11. 魔法の使い方
放課後、ミオとヒナタは秘密の庭園で緊張した様子で先輩達を待っていた。
今日からいよいよ、魔法の特訓が始まるのだ。
「ミオちゃん、ヒナタちゃんお待たせー!」
ツバキ、ミナト、ハルキがミオ達の元へやってきた。
「あの、指導よろしくお願いします!」
ミオとヒナタがぺこりと頭を下げる。
「そんなに固くならなくても大丈夫っすよ〜」
「そうそう、リラックス。肩の力抜いてー」
ハルキやミナトにそう言われて、少しだけミオとヒナタは肩の力を抜いた。
「はい!それでは魔法の使い方を教えます!その1、魔法で作り出したい物をまず想像します。この時、色、大きさ、重さなどもちゃんと考えること!」
ツバキが言ったことを、ミオとヒナタはいそいそとメモをする。
「その2、指輪をはめている方の手で妖精と握手かハイタッチします!以上!」
「え、それだけなんですか?」
ミオは驚いた。
「そうそう。あとは妖精達が俺達の想いとかを受け取って、わ〜っと、ぱ〜っとしてくれるの」
ミナトの雑な説明に首を傾げるヒナタ。
「まぁ、あと必要なのは、相棒の妖精と信頼関係が築けているかどうか、ですかね〜」
ハルキの言葉に「なるほど……」と呟くミオとヒナタ。
「慣れないうちは、言葉を口にしながら、妖精と一緒にゆっくりやっていけばいいよ!あ、あとはいきなり大きい物を作り出そうとしないこと!難しいし、私達人間の体力と妖精の魔力めっちゃ使って疲労感ヤバいから!」
ツバキが言った注意事項をしっかりメモをし終わると、「ま、最後は実践あるのみだよね〜」と言って、わちゃわちゃと遊んでいたロロン達を呼んだ。
「それじゃあ、音木さんにはオレが課題を出しますね〜。まず鉤縄を作ってくださいっす」
「……え、何て?」
「鉤縄っす」
「か、かぎなわ……?」
「あれ?知りませんか?忍者の使う道具なんすけど……。あれっす、高所に引っ掛けて登るための道具で〜」
ハルキの説明を聞いているうちに、ミオは何となく思い出す。
「時代劇で見たことがあるような……」
「あ、思い出してきたっすか?それじゃあ、その調子でロロンと協力して作り出してくださいっす〜!」
一方ヒナタは……。
「金森には俺が課題を出す。ズバリ、課題は〜……鯵だ!」
「魚の鯵、ですね!」
「あぁ。切り身じゃなくて海で泳いでる時の格好の鯵を作るんだぞ」
「わかりました!」
ヒナタは元気よく返事をした数秒後。
「まって、切り身とか干物の姿しか思い出せないっ!!」
ヒナタがそっとスマホで検索しようとすると、ミナトが「スマホは禁止」と言って、カバンの中に戻させた。
「何か……長い鎖があって、ガシッと掴むための……こう、ぐわっとしたやつがあって……」
ツバキに言われた通り、言葉を口にしながら鉤縄の情報を整理するミオ。隣でロロンが「ほうほう、それで大きさは?重さは?色は?」と、足りない情報を聞いていく。
ヒナタも同じようにフェルと協力して鯵の姿を思い出そうとしていた。
「で、できた……」
ミオの手には鉤縄が握られていた。
しかし、随分軽い鉤縄になってしまった。まるで発泡スチロールのように軽い。
(鉤縄なんて持ったことないから、どんな重さか結局わからなかったな……)
ミオはチラリとヒナタの方を見た。
ヒナタも鯵を何とか作り出したらしい。しかし、表情が死んでいる……。
「ヒ、ヒナタちゃん、大丈夫……?」
「ミオちゃん〜!結局、こんな鯵しか出来なかったぁあ」
ヒナタは手のひらの上に浮いている物を見せてくれた。
そこには子供が工作で作ったような魚がふよふよと浮いていた。
「ヒナタちゃん〜、そんな泣きそうな顔しないで〜。頑張った、頑張った〜!」
フェルがヒナタの頭を撫でていた。ミオもヒナタの手を取り「練習、一緒に頑張ろう」と声をかけた。
「は〜い、二人共お疲れ様!それじゃあ、ミオちゃんの方を見せてもらおうかな」
ミオはおずおずとツバキに鉤縄を渡した。
「おー!鉤縄ちゃんとできてるじゃないっすか〜!」
ハルキがまじまじと鉤縄を見つめる。
「うんうん。かなりいいね!でも、めちゃくちゃ軽いね?」
ツバキがぎゅっと力強く鎖を握った瞬間。
パキンッと軽い音が響いたと思ったら、鉤縄が砕け、光の粒となって消えた。
「え!?」
ミオは唖然。
「よし次、ヒナタちゃんのを見せて!」
「は、はいっ!」
ヒナタがツバキの手のひらにお魚……鯵を乗せる。
「可愛らしい鯵になったね」
「う……切り身とか干物の姿しか思い出せなくて……」
ツバキはつんつんと鯵を突いた。
すると、しゅんっと鯵も光の粒となって消えてしまった。
「あ、鯵が……」
しょんぼりするミオとヒナタの肩をハルキとミナトがぽんぽんと叩く。
「悪いな、金森、音木。わざと作りにくい物を課題にしたんだ」
「これでよくわかったっすよね?ちゃーんと、作りたい物を想像できないと、今みたいに簡単に壊せちゃうんすよ」
ツバキも2人の肩を軽く叩いた。
「そんなわけで、明日から2人にはよく使う自分の持ち物を魔法で作り出す練習をしてもらいます!わからないことがあったら、いつでも私達に聞いてね」
ミオとヒナタはコクリと頷いた。
「ミオちゃん、魔法の練習頑張ろうね!」
「うん!」
ミオとヒナタはぎゅっと拳を握った。
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