44 隠れ沼地
危険な誘惑に誘われて、あれから三回、死神パニッシャーと戦った。
心の中では馬鹿じゃないのと叫びながらも別の部分では攻略サイトにも載っていない情報を見つけた気分もあったりした。
結果として盾術補正も+2になった。
おお、やっぱりだと喜んだものの、ここではたと気付く。
あれ?
これって、まじめに努力した結果の成長なんじゃなかろうかと……。
だって、成長したのって剣術補正と盾術補正。どっちも普通に訓練で手に入りそうなスキルだし。
そうじゃなかったら訓練の意味は? ってなりそうだし。
「…………」
そんなことも今まで知らなかったのかと落ち込んでしまった。
「…………」
よし復活。
それはそれ、これはこれ!
さあ、気を取り直して酔夢の実を求めて移動だ!
結果的にダンジョン大樹の木材もたくさん手に入って、大弓用の矢もしばらく困らないぐらいに作ることができた。
再びクレセントウルフに偵察させて大弓による不意打ちで進む。
なんだか地味だけど確実だし、気が付いたら囲まれていたということがないのもいい。
ただ、隠密移動しようと思ったら鎧を着ていられないので、いきなり接近戦になった時に慌てるのはどうにかしたい。
早着替えをする方法はないものだろうか。
ゲームから装備を出すときが手間なんだよなぁ。
ありがたい存在もずっと使っていると問題点が見えてくる? 有難みが薄れる? 感謝しているのは変わらないよ。
うん。
「あった」
やっと『30』のポータルを見つけた。
「……で」
『鋼の羽』のジンから聞いた話だと、ここから大岩を基準に左側にって……あ、あれか。
よし、と突き進むとゴーストナイトが出てくるときのような雰囲気になった。
「これか」
薄暗い雰囲気の向こうで木々が開けて人魂さ迷う沼地が現れた。
……こんなところにあるのか。
目当ての木は沼地の真ん中に生えている。
グネグネとよじれた枯れ木のようなそれの先に今にも落ちそうなほどに太った実がある。赤紫の硬そうな皮に包まれた果実。
『酔夢の実:中には芳醇な酒精に満ちている』
遠くから鑑定したらこういう結果になった。
本当に酔夢の実だ。
さてどうやって近づこうかと思っていると、沼が泡立ってそれが現れた。
『ドランクアーマードクロコダイル:頭に生えた酔夢の実で獲物を誘う大鰐。硬い』
鑑定がそのまま仕事をする。
チョウチンアンコウのワニ版?
奇襲というにはゆっくりとした登場だけれど、あんな大きなものを頭に乗せているだけあって、本体の方も巨大だ。
ていうかもう恐竜だ。
いや、ドラゴン?
あんなのと真正面からぶつかり合うなんて正気の沙汰ではないけれど、やらないといけないのだから覚悟を決める。
ていうか、この話は聞いてなかった!
『鋼の羽』に俺を騙すメリットはないから、ジンにこの話を語った『英雄の剣』が真実を言わなかったということになる。
名前の割に性格が悪そうだ。
「ええいもう、畜生!」
喚きながら勇気を奮って幽毒の大剣を構える。
余裕でこっちを一飲み出来そうな口を開けて近づいて来るので、それを避けて切りつける。
こっちはいつもの夜魔デイウォーカーに対物&対魔結界に斬撃&打撃強化、それに分身もプラスして万全の態勢だ。クレセントウルフも召喚してヘイトを散らすのも忘れない。
アーマードと名前が付いているだけあって、外皮もかなり硬い。
だけど幽毒の大剣がまとったオーラは防御を無視して傷つける。
溢れ出した赤い物を見て、「あ、血がある」と思った。
血があるのなら戦い方も変わってくる。
幽毒の大剣だけじゃなく幽茨の盾にも血装で血を纏わせておく。
付けた傷に血装のトゲを食いこませて血を吸い続ける。
血がある生物なら、血を失えば動きが鈍くなるし、こちらは逆に体力が戻る。
大きな爬虫類は無尽蔵のような体力を見せたけれど、持久戦はこちらの勝利となった。
ドランクアーマードクロコダイルからは精力強化というスキルが手に入った。
精力? なんで精力⁉
あっ! スタミナ? スタミナって意味か?
たしかにしつこかったけど?
孕ませ力向上と合わせて変な意味にしか取れないんだが……。
そして酔夢の実も無事にゲットできた。
「ああもう……」
ドランクアーマードクロコダイルから出て来た魔石を回収し、安全そうな場所を求めて移動。
あ、ツリーハウスを発見。
魔石を払ってツリーハウスに入り、酔夢の実をゲームへ。
『酔夢の実 1/1』ってなった。
よし。
後はトレントの木材を七つか。
がんばろう。
あ、後は『鋼の羽』を手伝ってウッズイーターを倒さないといけないのか。
それも頑張ろう。
亀なら血が出そうだし、スキルを狙ってみよう。
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