22 西の街アイズワ


名前:アキオーン

種族:人間

能力値:力77/体99/速40/魔30/運5

スキル:ゲーム/夜魔デイウォーカー/瞬脚/忍び足/挑発

魔法:鑑定



 走りながらステータス確認。

 ここしばらくの黄金サクランボを食べた結果だ。

 毎日収穫分をちゃんと食べれたらもっと増えているのだけど、一つ食べるたびに響くあのドラムロールがうるさすぎて……慣れたと思ったけど、やっぱりきつい。

 それでもここまで能力が上がった。

 あいかわらず運は上がってくれないけど。


「ほっほっほっ」


 人目の多い時間はランニング程度の速度で走り、人のいない夜には全力で走るを繰り返す。日課のゲームをするとき以外は休憩なし。

 結果として、西の街に到着したのは三日後だった。

 馬車より二日早く着いた。

 街に入る前に近くの川で水を汲んで湯を沸かして体を洗う。

 三日走りっぱなしで体や服のあちこちに塩が固まっている。体臭も結構すごい。

 お湯で濡らしたタオルで体を擦っていく。

 タオルはゲームで次々と出すので毎回新しい。

 それに実はちょっとした裏技があることに気付いてしまった。

 テントを出し入れしたときに気付いたのだけど、出し入れすると汚れが落ちているのだ。

 だからさっきまで着ていた服や鎧、下着に至るまで全て交易を通してゲームに入れて戻すときれいになっているという寸法だ。

 ちなみに過度の傷みなどは戻らない。


 とりあえず体を拭きまくって汚れを落として、きれいになった服と鎧を着直す。

 タオルなどをゲームの中に戻して、西の街に入る。

 王都ほど入るのに苦労はしなかった。

 冒険者ギルドの登録証があると、荷物の検査ぐらいであまり足止めもされない。


 冒険者ギルドの場所を聞いて、移動の報告をする。

 こうやって誰がどこにいるのかをちゃんと報告することで、冒険者の移動の自由が守られているのだそうだ。


「アキオーンさんもダンジョンですか?」


 移動の手続きをしながら受付嬢が聞いてきた。


「え? あ……はい」

「もうすぐ冬ですからね」

「はぁ……? 冬だと多いんですか?」

「他の国は知りませんけど、ベルスタイン王国は雪が積もりますからね。外に出る仕事が減りますから。その代わり、ダンジョンはそういうのはありませんからね」

「ああ、なるほど」


 たしかに。

 日雇いの仕事も雪かきがほとんどになる。

 薬草集めも大変になる。

 おかげで少しは割高になるんだけど。

 そうか、ということはポーションも高くなるのか?


「宿が決まっていないなら早めに決めた方がいいですよ。あと、まとめて払えるならそうした方がいいです」

「そうします。ああ……それなら長期で契約できる宿って紹介してもらえたりは?」

「しますよ。春までなら十万Lです」

「昼も使えます?」

「もちろん」


 王都の素泊まりよりお得な気が……?

 気のせいかな?


「冒険者ギルドの直轄宿ですからサービスは期待しないでくださいね」

「はぁ、なるほど。では、それでお願いします」

「まとめてお支払いできます? 月ごとの分割でもかまいませんけど」

「いえ、いま払います」


 背負い袋から出す振りをしてゲームにチャージしたお金を取り出す。


「……はい、確かに。ではこのままご案内してもよろしいですか?」

「はい、お願いします」

「はい」


 と受付嬢が宿担当の人を呼んで、その人に案内してもらって宿に入れた。

 冒険者ギルドに併設して作られた宿だった。

 食堂部分でギルドの本館と繋がっているという造りだ。

 宿は王都の素泊まり部屋よりちょっといいかも。

 ベッドにはきちんとした布団があった。


「よさそうだ」


 満足して荷物を下ろすと、その日はゲームをしながらご褒美ハンバーガーセットを食べて部屋にこもった。





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