第15話 学校生活②
訓練の結果、優は数日間筋肉痛に悩まされていた。
食事でも箸が持てず、真子は優には食べやすい別メニューの食事を作ってくれたりした。
その数日間の間に部活紹介や実力テスト上位発表などもあり、クラスメイトとも友達になった。
「しかし特殊探索科って厳しいらしいな。オレらとは別の授業だけど、重そうな荷物持って校庭を走ってさ」
「あれは荷物を持ったまま逃げる為の訓練って言っていたよ」
気の良さそうな同級生の質問に答える優。
「オレ達は机で座学なのに。勉強よりも体を動かしたいぜ」
「僕は体を動かすよりも座学の方が良いな」
体育体系の同級生の愚痴に答える優。
「他にもダンジョン探索もしているだろう。本当に特別なんだな」
「上級生はダンジョンに行って訓練しているけど、僕は基礎訓練しかしてないよ」
羨ましがる明るい同級生に答える優。
「そういえば実力テストの上位発表は山田が一位だったな。あいつスゲーな」
「運動神経も良いらしいぞ」
「それに副担任補佐って何モンだよ」
山田市太郎。学力テストの成績一位。運動神経抜群。学生だが副担任補佐の肩書を持ち、教師に近い立場にいる特別な生徒。生徒会にも顔が利くとの噂もあるが優はそれが事実と市太郎から聞いている。
「生徒会副会長補佐の立場だね。生徒会役員は教師や生徒に私の立ち位置が分かるので交渉事が楽に進む」
昨日の夕食時に生徒会に所属していた事を聞いたとき「市太郎君って本当に同年代?」と問いかけようとした。
「それに顔も悪くないし。他のクラスの女子達が噂していたぞ」
「そういえば山田、今日は学校に来てないけど休みか?」
「校長とダンジョン管理省に行くから午前中は公休って言っていたよ」
「本当に何モンだよ。山田って」
普通の一般生徒が校長のお供で外出する事を知ったクラスメイト達は、改めていろんな肩書を持つ山田市太郎の異常性を再確認した。
昼食を取る為に友人と学食の食堂に向かっているとき、後ろから優を呼ぶ声がした。
「久しぶりじゃないか、優」
声をかけたのは幼馴染の連夜と竜吾だった。彼等とは別クラスで入学式以来会う事が無かったので久しぶりに声を聞いた。
友人から「誰だ?」と聞かれたので優は幼馴染だと答えた。
「会わなかったからてっきり中学校のようにイジメにあって辞めたと思っていたぞ」
「もしくはイジメにあって登校拒否だな」
「二人とも酷いな。数日会わなかったからって、イジメで不登校や退学って」
優と幼馴染のクラスは離れていて会う機会が無かっただけだった。テスト後に優はクラスメイトと仲良くなり友達も中学生時代よりも増えている。
「お前はオドオドして卑屈だからな。イジメられていないか心配していたぞ」
「この学校はある意味実力主義だからな。魔力が無いお前は底辺になってイジメられていないか心配していたぞ」
優は二人が心配していると思っているが、優の友人達は優が二人にイジメられていたのか? と思った。
「現道はイジメられていないさ。オレ達の友達だからな。クラスでも人気者だぞ」
「勉強も得意だし。人当たりも良い。運動は苦手みたいだが克服しようとしているし」
「それに女子からも好かれているぞ。小動物みたいって。……これって貶しているんじゃないぞ。女子達が小動物みたいで可愛いって誉め言葉として言っていただけだぞ」
友人からの援護射撃にあって幼馴染二人は顔をしかめて言い返そうとしたが、
「しかし本当に現道の幼馴染か?」
「そうだよ。家が近くて子供の時から遊んでいたんだよ」
優は友人に幼馴染の事を話す。小学生時代は友達だと分かったが、中学生時代はパシリのように扱われていた。そして優はパシリ行為を幼馴染として当然だと認識していた。更に、
「だから言っただろう。オレ達は優の幼馴染で優の事を一番想っているんだぜ」
「いろいろとオレ達と遊んだし。連夜には優にサッカーの練習手伝ったり」
「PK戦でゴールキーパーとして手伝ったっけ。あの時はボールが痛かったけど、連夜は凄く上手くなったよね」
「竜吾のときは空手の技の開発に手伝ったり」
「プロテクターを付けていたけど痛かったな。でも練習のお陰で全国大会に行けたんだっけ」
幼馴染の二人が現道をイジメていると確認したクラスメイト達。それなのに優は幼馴染に対して何も思っていない。本気で洗脳されているのかと疑う。
「そうだ。久しぶりに会ったんだから昼飯奢ってくれよ。学食で食べるんだろう?」
「待て、おかしいだろう。どうして現動が飯を奢る事になっているんだ? 自分の金で食べろよ」
「こいつは特別推薦者だから金持っているんだ。お前達の分も奢らせるからな。良いだろう、優」
「ちょっと待て!」
優を押しのけてクラスメイト達が幼馴染二人に立ちはだかる。
「お前達は現道に何を言っているんだ! おかしいだろう! どうして奢らせようとしているんだ」
「うるせーな。優が奢るって言っているんだ。奢ってもらわないと可哀そうだろう」
「そんなこと言ってないだろう!」
段々とヒートアップして周囲に声が響く。その結果、喧嘩かと思って優達の周りに人が集まって来た。
一触即発の気配が優にも感じられた。連夜は怒ると手を出して喧嘩に発展した事が何度もあった。竜吾は空手をしているので先に手は出さない。しかし連夜と喧嘩した相手が先に殴りかかると、正当防衛と言って三倍にして殴り返す。そんな二人は何度も喧嘩をして負けた事はない。
そして口出しされた事で怒った連夜が手を出そうとするとき、
「なにしてんだ?」
優と同じ特殊探索科の日野が間に入って喧嘩の仲裁に入った。
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