第13話 警護隊は少人数

 中央路を歩いて行くと薄汚れた住民達が、シッタ隊長に笑顔で挨拶して来る。

 シッタ隊長の警護隊は昔のおまわりさんって言うか、戦後間も無しの住民に愛された駐在さんって感じのようだ。


「シッタさん頂いたお薬良く効きました!お婆ちゃん痛みが和らいだみたいです、ありがとうございました」

「良かったね、お婆ちゃんの脚早く良くなればいいね」

 脚を骨折して寝たきりになったお婆さんの話みたいだ。


「僕が治療出来るかも、お婆さんの所に案内して」

「えっ?貴方は?」おばさんが胡散臭げに聞いてきた。

 おばさんは、僕では無く隊長の方を見てる。

「この方は女神メゾン様の子供レットさんだ、神術で怪我や病気は治してくれる」

「ええっ!女神様の子供?…こちらです!お婆ちゃんを治してあげて!!」


(さて、女神の息子と自称するレット、お手並み拝見と行きますか、詐偽で無い事を期待するぞ!)


 このおばさん、町内の世話役でタキさんと言うそう、チャキチャキの肝っ玉かあちゃんと言った感じだ。

 古い建物だが、小綺麗こぎれいに手入れされた家に案内された。


 ベッドに寝かされたお婆さんは、一応整骨され添え木が嵌まっていた。

「転んで骨折して7日経ってるの、日に日に衰弱して…痛みは無くなったはずなんだけど」

「これなら綺麗に元通りに治って、直ぐに歩けるようになるよ!手当て!!」

 お婆さんの脚が輝き、輝きは全身に広がった。

 微睡まどろんで居たお婆さんはパッチリ目を開き「何か気分が良い!10歳程若返った気分じゃ!!」

 元気に歩き出したお婆さんを見て、タキさんは僕の前に膝まずいた。

「あ、有り難う御座いました!女神メゾン様の神子みこ様!」


(こ、こいつ本物だった!これから面白くなるぞ!希望が見えて来た!)

 シッタはニヤケる顔を無理矢理抑えレットを促せた。

「レット!フデお婆さん以外にも、多くの病人が…死にそうな病人が居る!助けて貰えないか?」


 顔役タキさんと、元気になったフデ婆ちゃんに引っ張られ病人の治療に回った。

(こ、これは無理!)

 最初の病人は、ミイラの様に痩せこけた屍じゃ無いかと思われる重体患者だった。

(呼吸して無いんじゃないか?)

「て、手当て!」

 ダメ元での治療、ミイラがむっくり起き上がった時には、悲鳴が出かかった。


 どの病人も似た感じ、死んでんじゃ無い?と思える患者達だった。

「神子様!凄い!!死んで居なければ、どんな重体患者でも瞬時に完治して下さった」

 自分でも驚いて居る(僕って凄い!医者として楽々暮らせるのでは?)


 町じゅう引っ張り回され僕は兎も角、リン達はすっかりヒヨリミ町の地理に明るくなった。


 夕方近くなってやっと解放され、警護隊詰め所に案内された。

 警護隊は隊長含む10人しか居なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る