第4話
琴都を送り出して2分後。私は激痛に耐えながら今までのことを頭で考えていた。
会いにいけなかったヴィンデの幹部さんたちのこと。
繋げなかった黒花さんの思い。
そしてもう1つ。
(どんな理由があっても殺しをしてはならないんだったら琴都ちゃんえぐいことしてない…? )
気づいてしまったのだ。自分が言っていることの矛盾に。
(あやべ。ここ死んだらあの子に罪を被せることになるやんけぇ泣)
「だ…………けて…(誰か助けて)」
その後に誰かの悲鳴と、銃声剣がこすり合わせられる音とかの戦闘音が聞こえて。
それからの記憶はない。
私が覚えているのは、ここまで。
◆◆◆
「誰こいつ? 」
アタシが見つけたのは、あいつに似ている女の子だった。
雨が降る中、その子は腹と口から血が出たまま倒れ込んでいた。
その腹の切り傷を見るに、包丁で刺されたのかな?
(今日は仲間募集とか傷の手当てとか事前活動をしに来たわけじゃないんだけどなぁ…)
最初は手当てなんかするつもりなんてなかったんだけど、あいつに似ているからか放っておくことができなかった。
「うわぁ結構深く刺されてるじゃん…? 」
アタシはカノン見たいに手当てとかがうまいわけじゃないからしょうがないのだけど、あまりうまくはできなかった。
とりあえず止血して、傷口を拭いて、包帯を巻いた。
(口の血もついでに拭いてっと…)
手当てだけして置いていくつもりだった。別になんか関係があるわけじゃないし、なんなら顔すら見たことがない子だったから。
だから道具を片付けて立とうとした。その時だったんだ。
「くろは…………さ…」
(え)
この子は呼んだ。言ったんだ。アタシの最高の仲間で、友達で。今は療養中できっといつか元気に笑ってくれるはずのあいつの名前を。
(嘘嘘嘘。な、なんでこの子はあいつの名前を知ってるの?じょ、情報が漏れてたって言うの?)
アタシの心拍数は色んな意味で上昇していた。
なんでこの子がアタシの大切な仲間の名前を知っているの?
この子はあいつの何かを知っているかも。そしたらあいつは元気になる?
それとも敵組織に情報がバレてるだけ?じゃあこの子もあっちの組織の?
(ええいもう知らん! とりあえず連れてく! )
アタシは一瞬これで敵組織の子だったら戦犯だと思いながらも、少しの希望に賭けてこの子を本部につれて帰った。
◆◆◆
「…………? 」
次に私が目を覚ましたのは、どこかのベットの上だった。
木でできた家のようで、古民家のような見た目だった。
近くには棚があって、その上には花が飾ってあった。白い花びらが真ん中の黄色い部分を際立たせている。
窓からは外の景色が見え、周りの自然が綺麗に輝いている。
(ここどこだ?ん、まあ生きてたからとりあえず良いのかな…?)
「あ、目が覚めたんだね! 」
ガチャりと心地よいドアの音共に現れたのは茶髪の少女だった。
「えっと…?」
混乱していたわけではないのだが、ここの情報を引き出すにはこの一言が1番の最善策だと考えた。
「あごめんごめん。アタシはマツ! 」
「君には聞きたいことがあったからさ。結構な重傷だったけど知り合いに助けてもらって看病したんだ」
(聞きたいこと…? )
不思議とその声と容姿は、どこかで見たことがあった。
そんな気がした。
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