第67話 新家リナの過去⑤

 数日後、新家探索販売店は忙しかった。

 銀行融資が下りて、お得意先から謝罪され、倒産寸前から立ち直る事が出来た。

 その間にも新家姉妹はリナの将来に向けて話し合い、アンチマジック能力について調べる。

 長女のラナはアンチマジック能力で魔力病の治療が成功した事を知った。治療した医者の名前は『入道護道』と言って詳しい治療法は知る事は出来なかった。

 次女のメイは知り合い探索者にアンチマジック能力の事を聞いた。上級探索者がダンジョン管理省に所属する子供のボディーガードをしていて、その子がアンチマジック能力者と聞いた。

 三女のリナは学校のパンフレットや特殊探索科の資料を基に調べた。知り合いに探索者高等学校に進学した人が居なかったので、受験勉強そっちのけで探索者高等学校を調べる。

 そして新家姉妹の会議では、


「社長としてダンジョン管理省からの『呪いの武具や装飾品の買い出し依頼』を契約します!」

「リナと一緒に探索者高等学校に行って教師になる!」

「進路を探索者高等学校に変更します!」


 三人が決定した後、長女のラナがダンジョン管理省に連絡を取った。次女のメイは山田市太郎に連絡を取り、三女のリナは中学校に進路変更の連絡を取った。

 後日、ダンジョン管理省職員が来て、ラナは『呪いの武具や装飾品の買い出し依頼』の契約書を交わし、メイは探索者高等学校の教師としての手続をする。

 リナは探索者高等学校に願書を提出した。中学校の友達から急に進路を変更した事に驚かれ、更に探索者高等学校に進学する事で更に驚く。

 新家探索販売店はダンジョン管理省の依頼のお陰で売り上げが上昇した。メイも探索者高等学校の教師となり、リナも探索者高等学校に合格した。

 探索者高等学校に行く日には友達と泣きながら別れ、会社の皆からも激励された。メイは後日寮で合流する予定だ。最後にラナが、


「会社は私に任せて! リナ、頑張ってね。それからずぼらなメイの事をお願いね」

「メイお姉ちゃんの事を私に任せて! ラナお姉ちゃんも頑張ってね! 私も頑張るから!」


 二人が抱き合って別れを惜しむ。そしてリナは探索者高等学校の寮へ行く。

 そして寮で特殊探索科の日野兄妹と会い、入道夫婦と会った。そして入学後の特殊探索科の教室では、


「私が特殊探索科の教師を務める山田市太郎です。私は中学生なので放課後しか教える事が出来ませんが、皆さんにはアンチマジック能力の使用法やダンジョン探索の知識を伝授します。そして特殊探索者として訓練に励み、特殊ダンジョンを探索しましょう」


 日野ひまわりが山田市太郎の自己紹介に叫んで驚いている。

 入道護道は頷いている。

 新家リナは山田市太郎の説明に混乱している。

 そして特殊探索科の副担任となった新家メイは、担任の車田轟のナンパに対して左フックで対応していた。

 いろいろな説明を受けた入学式後は特殊探索科の生徒として、大変な日々が待っていた。

 山田市太郎は日野ひまわりと新家リナの二人に教え込んだ。入道護道は医者として仕事があり、市太郎から少しずつアンチマジック能力の使用法を受けていたからだ。

 山田市太郎の下で二人は勉強し訓練した。猛特訓の末にダンジョン探索が始まり、他のクラスメイトからのダンジョンに行ける羨望と、訓練の過激さで同情された。

 リナが探索者高等学校で訓練している間に、新家探索販売店は急成長した。店舗拡大して仕入れ量も増え、探索者だけではなく一般人にも利用されていく。

 リナは自分が探索者高等学校に行ってからすべてが上手くいっている気がした。


「でね! これが一番高値で売れた元呪いのアクセサリーよ。お値段はなんと五百万ドル! ドルよ!」


 スマホの写真を優に見せて自慢するリナ。

 リナの会社がダンジョン管理省の依頼で、世界中に散らばっている呪いの武具を仕入れて、それをオークションに出している事を聞いた優は、その金額に驚く以上に、リナの顔が近くてドキドキしていた。


「す、すごいですね。もう少し、離れて……」

「そしてこっちは日本刀だよ! 手に取ると人を切りたくなる呪いの妖刀でね! こっちも高く売れてね! 落札価格の三割が会社に入ってくるの! 凄いでしょう!」


 優から『会社が上手くいっている理由は?』と聞いたリナは笑顔で教えていた。興奮して優の隣の席に座ってスマホを見せる。リナの接近にドキドキして顔を赤くする優。


「会社の売り上げは右肩上がり! 従業員の給料アップで皆喜んでいるし! 私もお小遣いもアップしてくれたら良かったんだけどね……」

「えーと、お小遣いは増えなかったんですね?」

「高校生だから一般的なお小遣いしかもえらないからね。それにラナお姉ちゃんが毎月貯金してくれているけどね。……どうして可愛い服って欲しくなるのかな?」

「……今回も結構購入しましたね」

「だって欲しかったんだもん!」

「それにしたって、多すぎだと思いますが……」

「昨日嫌な事があったから憂さ晴らし!」

「……お小遣い足ります? まだ月初めですよ?」

「もうすぐ臨時収入が有るから大丈夫よ!」

「臨時収入?」

「そっ! 呪いの武具の解呪代よ! 一番上のお姉ちゃんが世界中から仕入れた呪いの武具を、解呪するとダンジョン管理省から報酬が貰えるの!」

「そうなんですね。……でも報酬は手渡し? それとも振込?」

「……振込」

「振込なら保護者の許可が必要では?」

「……うん。どうしようか? ……お小遣いほとんどないんだよね」

「……頑張って『保護者の許可を得てください』としか言えません」


 新家リナ。彼女は今までのストレスや苦労を、ショッピングによって解消している。

 ウインドショッピングが趣味だった彼女がお金を持ち、ショッピングが趣味となり散財している。

 姉達が注意するが、一度覚えた欲はなかなか断ち切る事が出来ない。

 新家リナがクレジットカードを持ったら絶対にカード破産するので、新家姉達はリナの散財癖を直そうとしているが完治は遠い。


「家の会社を手伝ってバイト代貰おうかな?」

「それよりもお金を計画的に使う方法を身に着けた方が良いと思います」

「優君もバイトに来る? 新家探索販売店を見学できるよ!」


 優の言葉をスルーしてバイトに誘うリナ。


「……リナさん。とりあえずバイトは置いておいて、そろそろ帰りませんか? いっぱい買ったし」

「そう? もう少し見たいところがあったんだけど?」

「次のお小遣い日まで買い物は厳禁です! お金を使わない様に今日は帰りましょう!」


 優はリナの散財癖を知り、ショッピングを終わらせて帰宅する事にした。

 リナのお小遣いの中身を察した優は、休憩中のカフェ代を持って寮へ帰る。

 そして帰り着くと荷物の多さにメイが「また散財して! この大馬鹿!」と叱られる事となる。

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