05 悪魔にもいい奴はいる
『以下のことから、新型であり高機動性の期待であると思われます。現在の我々の機体では倒せない可能性があると……』
「過大評価ではないのかそれは?」
アクア連邦、首都アマルス。
その中心部にある旧特別首都司令部。
国が自ら指揮を執ってきた司令部の内部。
今は悪魔がひしめく指揮所へと堕ちていた。
「そこまで脅威となるのか?」
『ええ。なにより、現れて一時間足らずに中隊が全滅したとのことです。』
「一時間足らずで中隊が全滅しただと?」
ありえない。
明らかに人類が造り上げれるとは思えない。
一時間もかからないうちに滅ぼすなど、どうやって―――?
「侵入経路はどこからかわかるか?」
「おそらくは鹵獲した機体の内部に潜んでいたものと思われます。作業員が先に殺されたところから考えるに……」
襲撃を受け鎮圧されてから一時間後、調査員による報告を受けた軍の上層部と王族、貴族の間でざわめきが広がった。
今まで一度たりとも責められたことがないはずなのに、なぜ?
どこかの貴族が派遣したものがミスをしたのか?
「えー侵入経路は鹵獲された敵機もしくは回収された友軍機の中に入り込み、確認するよりも早く整備士を殺害、その後配水管を通り取調室に侵入したと見られます。」
「よくそこまで調べがついたものですね。」
「人間、ここまで悪魔になめられてるなんてね。」
結局契約内容が分からないし、なぜか傍にいようとするし、とりあえず護衛を一人つけて見張りつつ、契約内容を探ることになっている。
今のところ、怪しい動きも見せず、それどころか人を守ろうとする行動をみせている。
「報告内容はそれで間違いないのかい?」
「ええ。彼らの情報に一致していますからね。」
自由にゆったりとくつろぐ悪魔を背後からいつ殺せるかとらんらんと、殺意たっぷりの目で見つめてくる護衛(処刑執行人)。
全く見たことのない光景……。
「彼ら?」
「悪魔にはそれぞれ特有の力が宿っています。空を飛ぶ力、炎を操る力など、多くあります。が、その力を使えるのはある程度育ったものにしか宿りませんし、能力に目覚める悪魔もほんの一部にしかすぎません。私の場合は、金属と炎に関する能力を持っています。
詳細は明かせませんが、金属から情報をもらうことができるのですよ。」
「ってことは今後私たちの情報は筒抜けになるのかい?」
「私はあの者とはつながっていませんよ。つながっているのであるならあの下等悪魔を殺さなかったはずでしょう。」
「信頼させるために行ったと考えられるし、独自に動いてる可能性もあるだろ。」
「そんなに私たち悪魔が冷酷に見えますかね?」
「見える。」
即答か。
さすがの監視役も兼ねている護衛も呆れた。
ここまで平然と今まで人類を恐怖に貶め、奪ってきた悪魔に恨み言や怒りをぶつけず、会話をしているリアは帝国の王女としてか、それとも信頼してるのか、いや、それはないか。
しかもどこまでも狡猾で、何を考えてるのかを隠すことがある悪魔をこうも表立って堂々と試すような、質問までする。
肝が据わってるにもほどがあると思うが……。
「アハハハ‼腐っても帝国の王女か」
「笑い事ではないですよ。ただでさえまだ目的や契約内容が分からないのに姫様のそばにいる悪魔に平然と何の警戒もする様子もなく会話をしていることだけでも心配です!」
カッ、カッ、カッ、とコンクリートがむき出しになっている廊下をパイロットにのみ作られた底が北にある森に生息する神獣と呼ばれる獣の死骸から取られ、作られたゴムよりも固く、滑りづらいブーツで踏みしめ、歩く。
少尉と二等兵。
二人とも、先ほどまでリアたちの会話を聞いていたのだ。
しかもドア越しに。
普通あらそれで憲兵やら警備員やらにつかまって処罰を受けるのだが、幸いというべきか、誰もいなかったため今こうして歩いている。
「警戒って、ほんとに警戒する必要はあるってのか?」
「少尉まで何を言い出すんですか⁉」
「だってよぅ。あそこまでされちゃ、味方と一応思っていいと思うぞ。」
「いやそこが―――」
二等兵がさらに反論をしようとした直後、けたたましくサイレンが鳴り響いた。
「っと、来たか。よく来るなあ。」
「ッ。はあ、こんな時にも来なくていいでしょうに。」
すぐに出撃準備を整えようと駆けだしかけ、
「まあ、あんまピリピリすんなよ。人にいいやつがいるのと同じように悪魔にもいい奴と悪い奴尾いるんだろうからよ。」
不意に言われ、驚いて少尉を見る。
でも、少尉はすでに駆け出し、背中が少しづつ小さく見え始める。
「……はああ」
もう一度溜息を吐きながら二等兵も後を追い始めた。
時刻は深夜二時になろうとしていた。
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