25 再びダンジョンへ
そんなわけで再びダンジョンへ。
一階からやり直しだけど、こっちもメイスと盾に持ち替えたので気にしない。
練習になるしね。
……すぐに生活に困らないだけのお金があると、こういう時焦った気持ちにならないからいいなぁ。
とはいえ油断するわけにもいかないし、せっかくダンジョンに来たんだから最終的には黒字にして王都に帰りたい。
「さあ、バンバン頑張ろう!」
ミーシャの気合の声に押されて前進。
下りの階段までの道は覚えているのでさっさと進んでいく。
それまでに遭遇した戦闘は三回。
わずか三回。一階にいる冒険者が多いからという理由だろうけれど、普通のRPGのダンジョンではありえないエンカウント率だと思う。
とはいえその三回の戦いでは、魔法を使うまでもなく俺のメイスが火を噴いたのですぐ終わった。
本当に火が噴いたわけではないよ?
向こうも近接武器しかない状況だし、試しに『挑発』を使うとゴブリンたちは面白いように俺だけに向かってきたので、後は力任せにメイスを当てるだけで良かった。
「おじさん強すぎ。早く活躍したーい」
そんなことを言われながら二階へ。
二階になると現れる魔物はゴブリンだけじゃなくなった。
とはいえゴブリンがほとんど。
その代わり、盾を持っているゴブリンが増えた。
それから天井から襲って来るダンジョンバットという大型の蝙蝠とか、ゴブリンに率いられたダンジョンウルフという黒毛の狼が登場した。
「火矢!」
上空のダンジョンバットはミーシャに任せた。
こっちに突進するタイミングで放たれた炎の弾丸は連中の翼を焼いて地面に落とす。
もちろん、シスの神聖魔法も活躍する。
「防護強化」
ダンジョンウルフはゴブリンよりも早く、連携を重視した数に任せた戦い方をしてくる。
しかも低い位置から襲って来るので盾が使いにくい。
だから足を噛まれる頻度が多くなるんだけど、シスの放った保護の魔法によって牙が肉に食い込むのを防いでくれる。
おかげであえて噛ませて動きが止まったところをメイスで叩くという戦法で押し切ってしまった。
盾を持ったゴブリンたちは、力任せのメイスの一撃で吹き飛ばしていった。
うん、すでに今の段階で能力値だけなら過剰戦力かもしれない。
王都の冒険者ギルドの戦闘講師の能力値はもう超えちゃったからなぁ。
順調にダンジョンを進んでいく。
下の階にも降りていく。
魔物もその度に増えていって、鎧まで着こんだゴブリンが襲ってきたり、犬頭のコボルトという種族が登場したり、ドロドロ系のスライムが出てきたり、宝箱の中から火を噴く偽物金貨が出てきたり、人魂が出てきたりした。
俺たちは順調にダンジョンを攻略していった。
「……もう、無理ぃ!」
「無理です」
二人がそう言ったのは六階への階段を見つけたところでだった。
魔力の回復のための休憩を挟みながら進んできたのだけど、体力というか精神力というかが尽きてしまった感じだ。
「もうしばらくゴブリンとか見たくない」
「……祈りたいです」
そんなことを言う。
「そっか」
体感時間的には夕方になったぐらいかな?
昨日はじっくり一階を歩いていたけど、今回は三人だし、戦闘的に問題ないことがわかったので攻略に集中していたから駆足になったところもある。
出来立てパーティなのに急ぎすぎたかな?
それに俺たちのそれぞれの鞄も魔石でけっこう重くなっていた。
「なら、今日はここまでで」
「賛成!」
「お願いします」
二人の了解を得て階段の側にあるポータルに向かう。
外に出るとすっかり夜になっていて街への馬車もない。
こんな時のための素泊まり宿が砦の側に一応はある。
あえて一応なんて言葉が付くのは、建物のそのものの質が悪いからだ。
急ごしらえの建物は隙間風もすごい。
雨風をしのげるだけマシというレベルだ。
しかも部屋数が少ないので、一つの部屋しか取れなかった。
一人なら自由にゲームからテントを出すんだけど、他人の目があるとそうもいかない。
「おじさん、襲って来ないでよ」
「しないよ」
「大声出すからね」
「だから、しないって」
これが思春期の頃なら甘酸っぱいやりとりのような気もするんだが、おっさんと若い子だと犯罪臭しかしない。
携帯食で簡単に食事を済ませてさっさと眠る。
次の日は朝一番に復路の乗合馬車に乗って街に戻った。
冒険者ギルドで魔石を換金し、三人で分ける。
なんと、一人当たり二万Lにもなった。
やはり下の階に行くほど一度の戦闘で手に入る魔石の量が増えていった。
だから収入が増えるのは当たり前なんだけど。
ここまで増えるとは。
「やった……これなら新しい魔法が買える」
ギルドの食堂で報酬を分け合うと、ミーシャが言う。
「おじさんありがとう! 次は七日後ね⁉」
「……へ?」
「その間は、ここの教会で祈っています」
「うん、シスも頑張れ! それじゃあ」
「ちょちょちょ! ちょっと待って」
いきなり七日後って……なにそれ⁉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。