10. 仲間
放課後、ミオとヒナタはいそいそと人気のない場所に向かった。
「ツバキ先輩が言ってた、私達に紹介したい人ってどんな人なんだろうね〜?」
ヒナタは楽しみなようで、瞳をキラキラさせていた。
「それじゃあ、行こうか」
ミオは壁を指輪をはめている手でノックする。
そして、現れた真っ白な扉を開けた。
「やっほーミオちゃん!ツバキちゃん達、あっちで待ってるよ〜!」
出迎えてくれたロロンとフェルが二人をツバキの元へ案内する。
ロロン達が案内したのは、レトロモダンな雰囲気の時計塔だ。
時計塔の周りには、ベンチなどがあり、ちょっと一休みできそうな場所になっていた。
ベンチに座って会話をしているのは、ツバキと二人の男子生徒だ。ツバキがミオとヒナタに気づき手を振った。
「お待たせしました、ツバキ先輩」
ミオがそう言うと、ツバキは「私達も来たばっかりだから大丈夫だよ〜!」と言った。
「うわわ〜!本当にオレの目の前に、この庭園に入れる新人さんがいるっ!幻じゃない!」
ふわふわくせ毛の男子がじーっとミオとヒナタを見ながらそう言う。
「良かったなぁ、ハルキ。1人でこの庭園を管理しなくちゃいけないかもって、去年の冬ぐらいからずっと言ってたもんなぁ」
クスクス笑いながら言うのは、サラサラの黒髪の男子だ。
「はいは〜い、お喋りはそこまで!浜矢、君から自己紹介してくださーい」
ツバキはそう言ってサラサラ黒髪男子の肩を軽く叩いた。
「3年の浜矢ミナトです。ちなみに冬村とは同じクラス。冬村、5限の英語、寝てたのを見たぞ〜」
「寝たって言っても5分くらいだけだし。ちょっとうたた寝しただけだし!」
ツバキとミナトがぎゃあぎゃあ言ってるのを無視して、ふわふわくせ毛の男子が前に出た。
「はーい!オレは2年の藤居ハルキですっ!図書委員会に入ってます!いつも人が少なくて寂しいんで、図書室来てくれると嬉しいっす!オススメの本、紹介するんで!あ、新しく入った本、めっちゃ面白そうなのあったんすよー!その本って言うのが〜」
「はいはーい、図書室の宣伝はまた後にしてね〜!」
ツバキがハルキの制服の襟をガシッと掴む。まるでリードに繋がれた犬を引っ張るかのよう……。
そんな時だった。
「私達も自己紹介させてくださいな」
ミナトの後ろからひょっこりと姿を見せる妖精がいた。
水色のふわふわロングヘア、海色の瞳に真っ白なワンピースを着た女の子の妖精。
「はじめまして。ミナトのパートナー、フィーナです」
丁寧にお辞儀をするフィーナ。
そして……フィーナの片手にあるモノが握られていた。
それは、服を掴まれぷらーんとぶら下がる1人の妖精……。
ミオとヒナタはそれが気になって仕方がなかった。
「うわわ〜フィーナちゃん、助かったっす!パルってばどこに行ってたんすかー?」
ハルキがフィーナからパルと呼ばれる妖精を受け取る。
パルはハルキの手のひらの上で寝ている。
「パルさん、光るキノコの森でお昼寝してましたよ」
「今日は光るキノコの森っすか……。おーい、パル!起きてくださーい!」
ハルキがパルの頭をツンツンすると、パルがふわぁとあくびして閉じていた目を開いた。
ハルキと似たようなふわふわな藤色のくせ毛、葡萄色の瞳。ルームウェアっぽい服を着た男の子の妖精だ。
「おはよー……ボク、ハルキの相棒の、パルだよぉ……ぐぅ」
「寝た……。パルは寝ることが大好きなんですよ〜」
ハルキはそう言ってポケットからハンカチを取り出し、パルを包んだ。たぶん、布団の代わりだろう。
「えっと、1年の音木ミオです。相棒はロロンです」
ミオがペコリと頭を下げると、肩に乗るロロンは「よろしく〜」と言ってゆるく手を振っていた。
「ミオちゃんと同じクラスの金森ヒナタです!パートナーはフェルです!」
ヒナタとフェルは揃って頭を下げた。
「よーし、自己紹介終了!それじゃ、今日中に決めたいことがあるんだよね〜」
ツバキがそう言う。
今日中に決めたいこととは何だろう。ミオとヒナタは首を傾げた。
「ミオちゃんとヒナタちゃんには、明日から魔法の使い方を伝授します!それで、私達が指導しようと思ってるんだけど〜……皆、何かしらの委員会に入っていて、都合のいい時間がバラバラなんだよね。なので〜皆の予定を聞きたいでーす!」
ツバキがそう言うと、ツバキの相棒であるシュシュがノートとペンを持ってきてツバキに渡した。
「生徒会は毎週木曜日の放課後に集まりがあるんだよね〜。浜矢は?」
「風紀委員会は、特定の期間だけ忙しい。特定の期間以外は暇。ハルキって放課後が忙しいんだよな」
「そっすねー。放課後の担当なんで〜。その代わり、昼休みは暇ですっ!!音木さんと金森さんは何の委員会ですか?」
「私達は園芸委員会です」
「火曜日の放課後が水やり担当です!でも、30分ぐらいで終わるよね?」
「うん。中庭と校門付近の花壇の水やりだけだから」
ツバキを囲んで、自分達が所属する委員会の仕事時間を報告する。
妖精達はその様子を相棒の肩や頭に乗って眺めていた。
ロロン達以外の妖精達も、わらわらと寄ってくる。
この庭園を一緒に管理してくれる新たな仲間、ミオとヒナタを歓迎していた。
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