第7話

「いや、まず前提としてガチ目に本当にこの世で1番と言っても過言ではないくらい馬鹿なマツでもここまで騙されるのは怖いです」

「アタシの扱い酷くない…?」

アタシは心の中や小声でツッコミながら、カノンの話を聞いた。


「まず、敵組織あっちは人造人間全てを操ることができると考えた方がいいでしょう。最後の一言まではしっかりとした声で抑揚がハッキリしてましたがあの一言だけ、少し違った声でした。うまくは言えないですけどね。

あと人造人間は本気で獣人を助けようとしているでしょう。騙すためにあんな風にゴーグルを使ってまで伝えようとはしないでしょうし。

で、彼女達の体内にはクラスター爆弾が埋め込まれているのが確定しました。初めてマツが騙されて爆発した時からそうだとは思っていましたが、サオさんの強靭な肉体を破壊できてさらにここまで建物を破壊できるとなるとそれしかないでしょう。クラスターでしたら防御可能な範囲ですのでマシですね。」


(…………めちゃくちゃ喋るやん)

カノンが言う防御可能な範囲は原子爆弾ほどの威力ではないと不可能にはならないというのは置いといて、確かに考えてみればそうかも知れない。

いくらアタシと言っても(自分で言ってて悲しい)あそこまで騙されることはないだろう。


その上カノンの言う通り本気で私たちの味方になろうとしてくれたというなら。それを組織が無理やり自爆の方向を持っていったのなら。

「…………」

心の底から泥黒い感情が湧き出てくる。泥黒い…ような赤黒いような、マグマのような感情。

今ままで結構酷いことがたくさんあったけど、それの全てを受け入れ知り、理解した上でさらにそんなことが裏で行われていたと思うと吐き気が生じる。


(…アタシ、1人の命を失っても平然と居てられるようになったのっていつからだっけな)

わからない。わからないけど、きっと黒花とかカノンとか…あととか。

この3人といるようになってからかな。

3人とはたくさん旅をした。たくさんの命を失った。

でも、それでも一緒に居たいと願ったのだ。

こんなに人格が捻じ曲げられても、お互い勇気づけあってなんとかここまでやってきたのだ。


「マツ…気持ち、分かりますよ、」

カノンはそういうと、座っていたアタシを見下ろすように泣きそうな顔を向けてくる。

私が膝の上で強く握っていた手を、そっと包み込む。

「ごめん…カノンも、辛いよね。私ばっかりごめんね…」

そのあと、2人で泣いた。抱き合って大声で、ずっと泣いた。

よく頑張ったって言い合いながら、慰めあった。

ごめん、ごめんって。

アタシが悪いのに、アタシのせいで2人は死んでしまったのに、カノンまで一緒に泣いてくれた。

私が弱かったんだって。

アタシは…


◆◆◆


その翌日の朝、鳥の鳴き声が心地よく響きわたる。

そして私は口を開きました。

「マツ…私、思うんです」

「きっと、2人はあの時と同じように…」

きっとマツも、私が言いかけた言葉の続きは予想がついているでしょう。


『あの時と同じように…』


『別世界で同じような目に遭っている』







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