第9話 特殊探索科③

 山田市太郎が教壇に立ち、リナと日野が席に座る。


「では説明を始める。議題は特殊探索科について説明しよう」

「山田よ、オレは知っているから帰って良いか?」

「復習として日野君も聞いておくように」

「イチ君、お菓子食べて良い?」

「許可する」


 リナは机にお菓子を出して「はい」と言ってポ〇キーを優に渡した。


「特殊探索科は去年出来た新しい科で、今は五人しかいない。その全員が魔力量ゼロと診断された者達だ」


 優は周りを見渡す。そしてリナも日野も山田も全員が魔力量ゼロだと知った。


「魔力量ゼロの者が特殊探索科に入る絶対条件で、魔力量ゼロの私達は特殊な力を持っている。それを学ぶ為の世界に一つしかない学科が特殊探索科である」


 優は魔力量がゼロなのに特殊な力があるという事に驚いた。


「その特殊な力とは魔力を消す能力である」

「魔力を消す能力?」


 優はオウム返しのように呟いた。


「魔力を消す能力は自分や他人の魔力を消してしまう。この能力を『アンチマジック能力』と呼び、それを持っている者達を『アンチマジック能力者』と呼ぶ」


 魔力を消す事をアンチマジック能力。初めて聞く言葉に優はポ〇キーを食べながら頷いた。


「このアンチマジック能力の利用法はいろいろある。たとえば魔法の無効化。私達には魔法が効かない。火炎魔法や雷魔法も魔力を元に生成されているから当たったら消えてしまう。他の魔法も魔力で作られているから体に当たったら消えさる」

「気体である火や風とかは大丈夫だけど、液体や固体の水や氷や石とかは少しダメージをくらうぞ」


 日野が追加で説明する。


「あとは魔力で姿を維持しているモンスターも倒せるわよ。ゴースト系や精霊系のモンスターとか。肉体が無いモンスター達の天敵が私達アンチマジック能力者よ」


 リナがアンチマジック能力を答える。ある一部のモンスターに有利だと告げた。


「次に魔力を帯びている装備品について説明しよう。私達は魔力を消す能力があるので、魔力を帯びている装備品を持つと、装備品についている魔力を消してしまう。私達は魔力を帯びている装備品を使う事が出来ない」


「えッ! じゃあ、モンスターと戦えないんじゃ!」


 優の質問に市太郎は答える。


「モンスターと戦うのは普通の探索者に任せれば良い。私達は戦闘職ではないのだから。話が逸れたな。装備品には呪われた装備品がある。装備した者を混乱させる剣や身に着けたら取れないネックレス他諸々。しかしアンチマジックでそのような装飾品を消し去る事が出来る」


「呪われた装備品って見た目は良いから高価で取引されるんだよな。安く仕入れて高く売る。楽で笑える稼ぎ方だよな」


 ニヤリと笑う日野にどう返事をすれば良いのか分からない優。


「私の家の会社が呪いの装飾品を世界中から安く買って、解呪して高く売って会社も儲かってウハウハよ!」


 リナの言葉の意味が分からなかった優、リナの補足説明で「家は新家探索販売店で社長は一番上のお姉ちゃんよ! 優君も必要な装備品を買うなら家で買ってね」と宣伝した。


「他にも呪われた装飾品によって呪われた人の呪いも消し去る事が出来る。医者やエクソシストのような事もしている」


 入道先生の追加の説明を聞いて、優は自分が十字架を持ってお化けを成仏させるような事を想像した。


「そして特殊ダンジョンの探索。普通の探索者が入る事が出来ない特殊指定されたダンジョンの探索」


「特殊ダンジョン?」


 初めて聞く名前だった。ダンジョンにはクラスが定められていて、一番簡単なダンジョンをEランク。そしてD、C、Bと段々と高くなり、最高位難易度ダンジョンをAランクダンジョンと呼ぶ。


「特殊ダンジョンとは各国のダンジョン管理省が定めるダンジョンの難易度が測れない名称で、命の危険がある探索が困難なダンジョンや特殊モンスターが蔓延るダンジョンで、普通の探索者では攻略不可能と言われるダンジョンを、管理省が特殊ダンジョンに定められる」


「そんなダンジョンを探索するの!」


「ダンジョン管理省から依頼があれば私達も参加する事になっている。ダンジョン調査や資源を確認する為には必要な事だ。高ランク探索者と一緒に探索する事になっている」


「大丈夫だよ、優君。基本的に調べるって二時間くらいしか探索しないから。倒せるモンスターは探索者の人が倒してくれるし」


「……基本的じゃない場合は?」


 優が質問するとリナはお菓子を食べて何も言わず、日野は窓を見て目を合わせない。市太郎は「基本的に大丈夫だ。応用編は後日説明しよう。基本が大事だから」と言って質問を逸らした。


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