第68話 戦闘訓練①
探索科の合同訓練は多い。戦闘訓練の向上とチームワークの為に必要な事だった。そして特殊探索科も合同訓練に参加する。今回の特殊探索科の合同訓練相手は全一年生と一緒の戦闘訓練をする。
「しかしどうしてオレ達も参加するんだ? 下級生と一緒に上級生が参加っておかしいだろう?」
日野は愚痴っているが、日野を慕う下級生から声がかかり、上級生として対応し会話する。
リナも下級生にも慕われているので、楽しく会話している。
優も仲の良いクラスメイトと一緒に訓練出来るので何も問題ない。
一年生の担任達が指示をして訓練を開始する。生徒の相手は探索者が相手をするが、生徒同士でも訓練は可能だ。
「優君、私と訓練するか」
「よろしく、市太郎君」
特殊探索科同士の戦闘訓練。避ける事に特化している特殊探索者でも戦闘訓練はする。人間相手に戦う事があるので必要な訓練だった。
二人の訓練の結果は、山田市太郎の圧勝。優は転ばされ、投げられ、関節を極められて手も足も出なかった。
「私は三年以上くらい訓練しているからね。初心者の優君に負けるはずはないよ。優君も鍛えればすぐに強くなるよ」
「が、頑張る、よ……」
数分間の戦闘訓練で息が上がった優。汗などかいていないという表情の市太郎。二人の戦闘力の差は歴然だった。見学者達も「全一年で市太郎が一番強いのでは?」と感じた。
そしてその戦闘力が気に食わない人間がいる。
「相手が弱すぎるから、強く見えるだけだ」
「引き立て役か? 弱い物苛めってヤツか?」
Dクラスの面々が、連夜と竜吾が仲間と一緒に冷やかしに来る。
優達が居るAクラスと、連夜と竜吾のDクラスは仲が悪かった。ダンジョン訓練を機に不仲となり、いつもDクラスはAクラスに挑発してくる。
「それなら君達が私の相手をしてくれるかな?」
珍しく市太郎が連夜と竜吾を挑発する。
「二人一緒で構わないよ。君達くらいなら訓練に丁度良い。恥をかくのが怖いなら辞めても良いよ。それとも弱そうな人間にしか挑発出来ない臆病者かな?」
「死にたいらしいな!」
「ぶっ殺してやる!」
市太郎の挑発に連夜と竜吾は応じ、クラスメイト達が見守るなか、二対一の戦闘訓練が始まる。
連夜と竜吾が市太郎に向かって殴りかかるが、市太郎が二人の攻撃を躱す。二人の攻撃を何度も躱し続ける市太郎。
「避けるだけしか出来ないのか!」
「では今度はこちらから仕掛けよう」
市太郎が攻めに転じた。竜吾の腕を掴んで投げ飛ばす。そして連夜の攻撃を避けると同時に足を払って地面に転がした。
起き上がった連夜と竜吾は市太郎に反撃するが、市太郎は連夜を竜也の方に投げ飛ばして、二人を地面につけた。
「どうしたんだい? 降参かい?」
「全員でぶん殴ってやる! おい! お前等、手伝え!」
竜吾の言葉でDクラスの見学者が市太郎に襲い掛かる。十人くらいに襲われそうになる市太郎は時間差で相手を避けながら足を払い、相手の手を掴んで投げ飛ばす。
優やAクラスの見学者が手伝う間もなく相手を無力化した。
「まあまあな訓練だったよ。礼をいうよDクラスの諸君」
額の汗を腕で拭くようなしぐさをしながら連夜と竜吾に告げる市太郎。
「では今度は私がDクラスの訓練に付き合おう。今度は私が君達の防御や受け身を手伝ってあげよう。Aクラスの友人も手伝ってくれそうだから多数との戦闘訓練が経験できるはずだ」
市太郎は言い終わると、連夜と竜吾を主体に攻めにかかる。たまにDクラスを攻撃するが、連夜と竜吾を主に攻撃した。……二人に恨みでもあるように。
Dクラス全員がダウンした。主に攻撃を受けた連夜と竜吾は悪態打つ気力もなくダウンしている。
「……山田、えげつねー」
「っていうか強すぎ……」
「相手は身体強化しているよな……」
「山田は身体強化してないよな……」
「そんな相手に無双しているってどんだけ……」
クラスメイト達は山田市太郎の強さに驚くばかりだった。
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