33 十六階から攻略再開


 さらに一日しっかり休んでから再びダンジョンへ。

 全身鎧は目立つので盾と槍の格好でダンジョンに入り、ポータルで十六階に行ってから着替える。

 ポータル周辺は魔物が現われにくいみたいなので、そこでさっと着替える。

 全身鎧は本来さっと着替えられるものじゃないんだけど便利技を思いついてしまった。

『夜魔デイウォーカー』を発動させて血液化を使ってするっと中に入り込むのだ。

 するとあら簡単、留め金を弄ったりする必要もなく全身鎧を着ることができる。

 鎧下の服とうまく重ねた状態で着るには練習が必要だったけどね。

 何気に昨日の休みの何割かはそれで費やしたよ。


 なにはともあれ、盾とグレートソードを構えて攻略再開だ。

 しばらく進んでいるとホブゴブリンの集団と出会ったのでさっそく魔法を試す。


 斬撃強化に打撃強化、対物結界に対魔結界、さらに視界を明瞭にするために明かりの魔法も浮かせる。

 周りが明るくなったことでこっちの姿もはっきり見えるようになった。

 ホブゴブリンたちが雄たけびを上げて襲いかかって来る。

 ホブゴブマジシャンやホブゴブアーチャーが遠距離攻撃を仕掛けてくる。

 光弾の魔法が瞬く間に距離を詰めて胸に命中し、その後に矢が頭を打つ。


 ちょっと衝撃が来たけど、痛くはない。

 それぞれの結界はちゃんと働いているみたいだ。


 次は武器の強化だ、け、ど!


 接近して来たホブゴブリンをグレートソードで薙ぎ払う。

 おお!

 三体いたんだけど簡単に吹っ飛んでいった。

 もともとグレートソードは切るというより重さと勢いで叩き潰すという感じの武器みたいなので、どちらの強化もちゃんと働いている。

 前衛がバラバラになって吹き飛んだけれど、ホブゴブマジシャンもアーチャーも攻撃を止めない。

 一気に前に踏み込んで距離を詰めて、まずはホブゴブアーチャーを倒し、マジシャンの方は盾で殴ってその場に転がす。


 試したいことは他にもある。


 こっそりと『夜魔デイウォーカー』を発動して盾側の手でホブゴブマジシャンの首を掴む。

 血液化と血装を駆使して籠手の隙間から小さな注射器の針のような物を出して突き刺せば、そこから血が吸いだされる。


 口で吸血しなくても良くなるのではないか?

 それに、周りに人がいても吸血する方法がないかを考えていて思いついた方法だ。

 魔物からスキルが手に入るのに、人の目があって取り逃したというのは後悔しそうだったから、なんとか考えたのだ。


 さあ、どうなるかな?


 戦闘が終わって魔石の回収も終わり、ステータスを確認する。



名前:アキオーン

種族:人間

能力値:力110/体140/速60/魔44/運5

スキル:ゲーム/夜魔デイウォーカー/瞬脚/忍び足/挑発/倍返し/不意打ち強化/支配力強化/射撃補正/剣術補正/嗅覚強化/孕ませ力向上(封印中)

魔法:鑑定/光弾/火矢/回復/解毒/明かり/対物結界/対魔結界/斬撃強化/打撃強化



 やった、光弾ゲットだ。

 よし、それじゃあ次の方法を試そう。


 早く次の敵が出ないかなぁ。



††『鋼の羽』イリア††



 やってしまった。

 調子に乗った。

 まさか、こんなことになるなんて。

 私の前には奴がいる。


 ダンジョンにはいくつか禁忌がある。

 その一つを破ってしまった時に現れる最悪の敵。


 死神パニッシャー。


「くそっ……」


 申し訳なさが胸を占める。

 今年こそ三十階を超えるんだとパーティが士気を高め合っているときにこんなことをしてしまうなんて。

 だけど、私は一人、納得がいっていなかった。


『炎刃』と共闘するということ。

 攻略するために新しい人材を求めるということ。


 私は『鋼の羽』の仲間だけで攻略したかった。

 かつてこの街のダンジョンの三十階を攻略した『英雄の剣』を超えるために、そうしたかった。


 だから、仲間たちが訓練場で他の冒険者たちの腕を見ているのに耐えられなくなって、一人でダンジョンに来てしまった。

 危ないと注意されてはいたけれど、いまいるのは十六階だ。


 久しぶりのダンジョンなのにいきなり三十階に挑戦するようなことはせず、一階からやり直して、連携を見直しつつ、その場の空気感を取り戻す。

 リーダーにはそういう慎重なところがあった。

 そのおかげでいまのところうまくやって来ていたという実績もあった。

 実際、十六階に出てくる魔物程度なら『鋼の羽』のメンバーなら一人でだってなんとかなる。

 だから、みんなで力を合わせれば三十階の攻略も叶うはずなのに!


 そう思って戦い続けた結果、ダンジョンの禁忌に触れてしまった。


 それは一つの階層に長時間居続けること。

 二十一階から三十階は特別階層だからこの禁忌が適用されないために、忘れてしまっていた。


 だからこれは私の油断。

 でも……。


 死神パニッシャーは、まさしく死神という心象をそのまま形にしたような存在だ。

 髑髏の顔、命を狩り取る大鎌、どす黒い瘴気をローブのように纏っている。

 私が得意とする剣術は瘴気をすり抜けるのみで通用せず、しかし長く接触し続けると瘴気が肺に流れ込み全身に痛みが走る。

 そして大鎌を振るう疲れ知らずの剛力。


 最初は上手く立ち回って互角の戦いをしていたけれど、決定打を持っていないためにやがて追い詰められた。


「ぐふっ!」


 そしていま、瘴気を吸い過ぎた肺が血を逆流させた。

 足がふらつき、そのまま座り込んでしまった。


「くそ……こんなところで……」


 慎重なリーダーならこんな愚かなことにはならなかった。

 やっぱり、私は考えたらず愚か者なんだと、死神の振り上げる大鎌を見上げる。


 その時だ。


「おおおおおおおおおおおおおお!」


 地を震わすような低い声が響き、死神になにかがぶつかった。





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2023年あけましておめでとうございます!

おかげさまでランキング異世界ファンタジー日間2位/週間8位

カクヨムコン8週間ランキング4位を現在獲得しております。

思わぬ快進撃に有頂天になりそうですが、まだまだ途中経過ですので冷静に見守っていきたいと思います。


ここまででフォローや☆、♡などで応援してくれている方々、ありがとうございます。

まだの方がおられましたら是非とも応援よろしくお願いします。


それでは本年もよろしくお願いします。


ぎあまん

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