36 一気に駆け抜ける


 新しいグレートソードも用意して改めてダンジョン攻略だ。

 いつものように身一つでダンジョンに入り、ポータルで十六階に飛んでから人気のない場所でさっと準備する。


 新品の鎧に包まれていざ出発!


 ある程度進んでいたのでその道を辿りながらオークたちを薙ぎ払ってすぐに十七階に下りる。

 この階層はオークを主力として押し通すつもりのようだ。

 様々な武器を持ったオークが襲いかかって来る。

 どのオークも手にした武器の使い手として現れてくる。持っている武器によって戦い方が様々だし、さらに敵側の徒党構成によって連携のバリエーションが増えるので対応に混乱しそうになる。

 とはいえ基本は同じ。

 黄金サクランボによる能力上昇は相変わらず力と体を重点的に上げていくので、攻撃に耐えて反撃するという戦闘方法を維持する。


 それに、いろんな武器の使い手と戦えるということは、それらの血を吸う機会にも恵まれたということで……。


 このおかげで斧術補正、槍術補正、盾術補正が手に入った。

 なにより盾術補正が大きい。

 盾を使った立ち回りがとてもうまくなった。

 後、射撃補正と剣術補正に『+1』という表示が付いた。

 同じスキルを持っている相手から吸血するとスキルが重なってレベルアップするのかと思ったけど、オーク相手に吸血を繰り返してもそうはならなかった。


 そういえば、この二つのスキルを最初に手に入れたのは十階のゴブリンとの戦いだったはず。

 なら、同じ魔物からは一つのスキルしか奪えず、別種の魔物が所持済みスキルを持っていた場合にレベルアップする、ということなのかもしれない。


「ふひぃ……」


 兜を外すとむわっとした空気が中から溢れてくる。

 手でパタパタしたところで焼け石に水だけれどしばらくはそれで鎧の中に風を送り込んで一息つく。

 十八階への下り階段が見えたところで休憩することにした。

 鎧の中の蒸れが落ち着いたところでゲームでの日課をささっと終わらせて食事を取り出す。

 今回はカップスープとBLTサンド。それとみかん。


 ずっとダンジョンにこもっていて、なんとなくビタミン不足が怖くなったのでみかんの実を商店で買って一本だけ果樹園に植えた。

 別に他の果物でもいいんだろうけど、ビタミン補給といえばみかんと思ってしまう。


「はぁ……」


 一分ぐらいだろうけど放心する。

 もちろん安全を確認した上でだけど、ずっと敵の気配を探らないといけないダンジョンの中にいると全力で弛緩できる時間がどれだけ貴重かというのがよくわかる。


 ふかふかベッドに飛び込んで全力で脱力したい。


 儲かったらやっぱり家が欲しいなぁ。

 豪邸とは言わないけど内装や家具にはこだわりたいかなぁ。


「……よし、休憩終了」


 ぱっと意識を切り替える。

 二十階を超えたら森のような場所だというし、そこなら目標の素材も手に入るはず。

 酒が作れたら今よりも儲かるはずだし、そうなったら豪邸だって簡単に手に入る!


「がんばるか!」


 気合を入れて階段を下る。


 十九階や二十階は現れる魔物の頻度が増えただけで種類的な追加はなかった。

 対抗手段ができてしまっている状況だと数が多少増えたところで足を止める理由にはならず、ボス扉の前まで一気に突き進んだ。


 十階の時と同じような立派な扉の前で休憩を入れてから挑戦する。

 中に入ると、やはり鍵のかかる音がする。


 そして中にはひときわ大きなオークに率いられたオークの集団が待ち受けていた。

 鑑定の結果は、オークジェネラルとなっていた。

 顔まで隠す重装甲の鎧姿で、オークだとわかるのは兜の前面を守るバイザー部分を押し退けて覗く特有の豚鼻だけだ。


 ブオオオオオオオオオオオ!!


 オークジェネラルの遠吠えによってオークたちが俺に殺到してくる。

『夜魔デイウォーカー』&各種魔法で強化して迎え撃つ。

 殺到する攻撃を盾や鎧で受け止め、グレートソードの一閃で薙ぎ払う。

 あるいは『瞬脚』で瞬間的に自分の位置を変えてオークたちを混乱させたりした。


 だけど、出発点で戦い方を間違えていた。

 しばらくして気が付いた。


「んなっ!」


 オークジェネラルの周りの地面で光が発生すると、そこから新たなオークが誕生していたのだ。


「ずるい!」


 オークジェネラルを倒さないと、いつまでも数は減らないということだったんだと気付いて戦い方を変える。

 マドハ〇ド方式だと考えれば倒すだけ魔石を落としていくから損ではないんだけど、長期戦なんてやりたくない。


『瞬脚』を使って包囲するオークたちから離脱してオークジェネラルを直接狙う。


 ブフウッ!


 とはいえさっきから何度かこの戦法を使っていたので奇襲一発目は失敗。ジェネラルの持っていた大鉈みたいな武器で受け止められてしまった。

 新たなオークを召喚して囲い込もうとして来る。


 だけどそれなら……。


 再びの『瞬脚』

 死神パニッシャーの時にも使ったシールドダッシュだ。


 ブギイイイイイイイイ!


 盾に打たれて甲高い悲鳴を上げるオークジェネラルをそのまま広い空間の端まで押し込む。


 ブギブッ!!


 壁と挟み込まれて血を吐くオークジェネラルの首に血装を纏わりつかせたグレートソードを突き刺す。

 あ、血装で盾にトゲトゲを生えさせたら攻撃力が上がるかも。

 そんなことを思いつきつつ、血装越しの吸血を済ませ、オークジェネラルは鎧を残して溶けるように崩れ、すぐに鎧も後を追うと大きめの魔石だけを残した。


 残っていたオークたちも一緒に消えてしまい、十階の時と同じように広場には魔石と、前よりも大きな宝箱が残った。


 魔石も集め終り、宝箱を開封。

 中身は……と弓?


『将軍の大弓:射程を引き延ばす効果あり』


 さて、吸血の結果はどうかな?



名前:アキオーン

種族:人間

能力値:力117/体163/速73/魔46/運5

スキル:ゲーム/夜魔デイウォーカー/瞬脚/忍び足/挑発/倍返し/眷族召喚/不意打ち強化/支配力強化/射撃補正+1/剣術補正+1/斧術補正/槍術補正/盾術補正/嗅覚強化/孕ませ力向上+1(封印中)

魔法:鑑定/光弾/火矢/回復/解毒/明かり/対物結界/対魔結界/斬撃強化/打撃強化



 孕ませ力向上+1……って。

 強化されても使い道がないの!

 ごめんね非モテで!


「ええと、他には……」


 あ、眷族召喚ってのが増えてるな。

 さっきのオークを呼びまくってたのがそうなのかも。

 眷族?

 あるのかそんなの?


 試しに使ってみたけど反応なし。


「あ……」


『夜魔デイウォーカー』を使った状態ならどうだと思って試してみると青白い毛並みの狼を呼べた。


『クレセントウルフ:吸血鬼の眷族。幽体』


 幽体?

 幽霊ってことか?


 前に『夜魔デイウォーカー』の意思みたいなのが「アンデッドじゃない」的なことを言ってたような気がしたけど、やっぱりアンデッドじゃないか。





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週間 総合5位 異世界ファンタジー1位!

カクヨムコン8 週間 総合5位 異世界ファンタジー1位!


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