第9話 言いたい事も言えないこんな世の中じゃ‥poison‥‥は?

――教会――


「え?………………ん?だれ?」

ショウタはポカンと口を開けている。


ん?この人がシスターセーラ?

明らかに違う……

昨日事務所に来た女性とは明らかに見た目が違うのだ。

目の前にいる……女性…………?はお世辞にも可愛いとは言えない逞しい顔つきをしている。


目を擦ってもう一度見る…………

ゴシゴシ……


うん!!変わらない……同じだ。


どういう事だ……


驚くショウタに対し、クルスはあまり驚いていない様子だ。


「?どうしたの?あら………………あっそういう事ね(緊張しているのね)」

シスターイザベルはショウタがセーラの事を好きだと勘違いしている為、変な絡み方をしてきた。めんどくさい…………


「いや…………ハハハ……」

いや、違うんだよ。シスターイザベル……


「シスターセーラ。この方があなたにお話しがあるみたいよ。ウフフ」

イザベルが何を血迷ったのか、セーラにショウタを紹介し始めた。

何してくれてんじゃ。イザベル!

用なんて無いわ!明らかにシスターセーラ違いだよ!誰だよ。この人。


「あら?わたしに用って何?」

シスターゴリラ……いやシスターセーラが反応した。


「いや…………ハハハ……(クルスさん!クルスさん!いい加減にしてください!助けて下さいよ!)」

ショウタはクルスに小声で助けを求めた。


すると……


「シスターセーラはゴリラの兄弟でもいるのか?」

クルスは何を思ったのか笑顔でとんでもない事を口走った。


は?何言ってんだよ!!


「な……な……なんなの!?この子ーーー!」

シスターセーラは怒り狂っている。


「あらあら…………」

イザベルは呆れている。


「す……すみませんでしたーーー」

ショウタはクルスを抱えて一目散に教会を後にした。



――教会の外――

ショウタはクルスを抱えて教会の外まで逃げてきた。


「ゼェ……ゼェ……ゼェ…………」

ショウタはクルスを抱えたままの状態で止まり、息を整える。


「………………おろせカス!」

クルスがショウタを睨む。


「え……あぁ……すみません……」

クルスをおろした。


「クルスさん!何て事言うんですか!!殺されるかと思いましたよ……」

あまりにもクルスの自由っぷりにショウタは怒っている。


「ゴリラに似てたから聞いただけじゃ。何がいけなかったのかさっぱり分からん。お前もあやつの顔を見て思ったじゃろ?」

クルスは悪びれる事も無く淡々と尋ねる。


「いや……まぁ……でも一応女性ですから……ああいう時は思っていても口に出しちゃいけないんですよ……」

ショウタは当たり障りの無いつまらない返しをした。


「へぇ……そういうものか……お前は言いたい事もいえないつまらん人生じゃな……可哀想に」

クルスはショウタを見下した目で見た。


「はいはい……つまらないですよ。どうせ。…………っていうか!!そんな事はどうでもいいんです!!あの人!何でシスターセーラって紹介されてたんですか?昨日見た美人の女性とは全然違いましたよね?!」

ショウタは興奮気味に尋ねた。


「…………あぁ……そりゃそうじゃろ!さっきのゴリラがシスターセーラじゃよ。昨日ウチに来たバカ女は偽物じゃからな」

クルスは、カバンからキャンディーを取り出しペロペロ舐め始めた。


「え?…………どういう事ですか?」

ショウタは理解出来ずに眉間に皺を寄せて険しい顔をしている。


「…………バカじゃなーおぬしはー。『偽契約』じゃ。昨日のバカ女がシスターセーラになりすまして契約したんじゃ。シスターセーラは自分の知らないところで勝手に名前を使われて契約させられたってわけじゃーー。今日は、その確認に教会に行ったんじゃ。まさかゴリラが出てくるとは思わなかったがな。ワハハハハハハ……」

クルスはゲラゲラ笑っている。


良く分からない……

どういう事…………偽契約?


「え……えっと……クルスさんすみません。そうすると、昨日の女性が嘘ついてるって知っていて金を貸したんですか?」


「ん?そうじゃよ。何か問題あるか??」

クルスはキョトンとしている。


「は?問題ありまくりでしょ!!なんでそんな意味無い事したんですか?」

ショウタは疑問をぶつけた。


「えっ?そりゃあ………………暇つぶしじゃ。顔見た瞬間ウソついてるのが分かったからのぅ。面白そうだから貸したんじゃ。面白いじゃろ?」

クルスはニヤニヤしている。


「いや…………全然…………………………おかしいですよ!!!それじゃどうやって回収するんですか?手掛かりが無いじゃないですか?顔しか分からないんですよ!!!」

ショウタはクルスのした行動が理解出来ず怒っている。


「…………ふーん。やっぱりバカじゃな~おぬしは~」クルスは呆れている。


「ん?………………………………あッ!…………そっか………………」

ショウタは何かに気付いた。そうだ!!

ショウタには人探しのスキルがあるのだ。

それで見つける事が出来るじゃないか!

何で気づかなかったんだろう。

ショウタのスキルは対象の顔をイメージして現在地を特定するスキルだ。対象となる人物の顔のイメージがはっきりしているほどイメージしやすい為、見つけやすい。


昨日ショウタは偽物女の顔をバッチリ見ている。


「そういう事じゃ………………」

クルスはドヤ顔でショウタを見る。何とも太々しい。


「…………さっそくやってみます!!!」

ショウタは両手の人差し指と中指を額に当てて目を瞑った。


ショウタの頭の中に対象者の現在地がイメージ化される。




ん?どこだ?村か?何もない普通の村だ。

家?畑?馬小屋が見える。牛が見えるぞ。

完全にのどかな農村だな。


いた!!昨日の女だ!…………可愛い…………。

い……いかんいかん……集中しろ!俺!


えっと……この村は………………ん?あ!!分かった!!

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