9. 庭園探検

翌日の昼休み。

ミオとヒナタはお弁当を持って、今日も秘密の庭園へ向かった。


白い扉の向こうは、妖精が住まう秘密の庭園。


「ミオちゃん、いらっしゃ〜い!」

「ヒナタちゃんもいらっしゃ〜い」

ロロンとフェルが二人を迎える。

「お、二人とも来てくれたな。今日はあっちでご飯食べようぜ」

ツバキの相棒、シュシュがミオ達を森の方へと案内した。


昨日は、青い薔薇が咲く広場のガゼボで昼食を食べたが今日は……。


「凄い……光るキノコがいっぱい……!」

「キノコ大きいね!何だか小人さんになったみたい〜!」

ミオとヒナタはわくわくした表情で辺りを見回した。

シュシュが案内したのは、光るキノコの森。

パステルカラーに光るキノコがとても可愛らしい。

「見て〜ミオちゃん!このキノコ、すごーく柔らかいんだよ!」

ロロンがキノコのカサの上でぽよんぽよんと跳ねる。

その様子を見てミオは笑った。


切り株に腰を掛け、お弁当を食べるミオとヒナタ。

すると、わらわらと寄ってくるものがいた。


「わー!人間だぁ。もしかして、この子たちが、ロロンとフェルが契約した子?」

「こんにちわ〜!美味しそうな昼食ね!」

「名前、なんていうのー?」

ロロン達以外の妖精達がミオとヒナタを囲んで質問攻めにする。

気がつくと、頭や肩にまで妖精が乗っていた。


「こんなに沢山の妖精がこの庭園にはいたんだ……!」

ミオが驚いた表情でそう呟いた。

「ねぇねぇ、フェル。この庭園にはどのくらいの妖精が住んでいるの?」

ヒナタがそう尋ねると、フェルは「えっとねぇ……」と考える素振りをする。


「70?あれ、80ぐらい?んー……ねぇ、シュシュ君、この庭園にはどのくらいの妖精が住んでたっけ?」

「大体、100だな」

ヒナタは目を見開いた。

「100も!?すご〜い!そんなに沢山の妖精がここにはいるんだ!」

ヒナタは「全員とお喋りして、仲良くなりたいなぁ」と呟いた。



お弁当を食べ終わると、ロロン達から「今度はあっちに行こう!」と案内される。

キノコの森を抜けるとそこは……



キラキラ、キラキラ、太陽の光を反射して輝く。


「す、凄い……」

ミオは呆然とそう呟く。隣のヒナタは絶句していた。


「綺麗でしょー?一面、宝石の花畑!!」

ロロンは満面の笑みでそう言った。


宝石の花が、一面咲いている。

赤い花ならルビー。白い花ならダイヤモンド。黄色の花ならシトリン。葉や茎はペリドット。


「こ、これ……この庭園から持ち出して売ったりしたら……」

ヒナタがそう呟くと、フェルが「無理だよ〜」と言った。

「この庭園の物は、持ち出すことはできないんだ」

シュシュがそう説明し、ミオはなるほどと頷いた。

「この庭園で生み出された物は、この庭園でしか使えないんだね」

ミオはそう言って、宝石の花にちょんっと触れる。

確かに硬い。でも、ふわっと花の香りもする。

ミオとヒナタはしばらく宝石の花を眺めていた。



「今度はあっち!めっちゃ面白い物があるの!」

ロロン達を見失わないように、ミオとヒナタは走る。

ミオ達を待っていたのは、だだっ広い草原……にぽつぽつと置かれている色とりどりの傘。


「この傘を持ってダダダッーて走って、ぴょんって飛んでみて!!」

ロロンがキラキラした瞳でそう言う。

「だ、だだだ〜って走って飛ぶの?」

ミオが首を傾げながらそう聞くと、ロロンは力強く頷いた。


「私、この傘にしようかなぁ」

ヒナタは既に傘を選んでいる。虹のイラストが描いてある傘だ。

「じゃあ……私はコレにする」

ミオは桜色の傘を手に取る。


ミオとヒナタは傘を開き、走り出した。

そして、勢いよくジャンプをする。


普通ならそのまま着地するのだが……ふわっと体が浮くのをミオ達は感じた。


「空、飛んでる……!」

ふわふわと上昇していくミオとヒナタ。

いつの間にか、ミオの肩にはロロンが座っていた。

「あそこに置いてある傘はみんな空を飛ぶ傘なの!」


まだ見たことのない景色が広がっていた。

竹林、メリーゴーランド、大きな池、洋風な城、カラフルな森……そして、黒い地帯。


「あの黒い地帯は何?」

ミオは肩に座るロロンに聞いた。

「あれは、石化した悪魔がいるところだよ。悪魔の近くは私達の魔法が効きにくい場所になってるから、あんな風に真っ黒で何もないの。石化した悪魔を浄化しない限り、あの場所には何も作り出せないんだ」

「そっか……。私、頑張るね。悪魔の浄化と庭園の整備」

「ありがとう、一緒に頑張ろうね!」




「とっても楽しかった!ありがとう!フェル、ロロン、シュシュ!!」

ヒナタは満面の笑みを見せてそう言った。

「まだ見たことのない場所が沢山あるから、また案内してくれると嬉しいな」

ミオがそう言えば、ロロンは「任せて!」と嬉しそうに答える。

「もうすぐ昼休みも終わりだから、二人はそろそろ帰らないといけないな」

シュシュにそう言われ、ミオ達は忘れ物がないか確認する。


「それじゃあ、また放課後に!」

「またね!」

ミオとヒナタは白い扉を開く。

「ミオちゃん、ヒナタちゃん、この庭園で待ってるね!!」

ロロン達は白い扉が完全に閉まるまで、手を振り続けていた。

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