第6話 入学式②
山田市太郎の言う通り優と一緒のクラスだった。
新入生約百六十人で四十人に分けられてクラスが四つ。優と市太郎はAクラス。
連夜と竜吾はDクラスと離れていた。
席は指定されていて市太郎と別れて優は席に座る。
他の新入生たちも教室に入り席に座っていく。
しばらくすると教師が入って来た。
「ようこそ、探索者高等学校へ。これから三年間、探索者になる為の勉強に励んでもらう」
スーツの似合う厳しそうな麗人の美女で自己紹介時に「ダンジョン探索者の新家だ。私がお前達の副担任となる」と凄んだ口調で言った。
「校則は五回くらい読んで頭の中に叩き込め。校則を違反したら罰則が有るから気をつけろ。罰則には体罰もあるが親やPTAや法に訴えても無駄だ。ルールを守らない探索者はこの世に必要ない。体罰が嫌なら死んでこの世から消えてしまえ!」
過激な事を言う担任に引くクラスメイト達。スーツが似合う美女だが言葉使いが荒々しく怖いと、クラスの皆が同じことを思っていた。
「午前中授業は一般常識だ。国語数学物理歴史などの一般の高校が学ぶ教科を勉強する。午後からは探索者としての知識の勉強と訓練だ。訓練では怪我人は多いが、死人はこの十年で手の指くらいしかいない。だから怪我して強い探索者になれ」
訓練で死人が出る事に驚く優。見学が可能なのか挙手して聞きたいが、先生が怖くて質問する事が出来ない。他のクラスメイトも怖くて質問できないようだ。
「ダンジョンの探索法からモンスターの能力、そしてダンジョン内で取れたアイテムや鉱石がどのように経済を回しているのかを覚え、訓練では武器の使用法、魔法の訓練、モンスターとの戦い方を学ぶ。他に質問は?」
先生に質問と言われたが、怖くて誰も質問する者は居なかったように思えたが、誰かが挙手したようだ。
「新家先生。部活動に関する事ですが」
「校則を読め。数日後に部活説明会もある」
挙手した生徒は山田市太郎だったようだ。そして、
「あとこのクラスには特殊探索科の者が二人居る。午前中はこの教室で勉強し、午後は特殊探索科実習室で訓練するように」
他の生徒が挙手をして特殊探索科は事を聞いた。
「特殊探索科は去年できた新しい科で全学年合わせて五人しかいない科だ。探索科とは一部だけだが訓練内容が違うから新しい科として設立した」
「特別な訓練というのは私達には教えてもらえないのでしょうか?」
「参加しても良いが普通の探索者が習うべきモノはないから参加するだけ無駄だ。特殊探索者が必要な訓練であってお前達に必要な訓練ではない。時間は有効に使え」
投げ捨てるように質問を打ち切った。副担任は特殊探索者の事が嫌いなのか? と思わせるような言葉だった。
「あとは担任に聞いておけ。以上だ」
……先生が担任でしょうと、皆がツッコミを心の中で入れるが。
「副担任の新家先生。担任の車田先生は?」
「あいつなら起きているのに寝言を言いくさったから、廊下に寝せてやったぞ」
再度質問した山田市太郎に答える副担任。廊下側の一番ドアに近い生徒が廊下を見ると中年男性が倒れていた。殴られた形跡がある。
「他に質問は無いな? なければ質問は終わりだ。今日は入学式のみで終わりだ。明日は実力テストがあるから勉強しておくように。では解散」
そう言って教室を出ようとする先生が言い忘れたように、
「自己紹介はお前達でやっておけ」
と言って教室を出て廊下で気絶している担任を引っ張って行った。
静かな教室なる。他の教室は担任による説明が続いているようで声が聞こえる。
「教壇にプリントがある。今後の日程表と時間割だな」
「注意事項も書いてあるな。……とりあえずオレ達だけでホームルームでもするか」
「ついでに自己紹介しましょう」
優はクラスメイトのたくましさに感動し、今後の学校生活に不安を感じた。
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