第78話 突発型ゾーンダンジョン攻略後②
ダンジョン管理省で行われているダンジョン管理省事務次官と上層部の会議に参加している山田市太郎は、事務次官補である父親の後ろに立って会議を眺めていた。
「今回の突発型ゾーンダンジョンの怪我人及び死亡者は……」
「過去と比べ被害は最小限とはいえ……」
「それよりも今後の対応を!」
「マスコミの情報統制は?」
「ゾーンダンジョンで生存していた者が現場を録画して、それがマスコミに流れて……」
「それよりも誰が責任を取るべきなのか!」
「少数とはいえ犠牲者が出ているんだ!」
本当にどうでも良い会議だった。責任の擦り合いと自身の保身が主な会議内容だと考えてしまう。
「国会から説明の催促も来ているんだぞ!」
「今の情報で国民に説明して理解できるのか!?」
「副大臣から責任を取れと言われているんだぞ!」
「落ち着き給え!」
ダンジョン管理省事務次官の杉田誠五郎(スギタセイゴロウ)は大声を出して黙らせる。その後、事務次官補の山田豊一が説明する、
「今回の突発型ゾーンダンジョンの件に関してはダンジョン管理省大臣が説明をする事になった。そして事件の情報も全て渡してある。私達がやるべき事はゾーンダンジョンの調査や死傷者の支援だ。現場では職員が寝る間も惜しんで働いている。私達も動かないでどうするのだ!」
会議参加者から不満の声が出るが、
「大臣は総理にゾーンダンジョンの被害者に対する支援を確約した。マスコミが騒がしくなる前に官房長官と杉田事務次官が記者会見をする。これは決定事項だ!」
「杉田事務次官、責任の所在もはっきりしていない……」
「責任者などいない! これは災害だ。地震が起こった際の責任は誰の責任だ? 噴火が起こった際に責任は? 今回の件は災害として認定されている」
「ですが杉田事務次官、国民は納得しない可能性が……」
「過去三回の突発型ゾーンダンジョンの被害を比べてみろ。過去は全滅だが今回は数時間で探索者が結界内に侵入出来てダンジョンを攻略中だ!」
杉田事務次官に反論できないだろうと思う市太郎。突発型ゾーンダンジョンが発生した国から「どうやって結界を解除したのか?」と問われていて、ダンジョン管理省は「現在確認中」と言って答えを伸ばしている状態だ。
杉田事務次官と山田事務次官補は会議参加者を論破し続ける。そして会議の結果が『ダンジョン管理省としてゾーンダンジョンの死傷者の支援とケア。被害の確認と支援金や補助金の措置』が決まった。
「支援金や補助金はダンジョン管理省の特殊探索課からも出す予定だ」
「特殊探索課にそのような金額を出せる訳が!」
「特殊探索班がダンジョン探索での希少鉱石やオークションに出品した呪いの武具等で儲けた貯蓄金を使う」
「希少鉱石等の売り上げはダンジョン管理省の予算に計上するのでは!?」
「何を言っているのだ? 特殊探索科はダンジョン管理省の名前を借りているだけの別組織だぞ。副大臣が『魔力を持たない人間が探索してダンジョンで死んでも、管理省が関係ないように別組織にしろ』と厳命しただろう」
魔力至上主義者の副大臣が当初特殊探索者に否定的で、条件が『ダンジョン管理省とは別組織とする』と命令し『ダンジョン探索で儲けた金額の八十パーセントを名義代・事務所使用料を支払う』と命じられた。
しかし杉田事務次官とダンジョン管理省大臣が『事務所使用料を十パーセント』と『ダンジョン管理省公務員扱い』と変更した。さすがに八十パーセントは暴利だろうと市太郎は思い出す。
別組織とはいえ深く管理省に入り込んでいる特殊探索科は、他の職員達からは同じ省で働く仲間と思われている。そのように山田親子が仕向けた結果だった。
特殊探索科はダンジョン管理省から予算等が無く、自分達が探索した儲けだけで特殊探索科は活動している。儲けもかなり出しており、出る金額よりも入る金額が多いので貯蓄金が溜まっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます