第3-13話 探索! 精神世界!
実践編とは言ったものの正直なところ俺が何をするのかよく分かってない。
というのも前に精神世界に入ったのはヒナの時だったが、あれは心を
けど、今回は何をすれば良いんだろうと俺が思っていると、側にいる先生が口を開いた。
「まずはこの世界にいるアヤさんを探しましょう。『共鳴』での治療はそれからです」
「どうやって見つけるんですか?」
ヒナはすぐに見つかった。
あれは密室だったから。
でも、今回は違う。だだっ広い田舎の中だ。
ここからアヤちゃんを探すのは互いにスマホを持ってるか、GPSとか無いと無理だと思うんだけど……。
なんて俺が周囲を見ていると白雪先生は、すっと視線を遠くに向けた。
「こっちですよ、イツキくん」
「えっ。わ、分かるんですか?」
先生が迷うことなく歩き出したので、俺は驚きながらその後ろを追いかける。
どうして何も見ないのに分かるんだろう……と思っていると、白雪先生は歩きながら説明してくれた。
「さっき先生がアヤさんと『
「は、はい。見てましたけど……」
「その時のパスが繋がっているんです。いま、先生にはアヤさんの居場所まで糸が繋がって見えてるんですよ」
へぇ……そういうものなのか。
俺とヒナの時に見えなかったのはどうしてだろう。
下手だったのかな、『共鳴』が。
なんてことを考えながら歩くこと5分。
白雪先生が「ここです」と言って指差したのは、石でできた小さな鳥居の前だった。
「ここって……」
鳥居を挟んだ向こうには長い石の階段が続いている。
階段の頂上は下からだと見えない。
「アヤさんがいるのはこの上です。行きましょう」
「わ、分かりました」
俺と先生は同時に鳥居をくぐると、石の階段を登っていく。
長い階段を登るのは『
「先生。階段の上って、神社ですよね?」
「はい。そ、そうだと思います」
「どうして、そこにアヤちゃんが?」
「えーっと、そうですね。これはあくまでも、私の考えなんですけど……」
石階段の上で白雪先生は少しだけ考えてから、言った。
「1ヶ月前。アヤさんが魔法が使えなくなった原因が、この神社にあるんじゃないでしょうか」
「神社に……」
「あくまで私の考えですけどね」
白雪先生がそう言って微笑んだ瞬間、俺の視界の端にふと気になるものが映った。
それは首。長い長い首である。
神社の頂上からまっすぐ伸び、俺たちを見下ろしている女の顔。
『い、いらっしゃァい……』
何が面白いのか、へらへらと笑った顔が張り付いたモンスターがそう語る。
『よ、よく来たわねェ……。と、都会からこんな田舎にィ……!!』
女性はがんがんと響く声でそう言うと、ぐわんと口を大きく開いた。
『自然いっぱいでェ! 良いところォ!!』
そして、凄い勢いで俺たちに向かって落ちてくる。
「……『
だが、俺たちに触れるよりも先に俺の魔法がモンスターの首を
首を伸ばすなんて弱点を広げているだけである。
わざわざ伸ばすこともないだろうと思って落下する首を見ていたが、ふと気がついた。
黒い霧にはなっていない。
……あれ? 祓えてない?
『ざ、ざざ
「……そうなんだ」
落ちてくる頭に素早く狙いを定めると、俺は『
「――『
生み出した炎槍がモンスターの頭を貫いて、木っ端微塵に吹き飛ばす。
次の瞬間、モンスターは黒い霧になって散っていった。
「なんだったんだ……」
確かに首は弱点じゃなかったのかも知れないが頭を飛ばして死ぬんだったら、『囮だ』なんて言わない方が良かったんじゃないの……。
なんてことを思って再び階段に足をかけると、隣に立っていた白雪先生が静かに口を開いた。
「い、イツキくんって……強いんですね」
「えっ?」
急にどうしたんだろうと思って先生の方を向くと、先生は俺を見て少し目を丸くしていた。
「どうしたんですか? 先生」
「い、いえ……。頼もしいなと思ったんです」
先生はそういって微笑むと、視線を階段の上に向けた。
俺はそれを不思議に思いながらも、その後ろを追いかける。
百段近くありそうな階段を登りきった俺たちは、苔むした狛犬の間を通り抜けて寂れた神社に足を踏み入れた。
「アヤちゃんはどこですか?」
「建物の中にいるみたいですね」
そういって先生が指差したのは、神社の建物。
ということは、アヤちゃんは建物の中にいるってこと?
どうやって入ったんだろう、と思ったが、ここは精神世界。
そんなことを考えるのは無駄かも知れない。
気を取り直して神社の建物に向かおうとした瞬間、バン! と、勢いよく建物の扉が開いた。
「う、腕!?」
そして、そこから現れたのは無数の腕。
どれもこれも指が6本ある異形の手が俺と先生に向かって伸ばされる。
だが、その腕は既に俺が張っていた『
それはカーテンのように、『
故にその名を、
「『
切り落とされた腕がぐずぐずと地面に溶けていく様子を尻目に、腕の根本を見る。
そこには腕と腕の間から巨大な顔がのっぺりと見えていた。
まるで恥ずかしがりやの子供のように、建物の扉に半分だけ顔を隠し、それでも1m近くはある巨大な顔をこちらに向けているモンスターがいる。
『か、かくれんぼしよォよ』
そして、その口から言葉が紡がれる。
口の中には何もない。ただ暗闇があるだけだ。
「……1人でやってよ」
頭を出してきたということは、弱点を出してきたということだ。
俺は『
高濃度に圧縮した水を放つ『
それにもう1本の『
与えるのは『属性変化:土』。
家にいる時に、テレビで見た。
高圧をかけた水で金属を加工するウォータージェットは、その水に研磨材を混ぜ込むことによって、より強固なものの加工を可能にするのだという。
だから俺は、水の中に細やかな粒子を混ぜた。
それにより『
故にその魔法の名前を、
「……『
ひゅばッ! と、巨大な頭が両断された。
肉が裂ける重たい音が響いて、モンスターの頭と腕が黒い霧になっていく。
そして完全にモンスターの姿が消えた瞬間に、建物の中にアヤちゃんが正座しているのが見えた。だが、そんなアヤちゃんは牢屋みたいな格子の中に閉じ込められている。
……なんだ、あれ。
そう思った俺に、白雪先生が告げる。
「い、イツキくん。アヤさんを助け出しましょう!」
「は、はい!」
俺が続けて『
『
次の瞬間、俺たちは何かに弾かれるようにして、急に視界が後方に飛ぶと……。
「……あれ?」
元の、図書室に戻っていた。
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