第11話
あれはまだ私たちが付き合う前に授業中先生にばれないように手のサインだけでやりとりをする関係の時だった。
私と樹は最初のうちは筆談していたが、それが先生にバレて2人だけのサインを作ろうとなった。
人差し指で横に振るのはどうしたの?という意味。ピースを折り曲げるのでありがとう。そしてごめんねは手首を下に向けて3回降る。
「樹……!」
「梨都!!」
樹は私に向かってダッシュしてきてギュッと抱きしめてきた。
「ごめん!俺最低なことしてた。いくら記憶がないからってこんなこと……」
「大丈夫だよ。樹なら戻ってきてくれると思ったから。」
樹は泣きながら私にごめんとずっと言い続けた。まるで赤子のように。
「おかえり。樹。」
「ただいま。」
樹の顔は涙でいっぱいでいつもよりカッコ悪く見えたけど可愛かった。
あのあと川口さんは生徒指導であれこれ言われなんとかお父さんに事件のことももみ消すよう言ったが、樹の従兄弟が手を回してくれたおかげでもみ消しに失敗し、川口さんの会社は倒産。元々川口さんの会社はなにかしらの不正が起きているということはわかっていたが、なかなか証拠をつかめなかったらしい。今回樹が従兄弟に電話したタイミングと同時に証拠が掴むことができ、グットタイミングだったらしい。
あのあと川口さんはセレブの生活と一変して貧乏な生活をしているらしい。まぁこれで彼女が改心してくれたらいいなとは思った。
私と樹は病院近くの桜並木だったところを歩いていた。
「まさか仕組まれていたとはねぇ……」
「お互い生きることができてよかったね!」
「だな。だけどお前の足……」
「大丈夫だよ!傷は残ってるけど動けるし!」
お互い動くことはできるようになったが、傷は痛々しいくらいのものだった。
「これからは一緒に助け合って生きてこう。」
と私が手を差し出すと樹は
「バーカ。」
と言い私の腕を引っ張りギュッと抱きしめる。
「それは俺のセリフだって。寂しくさせた分は埋め合わせさせてもらうね?」
と抱きしめる腕を強めた。するとそこには
「雪さん!!」
「あ!梨都ちゃん!よかった!樹くんも目覚めたのね!」
雪さんは私に気がつくと走って私の元まで駆け寄ってくれた。
「莉奈のお願いだったからね……」
「え?それって……」
莉奈のお願い?ってどういうこと?それに樹ははさっきからちんぷんかんぷんだ。
「あなたの姉に言われたの。もし妹と妹の友達が危ない時は守ってって。」
「お、お姉ちゃん……」
雪さんはそうニコリと笑う。だけど私は理解できない。なんで雪さんは私たちを助けることができたの?
その時だった。
「もしかして……雪……か?」
そこには前ここにいた男の人だった。
「
と雪さんは目に涙を浮かべながらその人の名前を呼ぶ。
「お前が死んでから……また逢えるなんて……」
「え!?死んでるって……!?」
「そうなの……私はもう前に亡くなっているの。だから私のことが視える梨都ちゃんがいてくれて……嬉しかった。」
「雪!!また……どこかで逢おうな……」
と蓮さんは問いかける。雪さんは笑いながら
「大丈夫。私たちはきっとまた逢えるよ……」
と言って温かい光に包まれながら消えて閉まった。
私は目に涙を溜めると樹が私の手をギュッと繋ぎ、
「俺たち雪さんのおかげで助かったんだな。雪さんの分まで生きていこう。」
「うん。」
私たちの元に雪が降ってきた。
「わぁ!ホワイトクリスマスだ!!」
「去年は一緒に過ごせなかったからなあ。今年は俺と一緒に過ごそうね。」
「うん!」
10年後
「う〜寒いよお。」
「お前それ10回目だわ。」
「こたつから出れない〜!」
「ほら。クリスマスのディナー準備するよ。」
と樹は私をこたつから無理やり引っ張りその勢いで私を抱っこする。樹はものすごくかっこよくなって、プロサッカー選手となった。今では有名人だ。
「ほら。ワガママ言わないの。」
「うう。じゃあ料理するから下ろしてよ。」
「あはは。やーだよー!」
と私を抱っこしながらゆさゆさとする。樹はアングレカムの花を私の耳に差し
「可愛い。俺の梨都。一生大切にするし、幸せにするから。」
描く未来には君といる未来
陽(ひだまり)のアングレカム 明智 依毬 @moonlight52
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