第4話 プロローグ④

 探索者高等学校で美少女の先輩に自己紹介され、現道優の心臓は短距離走を走り切った勢いの如くバクバクしていた。


 顔が火照っている感覚を無視して黙って握手する優にリナは言う。




「後輩君、名前は?」

「優です。現道優です」




 心臓のバクバクが止まらないので単調に答える。




「優君だね。これからよろしくね」

「は、はい」

「もうすぐ入学式でしょう。早く行かないと遅刻するわよ。案内してあげる」


 そう言って握手していた手を握ったまま校内に入る。


「優君は何処から来たの? 趣味はある? 特技はなに? スポーツとかやってた? うちの学校は特殊だから武道関係は強いわよ。中でも剣術部とか槍術部とは薙刀部とか鎖鎌同好会が強いわね。ちなみに私は……何部でしょう?」


 明るく問いかけるリナに対して、優は美少女と手を繋いて歩いている事が恥ずかしく、どうすれば握手を外せるのか考えていた。外そうとしてもリナが優の手をガッチリ握って外す事が出来ない。


「あの、手を外してほしいのですけど……」

「質問に答えたら外しても良いわよ。正解は?」

「……剣術部ですか?」

「はずれー! 罰として手を繋いだまま行きましょう!」


 リナはアハハと笑い、結局手を繋いだままの状態になった。


 そして入学式のある体育館の近くに行くと入学生や在学生が多くなる。そしてリナを見ると在学生の女子が声をかけてきた。




「この子が新入生なの? かわいい子ね、わんこみたい!」

「そうなのよ。特殊探索科の新入生よ」


 と言ったら在学生の声が聞こえなくなった。聞こえてくるのは入学生の声のみ。


「……しっかりね」

「気を強く持てよ」

「大丈夫。きっとなんとかなるわ」

「最悪の場合は交番に駆け付けろ。それで時間は稼げるからな」




 在校生の男女が優に同情的に慰める。特殊探索科とは酷い所なのかと思うと、恐怖とストレスで胃液が上がりそうになり吐き気がしてきた。


「あ、あの……」

「大丈夫よ。そこまで酷くないから。特殊探索科は全員で五人しかいないし。みんな仲良しだから」


 そこまで酷くないという意味を教えてもらうと思ったが、リナが「体育館に入らないと入学式遅刻するわよ。また後でねー」と言って別れた。


 在学生は優を同情的な目で視て、新入生は優を不思議そうに見る。

 その視線に耐え切れなかった優は吐き気に耐えながら体育館に入った。


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