第3話

本部から入ったヴィンデの生き残りに関する情報。それは…………

「え…? 」

ヴィンデの生き残り。それは、針咲黒花以外の幹部3人であり、生存の可能性あり。 

針咲黒花は脳死状態で生存中、我々が記憶を引き取り遺体を放置したため、幹部の1人、花里カノンの医術で復活し、脳も1時的な仮のものを作れるまでに科学が発展すれば完全復活可能。


「生きてるんだ…………? 」

「君は、生きて…生きてるんだね…………」

思わず目から水がこぼれた。

今まで汚し続けた手を、洗い流すような水が。

(わ…たしは……………)

大声を出して泣きたかった。ごめんなさい、ありがとうと。

私に記憶をくれてありがとうと泣き叫びたかった。黒花の記憶がなかったら、

私は、私はただの殺戮マシーンだったのだから。

私は空を向いて顔から雨を浴びた。

情に浸る。今までしてきた事は無駄じゃなかったのだと。よく耐えたと、よくやったと。今日だけは自分を責めなくても良い。褒めて良い。そんな気がした。

静かに泣きながらこれからの目標を掲げる。絶対にやりたいこと。いいや、やらなければいけないこと。

「私は、すぐ…………会いにいっ」


私は言いかけた。

瞬間、腹部に強い痛みを感じた。

「か゛っ…はっ」

腹部の状態を確認する前に、口から大量の血が噴き出した。

その痛みの種類からわかった。これは、刺された時の痛みだ。

ナイフ。おそらく料理用の包丁だと思う。

無様に身震いをしながら青ざめた顔を地面の方へ向けると、私の腹には予想通り包丁が突き刺さっていた。その包丁を持っていたのは…


「琴都…………ちゃん…? 」

今日殺めた少女、梨々香の親友、琴都だった。

「お前が…お前が殺したんだ!梨々香を返せ!梨々香を…返せっ!!!!! 」

彼女の顔が悲しみと怒りに満ちていた。

梨々香。それは彼女にとってこれ以上ないくらい大切な存在だったのだろう。

(当たり前だ。親友を殺されたのだから…)


あれ?

どうして彼女を…彼女を憐れんでいる?

私が、彼女が人の腹に包丁を刺すほどに怒った原因ではないか。

何を普通だと思っているの?当たり前?私が悪いのに?

悪いで受け入れられる言葉なの?私は漫画みたいに許されると思っていたの?

ごめんなさいって。これからはしませんていって許されるとでも?

人殺しにしょうがなかったって言う言い訳が通じるとでも思ってるの?

あなたは。

あなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたはあなたは。

黒花さんの記憶から何を学んだの?


「…………」

「ころ゛し…………ても゛っあなたは゛わるぐ…から…」

私は血を吐きながら、今この子に伝えられる全てのことを伝えた。つもり。

私が悪いんだ。あなたは私を殺しても何も悪くない。

私は殺されてもしょうがないことをしたのだ。

何があっても殺しなんかしてはいけない。

それを伝えた。

「あ…………ご、ごめっ…………なさっ」

琴都はそう言うと、混乱した目で包丁を地面に置いた。

きっと理性が飛んで突発的にやってしまったことなのだろう。

いま、どうして自分がこんなことをしているのかも中途半端にしかわかっていないはずだ。

でも、この言葉だけはしっかり心の奥まで届いていてほしい。

それは揺るぎのない事実だ。

私が悪い。しょうがない。


「うぅ…………本当に…ごめんなさ」

そう彼女が言った時。遠くじゃらから銃声が聞こえた。

(もしかしたらこの子の…?)

「はや…行って…!」

私は最後の力を振り絞って琴都の背中を押した。

(私は何があってもしてはならない殺しをしてしまった…だからこれは仕方ないことなんだ…)









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