7. 庭園の過去
昼食の時間になり、生徒達は購買に行ったり、お弁当を食べる場所を確保しに行ったりと動き出す。
ミオとヒナタも片手にお弁当箱を持って、人気の少ない場所へと向かう。
「この辺りなら大丈夫かな?」
ヒナタが辺りを伺い、人がいないことを確認する。
「それじゃあ、いくね……」
ミオは指輪がはまっている方の手で目の前の白塗りの壁をノックする。
コンコン……
ぽわぁと汚れ一つない綺麗な白い扉が現れた。
ミオはドアノブを掴み、ヒナタと共に扉をくぐった。
桜の花弁と金魚がミオの目の前を横切る。
そして……
「こんにちは、ミオちゃん!」
金髪をツインテールにし、背中にガラス細工のような羽を持った小さな少女、妖精のロロンがにっこり笑った。
「ヒナタちゃんもこんにちは~」
ロロンの隣には銀髪の少女、フェルがいた。
ロロンとフェルは2人を『とっておきの場所』へと案内する。
「わぁ!すごい、綺麗なガゼボ!!」
「何だかお嬢様にでもなったみたい……周りの青いバラも綺麗……」
ロロン達が案内したのは、青いバラの花畑の中心に立つガゼボだ。
ガゼボに先客がいるのが見えた。
高い位置で結ったポニーテールを風になびかせる1人の女子生徒。
「ツバキちゃーん、来たよ!」
ロロンがそう声をかけると、ツバキと呼ばれた少女がこちらを見た。
「こんにちは!あなた達が、ロロンとフェルに気に入られた子だね」
「せ、生徒会長さん……!?」
「な、何でここに冬村生徒会長が!?」
ガゼボにいたのは鶯高校の生徒会長、冬村ツバキがいたのだ。
ミオとヒナタが驚いていると、ツバキは「何でって、私もここの妖精に気に入られた人間なので!」と言って、2人に向けて片手を見せた。
ツバキの小指には、四角形にカッティングされた赤い宝石を使った指輪をはめていた。
「ふーん、あんた達が新入りか」
ツバキの後ろから、1人の妖精が姿を現した。
赤髪に、意思の強そうなつり目の少年だ。
「あ、この子が私の相棒、シュシュだよ」
ツバキが紹介すると、「いつまでも突っ立ってないで座ったらどうだ?」とシュシュに言われ、ミオ達はツバキに向かい合う形で座った。
「そうそう、2人とも私のことはツバキって呼んで!生徒会長なんて堅苦しいし~」
「じゃ、じゃあツバキ先輩って呼びますね」
「よろしくお願いします、ツバキ先輩!」
ミオとヒナタが「ツバキ先輩」と呼ぶと嬉しそうな表情をした。
「私も2人のこと、ミオちゃんとヒナタちゃんって呼んでいいかな?」
ツバキがそう聞くと、ミオ達は「もちろんです!」と頷いた。
皆で昼食を食べながら、ロロン達から妖精の加護がなくなった理由、庭園の過去の話を聞くことになった。
「妖精の加護がなくなったのは~悪魔に襲われたから!」
ロロンがそう言うと、ミオとヒナタはお弁当を食べる手が止まる。
「おい、ロロン……説明が雑すぎるだろう」
シュシュが呆れたように言うと、ツバキが「一言でわかりやすく説明しようとしたんだよね!」と言えばロロンは「ツバキちゃん優しい~大好き!」と言った。
「あ、悪魔って何?どういうこと?」
ミオがそう聞くと、シュシュが説明してくれた。
「住みかがなくて困ってる妖精を鶯高校の創立者が助けたって話は聞いたんだよな」
ミオとヒナタは頷く。
「鶯高校の創立者に助けられた妖精は、この庭園を作り、行き場がなくて困ってる妖精達を招き、最終的にはその妖精はこの庭園を管理する妖精女王となった。妖精女王はこの庭園をさらに快適に、より大きくしていった。そして、鶯高校の創立者との約束も守り、妖精女王の加護により生徒達も安心して学校生活を送れる環境にした。しかし……五年前に事件が起きた」
「悪魔が……この庭園に来たってこと?」
ミオがそう聞くと、シュシュは頷いた。
「そうだ。悪魔達も住みかを探してたんだ。そしてこの庭園に目を付けられた。庭園に住む妖精達を殺そうとし、学校の生徒達にも手を出そうとした。妖精女王は、妖精達を守るため、かつて助けてくれた創立者との約束を守るために、悪魔達を石化して封印した。そして……妖精女王は倒れ、眠った」
シュシュが話し終わると、ロロンが口を開いた。
「私達は、妖精女王を目覚めさせるために、石化した悪魔を浄化させるために、人間達に協力を求めることにしたんだ」
「人間に……どうして?」
ヒナタがそう聞くと、フェルが答える。
「私達は魔法は使えるけど、妖精女王様みたいに1人で大きな魔法……大きな奇跡を起こすことはまだできないの。私達は小さな奇跡を起こすので精一杯。でも、1人じゃなくて2人なら……それも、魔法に憧れ、想像力豊かな人間と一緒ならすご~い奇跡を起こすことができるの!」
フェルがそう言うと、ツバキがシュシュの頭を撫でる。
「つまり、人間と妖精が協力して、妖精女王が目覚めるまでの間、この庭園を管理する……というわけ」
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