第2話
SA-0121。それは私名前だ。
成績名称SA-0121。コードネーム兼人名はクロハ。
獣人はこの世界の汚物であり、抹殺すべき相手。それはこの世界に生きる人の共通認識であり、獣人を絶滅させることを掲げている組織から生み出されたのが私。
でも、他の人造人間とは違うこと。それは「記憶の質」だ。
より人間に近い人造人間を作るために組織が行なった行動は、死者の記憶を読み取り埋め込むこと。通常ならば大量の記憶を読み取るため、特定の人間の記憶が多く取り込まれ、複製される事はない。
だが私が読み取った記憶の中には1つだけ強い記憶があった。それは組織から獣人を守っていた、今はもう滅びたヴィンデという組織の幹部の1人の記憶だった。
その1人の名前は、
私は生まれてまだ半年ほどしか経っていない。だが、この針咲黒花という感情を表に出してしまうと組織に首を切られる事はわかっていた。
それを言い訳に何の罪もない獣人を殺し続けている。
(私は…………)
それと同時に裏で進めていること。それはヴィンデの生き残りの捜索だ。
組織には生き残っていたら厄介という言い訳をつけ進めていることだ。
針咲黒花の記憶には、生き残りについての記憶が残っていた。
『黒花、ごめんね…………』
そう言って離れていった少女が、3人。
私は今でも探し続けている。きっと、どこかで生きていると信じて。
「…………お墓、立てなきゃ」
先程殺した少女。…梨々香と言っただろうか。親友を守って死んだ少女を私は守れたものに託した。だが、せめてもの償いだ。いつもやっていることなのだ。
そう思いながら私は動き出した。
天気は雨だった。美しい雨の音に、私の足音だけが響いて汚い音に変わっていった。
「あの子も、しっかり悪役に殺されたように見せられただろうか…? 」
私は人を殺す時、必ず変装をする。気持ち悪い、不気味な男に。
私がいい人じゃなくて、悪い人に見えるように。
この行為を、殺しという行為をしょうがないで済ませたくないのだ。
でも最近、だんだん自分の心ごと悪役に寄ってきているように感じるのだ。
梨々香を殺した時も、謝罪の感情しか現れなかった。
私が、私が私が愛し愛された人の命を奪ったというのに。
「はぁ…」
穢らわしい思考と共に時間を過ごしていると無線機が鳴った。
普通の携帯電話のような電子機器は圏外で通信を取ることができないので、という建前を使い、インターネットや過度な情報を制限するために携帯電話は配布されておらず、使用は緊急時を除き禁止されている。
「…………はい、こちらSA-0121。御用でしょうか、マスター」
『クロハ、ご苦労だった。こちらにヴィンデの新情報が入ったのでな。お前に先に伝えておこうと思ったんだ』
(っ!? ヴィンデの新情報? それは何だ? ヴィンデの生き残りについてでは? )
今すぐに教えてくださいと言って情報を開示してもらいたかった。
だが…………
生き残っていたら厄介という理由でヴィンデを調べている諜報員が、そんなに前向きな声で情報開示を迫るものだろうか。
(…………)
私は少し考えてから、間を開け発言した。
「…それは、ヴィンデの壊滅を証明するものですか? それとも、今から壊滅に行けるほどの重大な情報ですか? 」
『…………ふむ』
マスターは少し考えた素振りを見せた後、情報を渡してきた。
『君の脳内にその情報を流し込んだ。重大な情報かはせいぜい自分で見極めるといいさ』
その直後に通信機は切れ、無線機に反応はなくなった。
「…………情報、拝見します」
人造人間の私の脳には、組織本部から情報などが送られてくるチップが内蔵されている。記憶や感情に関しては、人造にもプライバシーはあるとか何とかで監視はされていない。
情報の内容は、殆どが私が既に掴んでいる情報だった。
だが、1つだけ目を疑うものがあった。
私が1番欲していた、生き残りに関する情報。
それは…………
「え…………? 」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます