02 戦場をかける女王

『こちら、総指揮官。これより生き残りを救出し、敵性部隊を迎撃せよ。』

「了解。」

 太陽を追いかけるかのように、疾駆する新型ランドクラフト:ライゲキを駆り、アマクロス帝国第三王女リアナ・クロス。

 年は二十代ほど。帝国王特有の黒水晶のような、髪に、右目が、紅目こうもくで、左目が、黒目こくもく、肌は、透き通るように白い。

 しかし、帝国の王女が、軍人である。

 なぜなのか。

 それは、戦争が起きたきっかけまでさかのぼる。



 本来、兵器は、互いの技術力を競い、誰かを殺傷するためではなく、自国の、発展やその象徴として作られていた。

 歴史の中で繰り返された戦争の中で使われた、兵器が、戦争放棄されたことで、使い道をなくした結果、兵器を争い以外の方法で使える道を探そうとした結果、自国の発展や象徴のみに使えばいいと、結論に至った。

 もしかすると、今までの仕事に使われてきた、機械にとってかわるかもしれないと、多くの人が期待した。

 戦争によって使われてきた兵器は、処理するだけに、国が貧しくなるほどコストが高丸ほど多く残っているために。

 実際、兵器を、本来負うはずだった目的とは違う運用をすれば、機械に成り代わりそうなほどの性能があった。

 今まで地上から打ち上げるだけに大量のco²を排出してしまう高温ガスを世界最速の射出力を誇る、戦時のころに実戦投入することができた、秒速約八キロメートルの弾丸を撃ち出すレールガンを用いることで、co²削減に成功。

 爆薬を、鉱石を採掘するために洞窟を破壊するために、また、新たに土地を作るために、森を焼夷弾を用いる、航空機を、新たなスポーツとして出すなど、兵器は、戦争から、生活と暮らしのために必要な存在にいつしかなっていった。

 中でも、アクア連邦は、他の国に先駆けて、人工知能を搭載させた兵器で、様々な用途に対応、さらに、往復式カタパルトを開発し、航空機を少し操作することで、

 進発、もしくは停止を、カタパルトで行うことができた。

 また戦争が起きるのではと心配する声もあった。

 実際にそうなった。

 始まりは、アクア連邦の政治を行う高層ビルの地下。

 駐車場に使われているのに、さらに下があることを、大統領自らが偶然見つけた。

 その頃は、M.4.2、震度3を記録した地震があった。

 その結果、長い時間をかけていたのか、壁の一部が崩れ、そこに空間が見つかったのだ。

 はしごやエレベーターもない。

 ただ下に続く黒い穴がぽっかりと口を開けていた。

 調査はすぐに開始されるが、明かりを照らしても底が見えなかった。

 推定の深さは約1500メートル。

 無人探査機を使い、下の様子を探れば、予想外な事実を知った。

 

 思った以上に浅く、下には厳重な扉が敷いてあった。

 まわりに危険がないか注意しながら、調査隊は下に降下し、扉を調べた。

 扉は、タングステンと銀の合金で造られ、高さ約3メートル、幅2メートルほど。

 三重に錠が下ろされ、青銅や銀で造られていた。

 しかし、どれも錆びているとはいえかなり頑丈に作られ、むしろ、扉と一体化しているかのように、びくともしない。

 歴史的価値のあるものかもしれないと、すぐに学者が呼ばれた。

 その後、―――何が起きたのかわからない。

 秘書が様子を見に行った時、既に、そこには駐車場とは言えない光景が広がっていた。

 何もない、黒い何かが、全体を埋め尽くしていたのだ。

 学者や、様子を見ていたはずの大統領の姿はなく、代わりに獣とも人の声ともつかぬうめき声が、充満していた。

 恐怖にかられ、秘書が慌てて、外に飛び出した。

 しかし、そこは、かつての華やかな街ではなく、荒廃した、戦火に焼かれた町野が広がっていた。

 秘書はやがて、ここにはもう誰もいないと悟り、自死した。



「敵機確認。友軍機は、……健在だが......。」

 報告をしつつリアナ・クロスは違和感を覚える。

 どれも全体に傷を負っている。

 だが、攻撃方法がおかしい。

 普通なら、遠距離、中距離から砲撃をし、遠くにいる敵を屠るはずだ。

 しかし、今はどれも、敵機に体当たりをしている。

 当然相手からの攻撃を受ける。

 なのに、なぜ

『? 姫様、友軍は最後に信号を送っていた人は自害。友軍は全滅したはずですが……。』

「だ、だが友軍機がすべて動いているが.......」

『ど、どういうことだ?』

『ステルサーより、管制員に報告。現在、戦線離脱に成功した。同時に敵機が進軍をしている。』

『っ。了解。原因は後回し。姫様、敵機の排除を。』

「あ、ああ。分かった。」

 意識を切り替え、様子を再び見たとき、体当たりをしていた友軍機が一瞬にして吹き飛ばされていくのが視界に映った。



『〇〇連合より各位、これより、戦闘に入る。』

『護衛艦ミグレッサー了解。』


『無人機起動』


『自走型ロケットランチャー。』

『前377機稼働開始。』


『続けて、護衛艦各位及び、準巡洋艦、巡洋艦、駆逐艦、―――戦艦、出撃せよ。』

『了解。』

『輸送艦、無人機を入力した座標まで送り次第撤退せよ。』 

『了解』


『護衛艦』

『ミグレッサー』

『レーラー』

『サキラー』

『カクリエ』


『準巡洋艦』

『スレイダープロトタイプ』


『巡洋艦』

『麒麟』

『流星』


『戦艦』

  ・

  ・

  ・ 

  ・

  ・ 

  ・

『竜神』



『出撃開始』




 敵機の体当たり攻撃は容易に防ぐことができる。

 そもそもわれらの技術は到底人が追いつけることではない。

 いくら体当たりしたところで何の損傷も与えられない。

 否。人の世界でもそうか。

 そう思案していた悪魔の軍勢に、一つの金色の機影が、躍りかかる。



 無人機をすべて、ひそかに装備されていた重機関銃で薙ぎ払い、指揮官機に対物狙撃銃の照準を合わせる。

 砲撃。

 射出されたのは、特注して作ってもらったウラン劣化弾。

 悠然と避けることもなく構えることもなく、眺めていた指揮官機は、突如出現した機体に驚き、対処に送れる。

 命中。

 主砲の側面に当たり、

 炸裂弾を合わせていたのだ。

 方針が片方吹き飛ぶ。

 同時に、機体が傾く。

 その隙をつき。


 帯電。


 高周波ベルトが青みを帯びる。


 そして、


 切断。


 指揮官機が縦に、斬られた豆腐のように、裂け崩れる。

 一瞬で、指揮官がやられた。

 それに驚いてか、まわりにいた近衛兵が動きを止める。

 そこから先は、一方的な殺戮だった。

 ライゲキの高機動性とそれに相性の良い近接武器、さらに重機関銃や、長距離砲型の狙撃銃により、ほとんどの敵機は、ライゲキの射程内に入っていたせいか、全滅した。

「敵機は全滅した。帰投する。」

『え。はや!まだ一時間もたたずなのにですか?』

 管制員の驚きの声にリアナ・クロスは苦笑する。

 あまりにもこの機体は速すぎるせいなのだろう。

 時間を確かめても、30分ほどしかたっていない。

「ははは......」

 から笑いが漏れ、そのことについて、あとで、開発した人たちに感想文を提出してやろうかと思っていた姫君であった。



『敵は排除した。』

『了解。帰投せよ。』


 さあ、今度は俺たちの番だ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る