第1章エピローグ

 その後、俺達の周りは人間の入れ替えや領地の事で慌ただしくなった。

 まず両親を王都の罪人送りにし、更には両親に加担していた全ての人間をクビにした。

 するとどうだろう。


「……まさかここまで酷かったとは……」

「当主様自らしていた事ですのでしょうがないかと思います。逆らえば何されるか分かったものではありませんから」


 我が家に勤めていた約九割がクビになってしまった。

 流石の俺もその事実を知った時は驚きで狂ってしまうかと思ったぞ。

 

 よって今我が家は完全なる人手不足だ。

 そもそもこの家に残ったのが新米執事二名とエマを含めたメイド三名、料理長を含めた料理人五名……以上。

 

「マズい……取り敢えず募集をかけるか? 執事とメイドを三人ずつと内政の出来る人間を。いや初めのうちは俺が内政を収めるか? 前世の記憶で何となくある程度のことは出来そうな気がするが……」

「――それは止めておいた方がいいかもしれません」

「……何故だ?」


 突然エマに待ったをかけられた俺は少しの苛立ちを抑えながら聞く。


「何故なら……レイン様は1年後に学園に通わなければならないからです」

「―――……はぁ? 学園だと……?」

「勿論です。貴族の子供は必ず学園に通うことが義務となっていますので」

「…………そうか、何とかしてみせよう……」


 学園……学園か……そう言えばレインの記憶にも学園の記憶があるな……。

 まぁ案の定不安という感情を孕んでいるが。

 

 しかし学園については問題ない。

 これでも前世では世界最強だったのだ。

 そんじゃそこらのひよっこ共に負けるわけない。

 しっかりと修練を行えばの話だがな。


 その前にまずは内政への理解がある人間と使用人の確保、小領主の取り締まりに納税の見直しに我が領の平民の生活の現状確認などなど……やることが沢山ある。

 その合間に俺自身の修練も怠ってはいけず、更にはアレスとの和解もしなければならないと来た。

 これは当分休めそうにない。

 

 俺は一度立ち上がり、俺の部屋から全ての人間を退出させると、転生させてくれたであろう神に向かって、


「もう少しイージーな転生はなかったのですか――ッッ!?」


 取り敢えず今はそう叫ぶしかなかった。


「……さて、まずは平民の生活の水準を確認するとするか」






***






 レインが少しの文句を言った相手である女神とその配下である熾天使セラフィムは世界を覗き見れる神の遺物――『世界観測』でレインの現状を観察していた。

 

「……な、何なのですかこれは……ッ!」


 女神はレインの決闘に勝った姿を見ながら怒りに打ち震えていた。

 そんな状態を見ていた熾天使セラフィムは何とかなだめようと発言する。


「め、女神様……まだこれはストーリーの始まっていない序章中の序章です。まだ世界の影響力があまり発揮されていないのでしょう。実際にゲームでも何個かは決闘でレインの勝ったルートが有るではないですか」

「そ、そうですよね……ま、まだストーリーに入ってすらいないですものね。ごめんなさいねセラフィム。少し焦りすぎていたみたいだわ……」


 女神は何度か呼吸を整えた後、先程の怒りに染まった表情とは対局の慈愛に満ちた笑みを浮かべると、


「五年後が楽しみですね……あの異端がどれほどの屈辱を味わうのかを見るのは……」


 その顔には似合わない呪詛を吐き出していた。

 そんな姿を見ていたセラフィムは小さくため息を吐くと、

 

(女神様のご機嫌を取るのは大変なんだ……下手なことをしたら私が殺されかねない……。もしもの時は……)


 自分の身の安全のためにあることを準備しておこうと心の内に誓った。


 その準備が案外すぐに必要になってくることを熾天使セラフィムはまだ知らない。


「必ず屈辱を味あわせて死んでもらいますよ……ブラッドッ!!」


 今後女神の怒りが収まることはないだろう。

 既に女神は間違いを犯しているのだから―――



————————————————————————

これにて第1章完結です。

次回から第2章 学園入学がスタート。

遂にこのゲームの主人公達も登場します。

お楽しみに

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