1 ホイル包み焼きハンバーグ⑭
――えーっと、ヘルシーで罪悪感なく食べられる野菜料理も、とっても素晴らしいんですけど。僕は育ち盛り……って言うのはさすがに厚かましいとしても、この間まで育ち盛りだったんで。お肉大好きです! とにかく肉、食いたいので! 僕のチャンネルはひたすら肉料理で行きます! ってことで一つよろしくお願いします!
記念すべき番組第一回で、冒頭からしてこれだった。彼の動画は、今上がっているものはほとんど
(スタジオは同じところっぽいけど、撮影とか編集とか最初はいかにも素人! って感じだったのが、ここんとこはすごく
お決まりのスタジオになっているのは、真っ白い作業台のある、明るく広々とした綺麗なシステムキッチンだ。果たしてレンタルスタジオの一種なのか、彼の自宅なのかはわからないが、もし自宅だとしたら、相当お金持ちのお家うちの子なのでは……などと邪推してしまう。高級なタワーマンションか、こだわりのある豪邸の一軒家か……そんな感じの雰囲気の、とにかく上品で清潔な「きちんとした」キッチンなのだ。
奥には調味料の戸棚や冷蔵庫などが見えており、皿や道具類は画面からは見えないところにしまってあるのか、動画途中で説明を挟みながら何やらゴソゴソとしている時がある。
(このスタジオ、どこにあるんだろう。意外に近かったりして……)
未桜は画面を見つめながらしばし物思いに
『チャーシューって、僕とろとろのやつが好きなんで、今日作るのはそっち系です。だから使うのは、脂身が多いバラとかロースとかがおすすめ。モモやヒレだと……パサッとするかも。ディスったわけじゃないですよ! 単にレシピ上の話です!』
自らの失言にちょっと慌てたふうを装いながら、彼がカメラに示したのは、五百グラムほどの豚ロースの塊だ。脂身が綺麗に入り、豚肉にしては少し濃い目のピンク色をしていて、きっと新鮮でいいものなんだろうな、と未桜は当たりをつけた。『出来上がりの形にこだわりたい人は、先にお肉をタコ糸で縛ってくださいね。僕は食べられたらいい派なので、そのままいっちゃいます!』とシュンは前置きする。
ついで、ガラス皿や金属製のバットの上に並べられた、他の材料や調味料が次々に紹介されていく。白ネギの青い部分が十センチほどと、
『分厚いお肉って、柔らかくなるまで煮込むの大変じゃないですか。なので今回は、時短の魔法道具を使うことにしました。じゃん! 圧力
(炊飯器? を、コメを炊く以外に使うの?)
未桜は思わず首をかしげる。さっき気が散りかけたのが噓のように、もうすっかり動画に夢中だ。
彼が取り出したのは、某メーカーの、ごくごくシンプルな炊飯器である。そう、どこからどう見ても炊飯器だ。とてもではないが、塊肉を調理する道具には見えない。
『僕ね、ほんっと炊飯器って大好きなんですよ。特にこいつは、もはや相棒と言っても過言ではないレベルです。最近のやつって、ナントカ炊き? とか凝った機能がついてますけど、僕のイチオシは昔ながらの単純なやつ。そう、個人的な意見ですが、炊飯器は断然バカな子がいいんです!』
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