第4話 大罪人は魔法を使う①
次の日は朝早くから起き、自分では着替えができないほど脂肪があるのでエマに手伝って貰う。
自分で着替えれない事に羞恥心を覚えることはあるが、これに関してはもうしょうがないと割り切っている。
「……こんなゴテゴテな服は嫌なんだが……」
「え? でもそれしか有りませんよ?」
俺はその言葉を聞いて思い出す。
そう言えばコイツ派手で高級な服が大好きだったな。
自己顕示欲が高い奴だったし。
だが俺は正直言ってこう言ったゴテゴテな動きずらい服は大嫌いなのだ。
修練の邪魔にしかならないし、汚れも目立つし無駄に高いからな。
その後何とか出来る限り動きやすそうな服を選んだ俺達は、ダイエット用のヘルシーな朝食を済ませた後、昨日と同じく魔力切れによるダイエット法を始める。
「……くっ……ふぅ……ふぅ……」
あまりの不快感に声が漏れるが、これくらいは許して欲しい。
エマもあわあわとテンパって駆け寄ってこようとするが、手だけで静止させる。
「邪魔するな」
「し、しかし!」
「良いから」
俺がそう言うとエマは不詳不詳と言う風に下がった。
まぁ俺の身に何かあればそれこそ大変だからな。
しかしこの脂肪には早くおさらばして貰わないと決闘に勝つなんて夢のまた夢だ。
ざっと4時間ほどした後で、ランニング、腹筋背筋腕立て伏せなどを合計10時間。
物凄いハードな修練のため体はクタクタで一歩も動けないほどだが、その分一昨日より一回りくらいは痩せているので精神的にはスッキリとしている。
久しぶりの安全な修練は最高だな……。
前世では20年間は四六時中危険ばかりだったからな。
俺は起き上がれるほどまで回復したら、エマに話しかける。
「エマ、頼みがある」
「な、何でしょうか!?」
超速で俺の元へ駆け寄ってくるエマ。
誰の目から見ても明らかに力み過ぎである。
そのままではいつか絶対に取り返しのつかないことを起こしてしまうだろう。
どんな時でも冷静に――だ。
「……元気なのはいいがもう少し落ち着け」
「は、はい……すみません……」
俺は一旦エマが落ち着くのを待ってから改めて頼み事をする。
「エマ、お前は今すぐ結界魔道具を持ってきてくれ」
「結界魔道具ですか……? 一体どうして……?」
まぁ結界なんて魔法を使う時とか、それこそ決闘の時くらいにしか使わないから困惑するのも当たり前だろう。
レインは魔法も全く使えなかったらしいし。
だが今は俺の前世での豊富な知識がある。
才能のない体でも魔法を発動させることなんざお手の物だ。
「今から俺が――魔法を使うからだ」
「ええっ!?」
辺りにエマの絶叫が響き渡った。
***
エマに結界魔道具を取りに行かせている間に俺は自身の体に空気中の魔力を取り込んでいく。
この技術を《吸魔》と名付けることにしている。
これは俺が世界との戦争をしていた時に開発した技術で、ほぼ永久的に魔法を使えるようにするためにした物だ。
流石に剣のみでは何十万も相手をするのは難しく、魔力がないと剣自体も強化できないのですぐに壊れてしまう。
しかし前世の俺も魔力は少ない方だった。
なら自分のじゃなくて他の魔力を使えばいいと考え、他の魔力と言う異物が体に入る時の激痛を我慢しながら使っていたらいつの間にか痛みも取れて自由に吸収出来るようになっていた。
しかしこの体は慣れていないので、全身の神経が捩じ切れそうな程の激痛が俺を襲ってくるが、ギリッと歯を噛み締めて耐える。
基本俺の修練は我慢比べの様なものなので、我慢さえすれば強くなれる。
そして俺は世界で最も痛みを知っていると言っても過言ではない。
流石に陣痛などの女性が感じる痛みは体験したことないが。
そんな状態で耐えること30分。
遂にエマが戻ってきた。
「れ、レイン様~借りてきましたっ!」
俺はエマから結界魔道具を受け取り、魔力を流して早速発動させる。
「エマ、お前は結界の外に居ろ」
「わ、分かりました……」
流石に俺の指示にも慣れてきたのか、余計な質問もせず直ぐに俺から離れた。
エマが記憶の中にある結界魔道具の効果範囲から出たのを確認して一気に魔力を注ぎ込んでいく。
俺の魔力ではなく自然の魔力なので後先気にせずどんどん使えるのが《吸魔》の良い所だ。
あっという間に溜まった結界魔道具を発動させると、半透明な壁が俺を中心にドーム状に形成されていく。
「ほう……結構立派な結界じゃないか」
形成された結界は、前世の実践でも十分に通用するであろう強固さだった。
叩けば金属を打ち付けたような高音が響く。
流石公爵家の結界だな。
「転生後初の魔法の試し打ちを開始するか」
俺は前世でも最も難易度の低い魔法から始めることにした。
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