第9話 統治は面倒

 村は豆と芋の栽培と、兔など小動物の猟でやって来たそうだ。

 暫く住んでみたが、面白く無い。

 貧乏村だ、問題や不満ばかり言って来る。

 一方的に面倒見てやるのにも飽きた、男爵もやって来ない。

 住民を集め、新村長を決めさせた。


 意外と言うか、妥当かも知れない、ゴロツが人気断トツで村長に選ばれた。

 住民の事はよく分からん、ゴロツを村長に任命し就任祝に欲しい物を聞いた。

「領主様、金と武器が欲しいです!」

「金貨20枚やる、男爵に取り上げられん様に、隠して置け」

 この世界で、金貨1枚の値打ちを知らない、レットだから出来た事だ。

 貧乏暮らしに慣れ過ぎて、お米5㎏10㎏の値段とか、食材を如何に安く買うかは手慣れて居るが、電化製品とか高価な物はサッパリ知らない、1万円で何が買えるか等、やった事が無いので全くお金の価値が分からないレットだった。


 金貨も武器も盗賊砦から奪った物、弓矢に槍、剣のボロい奴を適当に出してやった。

「おぅ!領主様、有り難う御座います!!」

 ゴロツが何処まで本気で、僕の事領主様と言ってるか分からんが、もう放置して村を出る気で居るので、どうでも良くなった。


 占領して分かった事、統治は面倒だった。


 元々僕に、リーダーシップなんてある訳無いし、暴力で押し付けるのも限界がある、酷くすると謀反反乱を起こされる恐れがある。

 統治ごっこやってみて、係わらないのが、一番賢い方法と分かった。


「ゴロツ、僕達は明朝旅立つ事にした!後は上手くやってくれ」

 晩飯時、ゴロツ村長に一応予定を言って置いた。





 ハスキとペスには、フード付きのマントを着せた。

 僕やリン達は、どんな格好しても、何を着ても子供に見える、開き直って粗末だが丈夫な生地の現状の服で行く。


 見送りは、安堵の表情の村人達、唯一何故かゴロツ村長のみが、深々とお辞儀して見送って居た。


 情報から、目指すはヒヨリミ男爵領、4村1町で一番近い、歩いて1日の距離ザツ村だ。

 近いと言っても、面倒な山越えをしないと行き着けない所、開拓村の旧村長が好き勝手出来て居たのも、商人も旅人も訪れる事のない、自給自足を強いられる陸の孤島的場所の為だった。


 ドワーフ娘や、僕の脚力に負けない健脚の獣人父娘、僅か半日太陽がまだ中天にある日中に、ザツ村が見えて来た。

「レット様、ザツ村には家内、この娘の母親が共有奴隷になって居ります!出来る事ならば、自分達の様に救出願えたら、自分達父娘生涯の忠誠を捧げます!!」


「良いよ!救出しよう!奴隷と言っても、魔法や魔道具で拘束されて居る訳じゃ無い、村人達に有無を言わせん」





 ザツ村に近付くと、何か揉め事?騒がしい喧騒が聞こえて来た。

「俺達は『西の盗賊団』有り金と若い女を差し出せ!」



「西の盗賊団って、リン達を捕らえて居た奴らか?」

「うん!間違い無い!!見た事の有る顔触れだよ」

 僕は、火がついたタバコを口に、ユックリ燻らせた。

 煙を吐き出し「では、全員戦闘体制!盗賊団を叩き潰す!行くぞ!!」


 村人達の抵抗を奪い、余裕綽々よゆうしゃくしゃくデカイ態度でほざいて居た盗賊達、エクスカナボーを振り回し、突入した僕に対応が遅れた。

 ざっと50人程の盗賊達、20人を一瞬で叩き潰した。


 僕の本気の走りに、数拍すうはく遅れて、リン達が参戦した。

 盗賊達は何が起こったか、訳が分からない内に全滅して居た。

 リン達は、速効性の麻痺毒十方手裏剣で、確実に遠距離攻撃、獣人父娘は上背を生かせ、見事に首狩りしてた。



 生き残った盗賊達を、後ろ手に拘束していると。

「皆様方のご活躍で、村の危機が救われました!!お礼の言葉も御座いません!有り難う御座いました」

 見事な土下座で、村長達一同地面におでこを擦り付けてる。

「村人で、怪我をした人居ませんか?居たら治療するぞ!」

「無抵抗で応じましたので、怪我人は居りませんです」


「盗賊団の持ち物、現金などは村の財産にせよ!ヒヨリミ男爵に連絡を取り、盗賊達を奴隷として買い取って貰え!!」

「と、とんでも無いです!皆様方の手柄、私ども無事だっただけでこれ以上は、何も要りませんです」


「礼なら貰う、村の共有奴隷を貰って行く、その代わりの奴隷が盗賊団だ」

「共有奴隷ですか?役に立たない奴隷達、貰って貰えるなら対価は要りませんです」


 共有奴隷は、男爵の指示で割り振りされて居るそうで、重要度の低いザツ村は良い奴隷は貰えないそうだ。

「狼人の女は使えるが、兔人は非力で使えん!男爵様は『繁殖させよ』と仰るが、兔人と狼人、繁殖なんて無理ですよ!」


 獣人2人に、フード付きのマントを着せ、村長に引き留められながら「今日中にマズ村に用が有る」と言って、さっさと村を出た。

 ザツ村村長一同、深々とお辞儀して見送って居た。


 村が見えなくなって、ずっと我慢してたペスが「お母さん!!」叫んで抱き付いた。

「ペスにハスキ?良く無事で…また会えるなんて夢じゃ無いかしら?」

 ハスキは無言で、二人を抱き締めていた。


 3人が落ち着くまで、兔人に話を聞いた。

「ボクはト族のスピ、ドワーフギバ族連れて、お兄さん奴隷商人じゃ無いよね?」

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