8. 相棒

「私達が妖精と一緒に、この庭園を管理する……」

ツバキが言った言葉をミオはもう一度口にする。


「でも、どうやって管理するの?フェル達と協力して魔法を使うって言っても、上手く想像できないっていうか~」

ヒナタがそう言うと、ツバキとシュシュがニヤリと笑った。

「詳しいことは後でちゃ~んと説明するから、今はただ、私達の魔法を見てて!」


ツバキが椅子から立ち上がり、指輪をはめている方の手を高く上げる。


「シュシュ、いつものお願いね!」

「了解!」


ひらひらと赤いものが舞い降りる。


「これ、椿……!」

ミオ達の周りに舞い降りたのは、椿の花。

ヒナタが手のひらで受け止めると、小鳥に変化して飛び立つ。


「まだまだいくよー!せっかくだし、ご飯を食べた後は、デザートが欲しいよね?」

ツバキはそう言って、シュシュとハイタッチする。

人間の手と妖精の小さな手がパチンと合わさると、テーブルに美味しそうなケーキがミオ達の前に並んだ。

ミオとヒナタの瞳がキラキラと輝く。

「長時間座ってたから、腰とか痛いよね?やわらか~いクッションもどうぞ!」

ぽんっと、ミオ達の側に触り心地の良いクッションが現れる。


「すごいっ!クッションもちもち~!ケーキも美味しい!!」

ヒナタは満面の笑みを見せる。

ミオも興奮を隠せない様子だった。

「これが、魔法……!!」


「大成功!やったね、シュシュ!」

ツバキとシュシュも嬉しそうに笑う。


「人間の想像力と妖精の魔法があれば、な~んでもできちゃうの。私達がやることは2つ!!1つ目は、悪魔襲来の時に荒らされたこの庭園を修復すること。2つ目は、妖精女王が石化して封印した悪魔達を浄化すること!」

ツバキがそう言うと、ミオが手を上げる。

「あの、質問いいですか?」

「もちろん。何かな?」

「封印している悪魔ってどのくらいなんですか?」

「あ~20……」

「にじゅう!?」

ヒナタの叫び声が辺りに響く。ミオの顔も青ざめていた。

ツバキは慌てて「今は違うよ!」と言う。

「ち、違うっていうのは……?」

ミオがそう言うと、ツバキは詳しく説明してくれた。


「20体いたんだけど、先輩達が頑張って浄化してくれたから、今この庭園に残っている封印された悪魔は4体!何とか私が卒業するまでには全部浄化したいなー」

「ツバキ先輩、浄化はどうやるんですか!!」

ヒナタがそう質問する。

「それはね~……明日教える!!もうすぐお昼休み終わっちゃうからねー」

ツバキにそう言われ、ミオは腕時計を見る。

「本当だ……あっという間だったな。ツバキ先輩、明日もお昼休みにこの庭園にこればいいですか?」

「あー、明日は放課後に来てほしいんだ。あと2人紹介したいんだ。その2人は放課後の方が都合がいいんだよね~」

ツバキがそう言うと、ロロン、フェル、シュシュがミオ達の目の前に来る。

「明日のお昼休みも来てほしいな~!」

「もっとヒナタちゃん達とおしゃべりして仲良くなりた~い!」

「俺も2人のこと知りたいな」

ミオとヒナタはお互いの顔を見た。

「用事とかなかったよね?」

ミオがヒナタにそう尋ねればヒナタは頷く。

「明日のお昼休みもこの庭園に来るね!」

ロロン達は「やったー!」と嬉しそうにミオ達の回りを飛んだ。





その日の夜。

ミオが課題をやっている時だった。


「うーん、これ何だっけ……」

教科書を引っ張り出し、ページをペラペラとめくっていると……


「ちゃんと宿題やってえら~い」


聞き覚えのある少女の声が聞こえる。

ノートを覗き込んでいる小さな少女……


「あぁ、ロロン……え、ロロン?」

ミオの動きが止まる。

バッと辺りを見回すが、あの庭園ではなく、見慣れた自分の部屋である。

しかし、机の上には確かに金髪をツインテールにした妖精、ロロンがいるのだ。


「な、何でロロンがいるの!?」

「この間、その指輪をあげた時にいったじゃ~ん。その指輪は、庭園にいくための鍵だけじゃなくて、もう1つ秘密があるって!それを後日説明するねーって言ってたでしょ?」

「……そう言えば、何か言ってたね」

ロロンはミオがはめている指輪を指差す。

「その指輪のもう1つの秘密!その指輪を通して、ミオちゃんと契約してる私は自由にミオちゃんに会いに行けるの~!今頃、ヒナタちゃんの所にはフェルが行ってる~」

「ロロンとはいつでも会えるんだ。私が、ロロンと会いたいな、って思ったらどうしたらいいの?」

「強く私のことを思えばいいよー。名前を呼んでくれると、気づきやすいよ!」

ミオは「なるほど……」と呟きながら、改めて星形にカッティングされた黄色の宝石を眺めた。



「ミオちゃん、これからよろしくね!」

「うん、よろしくロロン!」

2人は一緒にハイタッチをした。

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