第3話 大罪人はこの体の才能の無さに気付く
メイドを取り込む事に成功した俺は、次に決闘に向けて自分の体を確認する事にした。
その為にエマには木剣や運動場の使用許可を貰いに行かせている。
始めは俺が行こうとしたのだが、
『それくらい私が行くのでレイン様はゆっくり向かってきてください!』
と意気揚々と言われたので、押され気味に任せたと言うわけだ。
やっぱりエマは人1倍チョロい気がする。
まぁ給料も今までの1.5倍にしたから当然と言えば当然かもしれないが。
と言うわけで俺は1人虚しく広い屋敷を歩きながら運動場へと向かっていた。
だが……
「…………やはりこうなっているか……」
俺はエマ以外の使用人全員に嘲笑されていた。
記憶の中でも普段から行われていたので、そうだろうと思っていたら実際にそうだった。
脂肪を見て笑い、やれ俺に才能がないだの、俺など死んで仕舞えばいいだのと雇い主の息子に向かってよく言えるもんだな。
だがこれもどうせ俺レインの弟か両親が主体となってしているのだろう。
じゃなければ自分が解雇されるかもしれない事をわざわざやらないからな。
これならレインの性格が捻じ曲がるものよく分かる。
そしてメイドに当たってしまうのも。
多分俺が小さい頃からこんな事を言われていれば同じ様になっていただろうから。
「……胸糞悪い話だ。まぁ今の俺にはただの音にしか聞こえないが……」
ただいい気分には勿論ならないので足早に運動場に向かう事にした。
***
運動場には既にエマが来ており、俺を見つけるとパッと笑顔になると此方に駆け寄ってきた。
「レインさん! ちゃんと許可取れました! それにこれがいつも使われていた木剣です!」
「ああ、ありがとう。それじゃあ始めるとするから少し離れていてくれ」
「はいっ!」
俺はエマが離れたのを確認した後、しっかりグリップを握って剣を素振りの要領で振り下ろす。
しかし剣はブレブレの軌道でゆっくりと進み、挙げ句の果てには腰あたりで剣を止めることが出来ずに地面にぶつかった。
「…………記憶通り、これは酷いな……」
前世の俺ならただの素振りで風を切る音がならない程素早く振り下ろし、ピシッと止めることが出来たのだが、この体だと全然出来なかった。
まず体力がないし、この体重を支える筋力もないくせに脂肪は有り余るほどあるので邪魔にしかなってない。
これじゃあ剣を振るのはもっと先になりそうだな。
先に脂肪を燃焼させることから始めよう。
俺は剣を壁に立て掛けてから地面に座り込み、座禅を組もうとするも脂肪が邪魔で組めなかったので足を伸ばして座ると、意識を集中させる。
これから魔力を使って内側から脂肪を燃やすと言う事をしていきたいと思う。
方法は簡単で、この世界にもどうやら魔力はあるらしいので多分出来るだろう。
俺は微量ながら自身の体にある魔力を体外に一気に放出していく。
すると体は魔力を補給する為に生命エネルギーを変換して魔力を作ろうとする。
その時に使うのがこのタプタプの脂肪だ。
流石に1回程度ではどうにもならないが、何回も繰り返していけば自ずと脂肪は減っていくだろう。
まぁその代わり物凄い激痛と脱力感が襲ってくるけど。
まぁそれでも腕や足が捻じ切られるよりは全然マシだし、毒を飲んで全身から血を噴き出すよりも全然苦しくもない。
その全てを体験した俺にとってこのくらい痛くも痒くもないし、何ならこの状態で剣を振れるくらいだ。
「それにしても……俺レイン魔法の才能も殆どないのか……」
俺は自分の体のあまりの才能のなさに少し気分が落ち込むが、それは努力次第でどうにでもなるので、取り敢えず痩せる事をだけを考えることにしよう。
前世の俺自身もコイツと同じで世界最強になったとは言え、
だが俺は世界最強になった。
それは何故か?
———簡単だ。
天才達に追い付くまで努力すれば良い。
俺は7歳の頃から一睡もしていなかった。
その時に力が無いと生きていけないと気付いたから。
それからはご飯も殆ど食べずに鍛錬した。
そのお陰で王国で働き始めるまでは身長はそれほど伸びなかったし体重も軽かった。
なのでこれくらいの事全く問題ない。
何なら昔より設備が整っているこちらの方がより強くなれるだろう。
俺はそれから何時間も魔力切れになるギリギリの状態をキープし続けて———
「ふぅ……だいぶ軽くなったな……気分が」
「す、少しは痩せていますよっ! きっと大丈夫です!」
殆ど体重は落ちなかった。
どうやら当分の間この脂肪とは付き合っていかないといけない様だ。
そして1週間後の決闘、まだまだ勝ち筋は見えていない。
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