第33話 朝の二人

「おはようございます、兄さん」


 寝ぼけ眼をこすりながら、和樹が布団から起き上がると、目の前には一糸まとわぬ姿の観月がいた。

 和樹の隣に、ぴったり寄り添うように寝そべっている。観月のすらりとした裸体が朝日に照らされて、艶やかなロングの美しい髪が輝いている。


 観月はふふっと笑い、上目遣いに和樹を見た。


「何を驚いているんですか?」


「い、いや、だって、普通は妹が隣で裸で寝ていたら、驚かない?」


「わたしたち……その……え、エッチなことしたんですから、当然ですよね?」


 それはそのとおりだと和樹も思う。

 いわゆる朝チュンというやつだ。


 昨晩、和樹と観月は……一緒に寝てしまった。もちろん、ただ寝たというわけではなく、そういうことをしたということだ。


 観月は恥ずかしそうに、毛布を引き寄せ身体を隠す。


「兄さんがすごく情熱的でびっくりしちゃいました……」


「そ、そうだった?」


「兄さんも男の人なんだなって。それに、兄さんがわたしを求めてくれるのが……嬉しくって」


 観月は顔を赤くしながら、そんなことを言う。

 たしかに和樹は少しがっつきすぎてしまったかもしれない。


「その……観月。痛くなかった?」


「全然、平気です。これでわたしが兄さんの初めてで、わたしの初めても兄さんですね」


 観月が幸せそうに言う。こんなに可愛い美少女が……義妹が、自分のことを必要としてくれる。

 そのことが和樹には嬉しくて、同時に観月のことが愛おしくてたまらなくなった。


 和樹はそっと観月の髪を撫でる。観月は一瞬びくっと震え、でも、嬉しそうに髪を撫でられるのを受け入れていた。


「こんなふうに兄さんに優しくされると、わたし、もっと多くのことを兄さんに求めちゃいそうです」


「どんなことでも求めていいんだよ」


「わたし、兄さんとずっと一緒にいたいです。でも……」


 観月がうつむく。現実問題として、祝園寺の家、そして東三条家は大きな問題を抱えていた。

 半壊した東三条家は、祝園寺家のものとなった。そして、その女性たちも同様だ。


 和樹は、桜子やその母の結子たちを所有物として扱える。桜子たちは白川家など他の勢力から身を守るため、和樹たちの「女」となり、子どもを生むことを望んでいた。

 

 そして、東三条家の後継者たる透子は、和樹の元婚約者だった。透子は今でも和樹が好きで、和樹の婚約者のつもりのようだった。だから、観月に激しい対抗心を燃やしている。それに東三条家の後継者を生むためにも、和樹が必要だろう。


 観月は何の見返りなしに抱かれることを望んで、和樹はそのとおりにしてしまった。和樹の結婚相手が観月でなくても、和樹が観月のことを好きでなくても、観月は和樹の「初めての女の子」になりたいと望んだ。


 もちろん、和樹は観月を大事にしたいと思っている。

 けれど、まだ和樹は観月に告白もしていないし、恋人にもなっていない。もちろん、観月を一番大事にするつもりではあるけれど、それを言葉にできていない。


 観月はふふっと笑う。


「いつか兄さんの一番にわたしがなるんです。でも……今は、もう一度、兄さんのぬくもりを感じたいなって」


 観月はそう言うと、和樹に抱きついた。観月の身体の温かさと柔らかさに、和樹の理性は吹き飛んで……。


 観月をふたたび白い布団の上に押し倒してしまった。



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