第34話 透子の反撃
そのままだったら、二人はまたそういうことをしていただろう。
ところが、そうはならなかった。
部屋の襖が開いたからだ。
「和樹、それに観月! な、なにしてるの?」
透子が呆然とした様子で和樹たちを見下ろしていた。透子もまだ青色のパジャマ姿だった。
裸の和樹が裸の観月に覆いかぶさっていて、布団の上にいて……。
何をしていたかは、一目瞭然ではないだろうか。
それでも、透子は眼の前の光景を信じたくないようだった。
「み、観月がもう起きているか見に行ったら空っぽで、和樹の部屋に行ったら……」
二人が裸で同じ布団にいたというわけだ。
(こ、これは気まずい……)
透子は和樹のことが好きで、今でも婚約者のつもりなのだ。
しかも、昨日、バスタオル姿の透子は風呂場で和樹に「子作りをしてほしい」と迫ったのだった。
そんな透子からしてみれば、和樹が義妹と子作りをしたのはショックだろう、
と、透子は首を横に振る。
「ま、まだ未遂なのよね? 私は間に合ったんだよね?」
「えっと、透子……。俺は……」
和樹が言い淀んでいると、観月がそんな和樹を手で制した。
そして、観月は裸のまま布団の上に座ると、まっすぐに透子を見据える。
「わたし、兄さんとしました。わたしが兄さんの初めての女の子です」
透子がくらっとふらつく。そのままだと倒れて怪我をしそうだったので、慌てて和樹は立ち上がり、透子を支える。
透子は涙目で和樹を見つめる。透子の身体は華奢でとても軽かった。
「どうして私じゃダメなの……?」
「透子じゃダメだなんて、言ってないよ」
「でも、和樹は観月とそういうことしたんでしょう?」
「そう。たしかに、俺は……観月が一番大事だ」
和樹はそう言った。布団の中の観月が「あっ」と嬉しそうな声を上げる。
反対に透子は子どもみたいに泣き出してしまう。
「私、ずっと昔から和樹と結婚するつもりだったのに!」
「ご、ごめん。透子」
「謝るなら、私を選んでよ」
透子の懇願に、和樹はうなずくことができなかった。
なぜなら、和樹の一番は、義妹の観月だから。
透子は目に涙をためたまま、観月を睨む。
「……絶対に和樹を取り戻してみせるんだから!」
「透子さんにはできませんよ」
「できるわ。私も……和樹とすれば、いいのよね?」
透子はそう言って、裸の和樹に抱きしめられたまま、頬を赤らめた。
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