第9話

分厚く菫色と黒紫が混じった着物に光の反射で黒白く光る漆黒な美しい髪。

秀麗で誰もが引き込まれる容姿。その瞳にはどんな遊女よりも妖艶な感情が秘められている…


妾の名は、女神 楊玉羽ようぎょくうである。


妾は楊玉の名を司りし純情な女神でこの世界を統治す女神でもある。

我が祖先は何先もの繁栄を夢み、天に登った。

欲深きものしか生き残れず、優しきものは即刻蹴落とされるこのでは、我らの欲など塵一つにも等しかった…………


我が一族の繁栄は虐げられ、も離れていった。


ある時、ある少女と獣が交尾し子を産んだ。

その幼子の発見は、我が一族の希望の光となった____


我が祖は獣共に力を宿らせ、言語を理解できる脳を、そして口を動かせば発音が可能な喉を授けた。

人々は次々に獣人を身籠った。それにより他の神々からは輝いた目を向けられた。

そしてついには2つの世界を統治できるようになり、私の代までその輝きは衰えていない。

そしてこれからも________。


そう思っていた。


残酷な差別行為。獣人は人間は敵だと言い、人間は獣人は敵だと言い出す。

妾はその無様な姿を滑稽だと評し、放置し傍観者となった。

そんな時、外の世界から干渉があったと報告が入った。

その報告では、幼子4人がこの世界に入り込んできたということだった。

その4人のせいで獣人どもは宗教に入り浸り、戦いではなく共存を望む声も上がってきた。

妾の娯楽を邪魔するとは。

許されることではない。

幼い少女だった。

容姿は妾に劣らぬ美しい少女達。

「妾より上はあってはならぬ!!!!!!!!」


あの4人を許すわけにはいかなかった。

ふと、おもしろうことを思いついた。

おもしろう、おもしろう。

彼女らが作った組織の名前は…『ヴィンデ』と言ったか。

ふむ…あちら側と似たような意味だろうか。

偶然とは思えぬ、より胸が高鳴るではないか。


貴様らが思い通りにことを進めることは決して叶わぬ。

妾が貴様らのために特別に起こしてやったぞ?せいぜい楽しませてもらおうか。


ではでは。

いってらっしゃいませ、混沌と絶望の世界へ。


それが、妾が起こしたdivision現象の真実だ。

え?なんで教えたかって?

それはね…

みんなで、楽しみたかったからだよ!


◆◆◆



「黒花、黒花。起きてる…? 」

「あいよ。なんにー?直生ー」

うちらがこの世界こっちに飛ばされて半年以上経った時、直生から呼び出しがあった。

直生はいつも黒いフードをかぶってるから時々顔を忘れてしまう。

(可愛いから普通にしてれば良いのに…)


けど今回の直生は、なんとなく真剣な顔つきをしている、感じがした。

「黒花。僕たちがやるべきことがわかった」

「へ?」

やるべきこと。きっとそれは、元の世界に戻る方法。花を見つることについてだろう

「花でしょ? そのくらいわかってる…」

「その、花の種類のこと」

直生は少し呆れた口調で言った。

「気づかなかったの? ヴィンデの意味と、こっちの組織の名前。同じ、花だって。」

「…………」

気づいていない、わけではなかった。

でも、なんとなく怖かった。

ヴィンデという名前を付けたのは、うちだった。

みんなで綺麗な朝を見よう、って言ってつけた名前。

こんな調子で、そんな朝が観れるのかなって。

「朝顔。黒花だって、気づいてるでしょ? 」

「うん…」

少しだけ、覚悟の時間がいるように感じた。




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