第41話 五大美少女の危機
放課後。透子と桜子は部活へ行き、帰宅部の観月は仲の良い女子たちとのおしゃべりに興じているようだった。
問題は山積みでも、なるべく普通の日常生活を送りたいというのが、和樹たちの共通の思いだった。
もっとも、帰宅はみんなそろって東三条の屋敷に戻る予定だ。屋敷には結界が張られていて安全だし、学校ではおおぴっらに手を出せないが、各自で帰宅すれば襲撃されるかもしれない。
だから、四人で帰るわけだけれど、それにはもう一つ理由があって、和樹と観月を二人きりで下校させたくない、という透子たちの思惑もあるようだった。
「これ以上、観月が正妻みたいになったら私の入る余地がなくなっちゃう!」
「お兄ちゃんにはハーレムを作ってもらわないとだもんね」
今朝の別れ際、透子と桜子は口々に言い合っていた。
ということで、和樹も放課後、校舎で時間を潰さざるを得ない。
図書室で本でも読もうと思ったのだけれど、たまたま担任教師が旧校舎の生物準備室にダンボールを運ぶ人間を探していたので、手を挙げた。
(どうせ暇だからね……)
たまには善行を積もうかと思ったのだ。ただでさえ義妹に手を出してしまった上に、場合によっては透子・桜子の姉妹たちまで抱くことになりそうだから、罪悪感がある。
桜子に言わせれば「必要なことなんだから、何も悪いことじゃないよ?」ということになるのだろうけれど。
放課後の旧校舎は静かだった。日中なら特別教室への移動があるので、多少の生徒はいるけれど、今はそうでもない。
4階建ての建物のうち、3階までは文化部の活動に使われている。ただ、和樹が用事がある生物準備室は4階で部活の生徒もいない。
まさに一人きりで、和樹が薄暗い廊下を歩いていた。」
少女の悲鳴が聞こえたのは、そのときだった。
「きゃああああっ。や、やめてくださいっ! 服脱がさないで! いやあああっ! んんっ……!」
女の子の甲高い声に続き、殴打音とくぐもったあえぎ声が聞こえる。
空き教室からだ。ただ事ではないと思って和樹はそっと廊下側の窓から中の様子を伺った。
教室の机がいくつか集められていて、その上に金髪碧眼の美少女が押し倒され、三人の大柄な男子生徒が群がっている。
女子はスカートを脱がされ、下半身は純白のショーツ一枚とソックスのみだった。魅力的な白いほっそりとした脚が見えている。
エミリアがじたばたと逃れようとすると、ブラウスの上からでもわかる大きな胸が揺れる。だが、その胸をも男子生徒たちはまさぐりはじめた。
口を手でふさがれ、涙目になっている彼女は、白川エミリアだった。
経緯はわからないが、エミリアが性暴力を振るわれそうになっているのは明らかだった。一応、この学校は名門校で、陰でのいじめならともかく、暴力事件なんてほとんどない。
校舎で女子生徒がレイプされそうになっているなんてとんでもない話だ。だが、目の前で起きている。
エミリアが必死で暴れると、男の手が口から外れる。
「誰か助けて……! こんなの、やだ……。あっ!」
顔に平手打ちをされて、エミリアは静かになった。和樹はかっと頭に血が上りそうになった。
(助けなきゃ……!)
けれど、和樹一人でなんとかなるだろうか。相手は三人。
(いや、いざとなったら魔術を使えばいい。一般市民の見ているところでの魔術の使用は禁止だけれど、そんなこと言っている場合じゃない。それに……)
さっきから霊力の反応がある。魔術の使用の痕跡があるのだ。
あの男子生徒たちは魔術で操られているのではないか。
それなら、なおのこと見過ごせない。
和樹は深呼吸して、教室に飛び込んだ。
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