1. 鶯が呼ぶ春

「前髪よし、リボンも曲がってない。カバンの中も……うん、大丈夫」


鏡の前で一通り確認した少女……音木ミオは玄関に向かう。


ピカピカの黒いローファーを履いて扉を開ける。

サァッと心地いい風が吹き、ハラハラと桜の花弁がミオの前を横切る。

前髪をとめている桜の飾りがついたヘアピンが、日光を反射してキラリと輝く。


今日は、入学式。

ついに憧れの私立鶯高等学校の生徒にミオはなるのだ。


「行ってきます」

鶯色のチェックのスカートをはためかせて、駅へと向かった。



最寄り駅から30分ほど電車に揺られ、駅から5分歩いた所に学校はある。




ドキドキしながら、クラス分けが発表されている場所へとミオは向かい、自分のクラスを確認する。


「1年B組……前から4番目の席」

これから1年間お世話になる教室に入り、指定された席に座る。

そうして、ソワソワと入学式が始まる時間が来るの待っていた。





「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。生徒会長の冬村ツバキです」


ハッとぼんやりしていた意識が戻るミオ。


(あ……いつの間にか校長先生の話が終わってた)

昨日から緊張していたこともあり、ちょっとうたた寝をしてしまった。


ふと、ミオの周りの女子生徒達がコソコソと話しているのに気がついた。


「ね、生徒会長カッコよくない?」

「わかる。なんかキラキラオーラ感じる~」


(……確かに。女の子だけど、スラッと背が高いし、高い位置で結ったポニーテールがすごく似合う。カッコいいって言葉がよく似合う人だな)


でも、キラキラオーラって照明灯のおかげでそう感じるだけでは?と思ったミオが何気なく生徒会長を見たときだった。


生徒会長の指がキラリと光ったように見えた。


(え?何で指が……。アレ、気のせい?)


見間違いかな、とミオは思うことにした。

それこそ、照明灯のせいかもしれない。




ミオ達は入学式が終わり、教室にて重要な書類をもらったり書連絡を聞いていた。


「それじゃあ、明日は委員会とか係について決めるから、各自どうするか考えておくように」

担任がそう言って、書連絡は終了。

今日はこれで下校だ。


ミオは教科書がぎっしり詰まったカバンを重たそうに抱えながら駅へと向かう。


この学校は、生徒全員が何かしらの委員会か係に所属しなくてはならない。


(とは言うものの……本、好きだし図書委員会とか良さそうだけど、小学校の時も中学校の時も人気で入れなかったんだよなぁ。うーん、余ったところに入るかな……)




こうしてミオの高校生活がスタートした。

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