第11話 マズ村は悲惨な状態だった

 ご機嫌はまだ悪いがマズ村に入るのにスピだけ丸腰は危険、重い剣は持てないそうで、戦闘に期待出来ないスピには、護身用にダガーナイフを持たせた。


「あれ?酷く荒れて無い?」

 リンが言う通り、門は破られ村人の姿も見えない。


 村に入ると、廃屋の様な小屋がまばらに建ち、廃村の様な感じだ。

「無人のようだ、廃屋のどれかを借りて一泊して、早朝出発ムギ村に行こう」

 イケスカンダ伯爵の政策が酷いのか、ヒヨリミ男爵が酷いのか、両方なのだろう、領民が疲弊している。

「ムギ村も、同じ様な感じだろう、行くだけ無駄かも…ヒヨリミ町に直に行くか」


「……旅のお方、食べ物をお持ちならば、少し恵んで貰えませんじゃろか…」

 リン達が食事の用意してる間に、一人計画を練って居ると突然声を掛けられた。


「わっビックリした!ご老人はこの村の者か?」

 粗末なと言うか、ボロ着の痩せた老人が目の前に居た。

「ワシはマズ村の村長ですじゃ、盗賊に全て奪われ村人にひもじい思いをさせて居ります」


「村人は無事だったのか?何人居る?」

「若い者は皆町に出てしもうて、ジジババが60人女子供が20人程居ります」


「盗賊に襲われて、よく女子供が無事だったな?」

「無抵抗で金も食料も全て差し出し、女子供は床下に隠して居りました。ワシ達が、その床の上に乗って居りましたじゃ」


 金も食料も乏しい貧乏村、粗方略奪し次の村を襲撃した方が得策と思って、ジジババの陰気な村から盗賊どもは速やかに撤収したようだ。


 リンは80人程の村人を確認し、急遽干し肉入りの団子汁をメニュー追加、あっと言う間に炊き出し完了させた。

 薄味の汁多目の団子汁を、村人に振る舞ってやった。

 炊き出し団子汁を村民は、涙と鼻水垂らしながら食ってる。

 哀れで見て居れん。


「なぁ、狼人ろうじんはギバ族、兔人とじんはト族、ドワーフのリン達は何族?」

「私達ドウェルグ族よ」

「ドーウェル?」「ドウェルグよ!」

「言い難いな、聞いたけど忘れそう」

「ドワーフは人間が呼び易いので訂正しないけど、本当はドウェルグ呼びが正式なんだよ」


「そ、そう?なのか?(言い切って、誰かに突っ込まれないか?)」



 この村に留まると、老人介護に明け暮れそう!

 有りたけの芋を置いて「半分種芋として植え、残りの芋で食い繋げ!西の盗賊団は壊滅させた、安心して暮らせ!」と言い残し村を後にした。


 村長を始め、村人全員深々と頭を下げて見送って居た。




「元々は盗賊どもが奪った芋だろう、還してやっただけなのに、あんなに感謝されたら、コソバユイぞ」

 先を急ぎながら考えた事、また独り言呟いて居たようだ。

「レットは優し過ぎ!滅ぶに任せ放置が普通、助ける義務も意味も無いのに」


「予想以上に酷い統治だ。この調子だと、ムギ村を無視して通過すると後悔しそうだな」

「レットって思いのほかお人好しだね」

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