1 ホイル包み焼きハンバーグ⑪

(あーあ……うまくいかないもんだなあ)

 ここに至るまでの己の半生を思い出し、あまりの呪われっぷりに、いっそ笑いそうになる。前世で何かやらかしたのかもしれない。それにしたって、今世でここまでの目に遭わされて平気なわけではない。

 疲れていた。とにかく、ヘトヘトに疲れて、もう立ち止まってしまいたかった。

(いい加減、考えるのをやめてしまいたい……)

 先ほど窓から眺めていた人々の群れに己も交じって歩きつつ、未桜はため息をつく。

(考えても仕方ないのに。……本当はこんなところで、こんな仕事をしているはずじゃなかった、なんて)

 どこで間違えたんだろう。麗子に会ったところだろうか。それとも、大学院に進学した時だろうか。

 最初から下手に過分な夢なんて持たず、どんな人生でも構わない、間違っても考古学者になりたいなんて思っていなかったら、こんなに苦しくなかったのだろうか。

(世界から消えてしまいたい)

 歩きながら時計を見る。クライアントとの待ち合わせまで五分。

 今日会うのは、学部生時代の同級生だ。数少ない、友人と呼べる相手を呼び出して、生命保険の商品の話をする。久しぶり、と笑顔を向けてくれていた相手が、だんだんろんな眼差しになり、最後は荒っぽく席を立つ瞬間を、もう何度繰り返しただろう。ひょっとしたら、それはそれで「いい仕事」なのかもしれない。こなすのが自分でなければ。

(死んでしまいたいなあ。誰か車、こっちに突っ込んでくれないかな。あ、ダメか。そしたら、今度はその人の人生がめちゃくちゃになるもんなあ……)

 結局、何者にもなれはしない。どこにも行けない。満足に将来のことを考える前に、毎日を生きるので精一杯になって、日常におぼれて。でも、仕方ないだろうか。

 ――なぜならこの人生は、どこまでも悪循環だけで構成されているのだから。

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