第4話 交渉

「ところで、死神さん、

 なんでそんな農作業の服装をしているんだ?

 死神ってのは、ローブを着て、大きな鎌を持っているってのが

 定番じゃないのか?」


「ははは…!!!

 いつの時代の死神ですかな、それは」

死神はニヤニヤ笑った。

「死神とは神に使える農夫。それで鎌を持っているのでございます。

 ただ、それは昔の話。

 神の世界でも、今どきの農夫は、このような格好で仕事をしているのでございます」


ふーん、そんなものなのか。

もう少し、この茶番に付き合うとしよう。


「で、あんたが手に持っているのは何だ? 鎌じゃなさそうだが」


「いいところに目をお付けになられましたね。

 これは、機械の力で草を刈る道具でございます。

 今どき、鎌なんてものを使っていては、時間がかかり過ぎて

 刈り終わる前に死を迎えてしまいますよ。はっはっは」


死神は、何かおもしろいことを言ったつもりのようだったが、

俺は笑えなかった。


「まあいい。死神の世界も現代的になったってことだな」


「左様でございます」


ここで、ふと、思いついたことがある。

死神が見えて会話できるということは、

何かしら、寿命を延ばす交渉ができるのではないか。

試しに聞いてみた。

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