第5話 相棒達は料理上手

「レット!良い所に住んでるね!」

 湖の拠点に帰って、リンの第一声だ。

 改めて見ると、湖の水面に青い空と北西の山脈が写って、絵の様な絵ハガキの様な、綺麗な景色だった。


「住んでる訳じゃ無いよ、今日の朝女神さんがここに送ってくれて、まだ一日経って無い」


「?……」「そう言われれば『女神さんに聞いて、助けに来た』って言ってたよね?」

「『この世界の鉄は柔らかい』とも言ってた!」

「「「レットって、何者?」」」

「何者って、別の世界、地球って所の日本で死んで、女神さんがこの世界に送ってくれた、普通の人間だよ」


「…いやいや!普通の人間は、鉄をクニャクニャ曲げたりしないよ!」

「普通の人間は、アイテムボックス?何でも収納なんて出来ないよ!」

「普通の人間は、そんな子供みたいな姿で、27歳?のはず無いよ!」


 僕の容姿って子供に見えるはず無い、気になるので湖に顔を写してみた。

「な?…何じゃこりゃぁ!!」

 写った顔は中坊位で、髪がパツキンだった。

「こりゃぁ、ヤンキーじゃねぇか!!……あれ?僕はどんな顔だった?髪と目は黒だった…それしか思い出せない…」

「レット?顔が変わってるの?」

「うん…黒髪で黒目だった……はず」

『ピンポーン♪貴方の身体は、女神スペシャル!私が無から全て造り出した物よ!女神の子と自慢して!』

「元の身体は?」

『当然地球で埋葬されてるよ!』


「「「レット?大丈夫?」」」

「ゴメン!女神さんが衝撃的事実を言ってるもんで」

「「「女神様と、話できるの?」」」

「僕って、女神さんの子供だって」

「「「えぇーーーーっ!!!」」」

『皆ナイスリアクション♪これからも楽しませてね!!』


 と言ってる女神さんの声は、僕にしか聞こえていない。




 リンとメイが、テキパキ料理をしてくれて居る。

 鍋に豆と干し肉、それに赤く細長い野菜の細切れを入れ、弱火で煮込んでる。

 鍋は上手に組んだ、石の即席カマドの上に置かれて居る。


 僕は女神さんからの衝撃の事実で腑抜けて居た。


 森の中からミンが帰って来た、リンに聞くと野草を採取しに行っていたとか。

 ミンが野草を刻んでる。

「それは何?」

「干し肉の臭みを消す、野草よ」


 僕の役目は、定期的に鍋に水を補充するだけ。


「豆を一晩水に浸けて置けば、こんなに長時間煮なくても柔らかく煮えるけど、今は直接煮てるから、もうチョッと待ってね!」


 と言いながら、リンはフライパンにオークの油と、微塵切りの野草を炒めてる。

「あれ?この匂いニンニク?」

「私達は臭み消しって言ってるけど、ニンニク草って言うの?」

 言いながらもリンは、薄切りオーク肉をソテーしてる。

 リンが調理、ミンとリンが補助って感じで、料理が出来上がった。


 ニンニク塩ダレの焼き肉、凄く旨かった。

 豆と干し肉のごった煮、少しピリッとしてこってりとした旨味の、煮物に仕上がってた。

 これからの、野営料理が楽しみになった。

 料理上手の仲間は嬉しい。


 食後片付けが終わり、3人は僕が収納から出した武器を、銘々自分に合った武器に加工してる。

 石で鉱炉を組み、本格的な鍛冶仕事に取り組んでる。

 肌身放さず持って居た、ドワーフのマイハンマーでガンガン打って何か作ってる。


 出来上がった武器を見て驚いた。

「これって…忍者が使う十方手裏剣?」

「ん?手裏剣って言ってるけど、十方手裏剣?格好良い!これからはそう呼ぶ!」

「これに麻痺毒塗って投げるの!」

「相手を殺さず、生け捕りにする武器よ!」



 幼く見えるけど、ドワーフ3人娘はしっかりしてる、僕は不思議に思い聞いてみた。

「リン、ミン、メイ!何でも出来て、しっかりしてる君達が、何で盗賊に捕まってたの?」


「それが、聞いてよ!すっごく卑怯なの!」

「私達が野宿してたのよ」

「優しそうなお兄さんがね……」

 男に、優秀なドワーフを、仲間にしたかったと誘われたそう。

「それでね、3人で自由に修行したいって、断ったの」

「うん!怪しい誘い断って正解だね」

「所が、甘いスイーツ食べ放題って、誘惑されて付いて行ったの」

「それが、酷いの!スイーツって芋なの!たしかに甘くて美味しかったけど、芋よ!」

「ん?それで?」

「芋は食べ放題だったけど、牢獄に閉じ込められたのよ」


「はぁ…」

(この子達、何か…抜けてる?僕がしっかりしないと!)

 凄く優秀な仲間が出来て、喜んだけどしっかり導いてやらねばと、決意するレットだった。

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