1 ホイル包み焼きハンバーグ⑥
『あーあ、有名になりたいなぁ』
博士に進む前、麗子は何度も漏らしていた。研究室備え付けの、いつからあるかもわからない、えらくレトロな
『ほら、あるじゃん。メキシコのチチェン・イツァとか、エジプトの王家の谷とか、イタリアのポンペイとかぁ。あたしね、考古学ってもっと華やかで派手でかっこいいの、想像してたんだけど。見込みちがいだったみたい。それで、有名な先生たちみたいに、テレビとかでどんどんインタビューされちゃって。いいなあ。あの人たち、お手軽に注目浴びられて、いいなあ』
『……どの先生も、泥臭くて地道な調査と研究を積み重ねたから結果として有名になったのであって、決してお手軽ってわけじゃないと思うよ』
名前を例にとられた先生方は、未桜も著作を何度も読み返しては尊敬している人たちばかりだったので、やんわりと訂正してみた。
『おえっ。お説教臭い。未桜ちゃんそういうとこあるよねぇ』
綺麗に整えた
『ならあたし、大学教授の奥さんになりたいな。そしたら研究室にも遠慮なくいられるし、未桜ちゃんともずっと一緒だし? だって未桜ちゃん、ドクター終わっても研究続けるでしょ? あたしも同じところにいたい』
『またそんな』
『ほんとほんと。未桜ちゃんはあたしの憧れなの。研究に一生懸命でかっこよくて。あたし、未桜ちゃんみたいになりたいんだぁ』
調子いいなあ、けどちょっと可愛いことを言ってくれるじゃないか……と照れ臭さを覚えつつ。笑って返した未桜だが、麗子の
女慣れしていない助教や講師、准教授を狙って近づき、そこかしこで大学を
論文がボロボロの出来だったにも
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