第5話 入学式①
入学式で校長先生から新入生達へ探索者の役割を聞く。
世界が安心して暮らせるように探索者はダンジョンを探索してモンスターが外に出ない様に討伐し、ダンジョンを形成するコアを破壊する。経済を豊かにする為にダンジョン内で取れる鉱石や宝石などで潤す。
そして魔力を持つ者は心正しい探索者を育成する為の探索者高等学校だという話を聞く。
そして特殊探索科の事も説明があった。一年前に設立した新しい科で特殊な才能の者しか入る事ができず人数が少ない。専門的な事を学ぶ特殊探索科は世界でもこの学校だけで、将来は他国からの受け入れも視野に入れているそうだ。
そんな特別な所に入る事になった優は疑問に思う。
優の魔力量はゼロで、特技も無い。性格も探索者向きではない。テレビ越しでモンスターを見ても恐ろしいと感じ、戦うと思うだけでも無理だった。
そんな優がどうして学校直々に特別推薦されたのかいまだ疑問だったが、その理由が特殊探索科に入る才能だとしたら、優はその才能を捨てたいと思った。
その才能のせいで中学校では虐められて不登校になった。
幼馴染二人からは無視された。
そしてその幼馴染二人は今、優の前に居る。
「本当に来たのか。優の性格では無理だろう。なあ、竜吾」
「性格以前の問題だ。魔力量ゼロが来て良い学校ではないぞ。蓮司」
藤堂寺蓮司(トウドウジ レンジ)。中学校ではサッカー部に所属。イケメンのエースストライカーで女子に人気だった。
永森竜吾(ナガモリ リュウタロウ)。中学校では空手部に所属。不正を許さない正義感のイケメンで女子に人気だった。
二人とは家が近く子供のときから遊んでいたが、小学校高学年からは優は二人の影になり言う事を聞いて、蓮司と竜吾の二人からよくお使いを頼まれていた。他の者達から見たらパシられてる。
優は今でも親しい幼馴染と思っているが、蓮司と竜太郎はただのパシリとしか思っていない。怖がりの臆病者で会話しても面白くない。
そして中学校時代に二人が真面目に受験勉強しているのに、優は特別推薦で入試試験無しで入学できる事を恨み、優に対して裏口入学の噂を流した。その結果、優は苛められて登校拒否になる。幼馴染二人は「高校も登校拒否しろ!」と思っていたが、探索者高等学校に入学した優を『不正して入学した』と言いふらして退学させようと考える。
「今からでも遅くないから退学しろ。不正入学だろう! この学校には才能ある者しか入れないのに魔力量ゼロのお前が入学して。皆の気持を考えろよ」
「お前が居ると迷惑だと分からないのか? 地元が同じだからオレ達までお前と同じと思われたらどうするんだ! 裏口入学するなんて情けないと思わないのか?」
二人の声が周辺に響き、優は魔力量ゼロの裏口入学と認識された。周囲が優を見てこそこそ言い始めた。二人に責められて恥ずかしさで逃げ出しそうになる。
「少し良いかな?」
優たちの会話に入って来る新入生。同年代とは思えないほどの理知的な雰囲気だ。
「私も魔力量ゼロだ。父親はダンジョン管理省に務めていて、コネや裏口入学で入ったと言われてもおかしくない。そして彼と同じ特別推薦で入学した。私も皆の気持を考えて迷惑になる前に退学をしないといけないのかな?」
優と同じで魔力量ゼロの者が入学した新入生に蓮司と竜吾は口籠る。
「君たちは探索科の者だろう。私と彼は特殊探索科だから、そこまで迷惑にはならないはずだ」
そして優を見て、
「初めまして、現道優君。私は山田市太郎(ヤマダ イチタロウ)だ。君と同じ特殊探索科だ。これからよろしく頼む」
握手を求める山田市太郎。優は反射的に握手をした。
「プッ! 山田市太郎って、なんてネーミングセンスだ。笑える名前だな!」
「だったら名前を呼ばないでくれ。君に名前を呼ばれると品が落ちるからね」
「な!」
「では失礼するよ。行こうか現道君。私と一緒のクラスのはずだ」
そう言って優と市太郎は蓮司と竜吾を無視して校舎に入って行く。
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