏内のゾーンダンジョンで囚われていた人間の数は約二万人。そのうちの約四千人が怪我を負い、死者は約三百人。探索者達がダンジョン内に囚われた人間を救出している最中で、迅速な行動を行ったダンジョン管理省の評価は上がっている。
探索者が撮ったゾーンダンジョンが公開された。建物は壊されてモンスターが街中を闊歩しているが探索者達が討伐する。街が天災にあったような被害だが、過去に起こったゾーンダンジョンに比べれば被害は軽微と言ってよい。
数日後にはコアが見つかり壊され元に戻るだろうと各マスコミは報道した。
「……暇だな。ずっと座っているだけだからな」
「仕方ありませんよ。結界の穴を維持するための仕事ですから」
現在、優と日野が結界を閉じない様に結界の穴の両端に座っている。両端にはテントが設置されており、優と日野は両端のテントの中で無線機を使って会話していた。
「これ以上座っていると痔になるぞ」
「あと三時間で交代時間ですから頑張りましょう、日野さん」
「……せめてゲームがあれば暇が潰せるのに」
「不謹慎ですよ。結界内では他の人達が頑張っているんですから。僕達も頑張らないと」
「でも暇なんだよ。テント内で景色も見れないし、せめてテレビでも……」
確かに暇なのは優も理解している。優も暇だと心の中で思っていたのだから。最初に日野が先に
「暇だ」と愚痴り出して、休憩中のリナも「暇~」と愚痴り始めたので優が二人を宥める事になった。
「市太郎君は忙しく働いているんですよ。僕達も頑張らないと」
「でも実際座っているだけだろう。偶に職員が飲み物持ってきたり、エマが食事を持ってきたりするだけだし。あとリナにセクハラする探索者を取り押さえたり」
現在休憩中のリナが結界を維持する為に座っている時、中年探索者がリナにセクハラして、結界の穴を塞いでいたリナが中年探索者を反撃して結界の穴が閉じようとした。
優は休憩中で日野が対応しようと動こうと……。結界の穴を維持する為に動けない。だから日野は、
「おい! 新家! 動くな! 結界の穴が閉じる!」
「結界よりもセクハラ親父に恨みを晴らさないと!」
「誰か! セクハラ親父を半殺しにしてくれ! 新家を止めてくれ!」
近くにいた探索者が中年探索者を袋叩きにして、ダンジョン管理省の職員がリナを抑えて指定の場所へ座らせる。
その後、結界の穴を塞ぐアンチマジック能力者の座っている場所はテントで周囲から見えなくした。
「テント内は暑いし、扇風機が欲しいぞ」
「それには共感します。テント内は暑いですよね。……日野さん、暑いからって服を脱いでいませんか?」
「お? なんで分かった?」
「……エマちゃんが見たら怒られるような格好していませんか?」
「大丈夫だろう。部屋で過ごしているような格好だし。大丈、お兄ちゃん! なんて格好しているの! 馬鹿! 変態! 唐変木、エマ、無線機の先の相手は優だ。お兄ちゃんの大馬鹿!」
タイミングが悪い日野兄妹。優は無線機から聞こえる声と、テントから聞こえる大声から兄妹喧嘩を聞く事になる。
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