猫と雨

文学少女

第1話  目覚め

 しんと冷えた空気が窓の枠から滲み出し、その冷たさが顔にじんわりと伝わり、私は目を覚ました。

 ぼやけた頭で部屋の白い天井を眺め、意識を次第に取り戻していくうちに段々と雨の音が聞こえてきた。

 部屋には冷たい空気が漂い、私は布団の温もりから抜け出すことが中々出来なかった。そして、布団の中にもうひとつの抜け出せない要因があった。


 足元で寝ている猫である。

 

 布団の中に潜り込み、私の足首を枕にしていつものように寝ているようだった。冷え性の私の足も、猫の穏やかな温もりで暖まり、憂鬱な私の心も優しく温められ、朗らかな心地になる。

 私は足を動かさないように気をつけながら、そっと上半身を起こして、ベッドの横、私の右側にある緑色のカーテンをさっと開けた。

 灰色の雲が立ち込めて淀んだ空から、真っ白な太陽の光が私の部屋に降り注いだ。

 その日の光を体に浴びて、私は手を上に挙げてぐぅっと伸びをした。そうして、私の体はようやく起きた心地になった。


 枕元にある『檸檬』を手に取り、私は上半身を布団の中に潜らせながら横になった。

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